110.滅びの歌
110.
マリンを仲間に加え西を目指す。
「敵だな」
「魔物ですぅ?」
「ああ。雑魚だ。うっぜえな」
ゴブリンの群れがこの先の茂みにかくれて、こちらを襲おうとしてる。
特に、俺は魔力を隠してる(0にしている)ため、奴らからすれば格好の餌となってしまっているのだ。
「まりんちゃんのでっばんですぅ~」
マリンがふふふん、と胸を張る。
なんだ、雑魚が何かするのか?
「人魚の声には力が宿ってるですぅ。こんなふうに……」
マリンは両手で筒を作り、ささやくように言う。
「【死ね】ですぅ」
どさっ! とゴブリンどもが一斉に倒れる。
「なんですか、今の?」
「【滅びの歌】ですぅ」
エリスの問いかけに、マリンが答える。
「滅びの歌は、聞いたモノを死に至らしめる呪いの歌ですぅ~。人魚が使う特殊スキルですぅ」
「ほおぉ……」
俺はマリンの頭をつかんで、ぎりぎりと力を入れる。
「いたいですぅ!」
「んな危ないもん仲間がいるところでつかうんじゃねえよ! エリス達が死んだらどうするんだ!?」
つい声を荒らげてしまった。
「あいだだだ! だ、大丈夫ですよぅ! 呪いをかける対象をコントロールできるですう。味方に被害が出ないようにできますぅ!」
「失敗したらどうするんだよ? ああん?」
「大丈夫ですよぅ……あいだだ!」
俺はぎりぎり、とマリンの頭を締め上げる。
「次からつかうときは、使うって言えや」
「はひぃいん……すみません……」
しかし便利なスキルだな。雑魚はこれで始末できそうだ。
「ダーリンやっぱり優しいです! 私とシロの心配してくれるなんてっ」
エリスがご機嫌にそう言うのだった。




