雨音のあいさつ
祖父母が亡くなって10年。二人が住んでいたこの家も、とうとう取り壊すことになった。
片付けをしていると、あちこちで雨漏りがし始めた。
雨だれが落ちる所に、洗面器やバケツを置いて、私は片付けを続ける。
そのうち、私は雨音が規則的に聞こえることに気付いた。
しばらく、なんとなく聞いていたが、はたと思い至った。
「モールス信号ではないか?」と。
祖父はアマチュア無線が趣味で、私も幼い頃に少し教えてもらったことがある。
そこで、聞こえる音を手帳に書き記して確認する。
雨音は「ア・リ・ガ・ト・ウ」と繰り返していた。
ただの偶然かもしれない。でも私には、祖父母からこの家へのメッセージのように思えてならなかった。
大原さやか朗読ラジオ 月の音色~radio for your pleasure tomorrow~(https://www.onsen.ag/program/tsukinone)の「月の文学館(テーマ:雨の独り言)」に投稿したショートショート(不採用でした)。