46僕は誓、私は報
体が回復しまだ傷は癒えていなくても、本家に戻り桜庭課長にも連絡をして姉さんたちも今は本家で療養中だ。僕は書斎で調べ物をしていると、スマートウォッチが鳴りみると八雲くんからで応答する。
「八雲くん、久しぶり」
『流彗は?流彗はそっちにいないの?』
「主人から何も聞いてないの?」
『あれはやっぱり誤作動じゃなかった……。昏斗兄貴、やばい状況だ。迂生は主人の命でまだ動けそうにない。早く天王星ラウモイズに来て』
「そうは言っても僕たちまだ木星セウスジアだ。次行けるとしたら土星スノロクに一度行かないとならない」
そう伝えてみると八雲くんは沈黙してしまい、流彗くんに何か嫌なことが起きるとかなのだろうか。
『……ちょっと迂生の主人に相談してみるけど、なるべく早めに来てほしい。エンジースの長、大鳳天満が流彗を手に入れたら動き出すと、琥珀姉貴と真珠姉貴から聞いたことがある。準備はしておいてと皆に伝えて。じゃっ』
八雲くんから切られてしまい、相当やばい状況なのかと庭にいる姉さんのところへと行く。庭に行ってみるとバラを眺めているが、奪われたショックが大きいようだ。本当はそっとしてあげたいけれど、姉さんと声をかける。
「何かしら?」
「さっき八雲くんから連絡があって、流彗くんを手に入れたら大鳳天満が動き出すって言われたんだ」
「……そう。昏斗、まだ傷は癒えていないでしょうけど、一本勝負しない?今の実力で行ったとしても、流彗は取り返せない。それに莉耶ちゃんもいつ奪われるかわからない状況。お父さんはあの力は極力控えるようにと言われてるし、昏斗以外まだ覚醒していない」
「そうか。僕はすでに覚醒している。あの力ではなく覚醒したあの力なら莉耶を守り切れるかもしれない。その力出しても平気?」
「私に勝てるかしら?」
昔、何度か姉さんに挑んでも一度も勝ったことがなかった。今度なら姉さんに勝てるかもしれないと覚醒した姿になり姉さんは近くにあったバラをとって短剣にさせる。いざっと僕は姉さんに挑んだ。
覚醒した姿で五本勝負しちゃったが、姉さんが五本勝ってしまった。僕はまだまだだと地べたに寝っ転がり呼吸を整える。
「まだまだね、昏斗」
「姉さんには敵わないや。だけど覚醒したら姉さんもっと強くなってそう」
「嬉しいこと言ってくれるわね。もう夕方よ。シャワー浴びましょう」
姉さんが手を差し伸べてくれて、僕はその手を取って立ち上がりシャワーを浴びることにした。
夜中、僕はなかなか寝付けずスマートウォッチの明かりを使って書斎へと入る。何か前世の人たちでエンジースについて記録とか残していれば対処方法はあるはずだ。それにバラの剣が壊れてしまう理由も探さなくてはならない。それに柊が言っていた言葉、エンジースの長に傷をつけた前世のあなたは敵わなかった。
前世の僕はそのエンジースの長である大鳳天満に一度傷をつけている。大鳳天満の資料ってどこかにあるかなと探していたら、坊っちゃんと声がかかり振り向いた。
「影神、まだ起きてたの?」
「坊っちゃんが起きていますから、私も起きますよ。夜食、ここに置いておきますね」
「ありがとう。そうだ影神、大鳳天満の資料とか置いてたりしてない?」
「大鳳天満の資料なら確か…」
夜食をテーブルに置き、心当たりがあるようで影神についていくと一番上にある一冊を取り出し僕に渡してくれる。もう一度感謝しながら席について夜食を食べながら大鳳天満のことを知る。
《大鳳 天満》
大鳳天満は不死身の体をしており、天の使い、つまり天使の長を長年やっている人物だ。一度、僕はその人物とやり合い傷を負わせた。
これでしばらくはエンジースという天使たちは大人しくしているだろうが、僕が死んだらきっと次の僕に何かする気なのは、占い師である琥珀と真珠が教えてくれた情報だ。
だから何が起きるのか全てここに記すから、影神、もし次の僕がこれを読みたいと言い出した時はこの本を渡してほしい。
これは琥珀と真珠から読み取った情報だから、もしかしたら未来が変わっているかもしれない。変わっていたら琥珀
と真珠に訪ねてほしい。
其の一、長女昏無の息子とエンジースの子である流彗が攫われる。どのタイミングかはわからない。
其の二、椿によって昏来か昏未が死す。
其の三、流彗が脱走し助けを求めにネオリオ社へ行こうとするが、椿に止められ監禁される。
其の四、流彗が助けを求めていることを知った空本八雲という子。これはお友達かな。だが潜入後、大鳳天満によって死す。
其の五、柊と桜に挑む五神の神が挑むが、敗北する。
其の六、藤の花と鈴蘭の中心には茉莉花がいる。これはどういう意味なのか。今の段階だとわからないと言っていた。
其の七、これはおそらく僕だろうと断定している。七つの星を揃えて大鳳天満に挑んでいる絵だった。
この七つが必ず起きるらしい。僕は占いの通りに動いているかもしれない。僕も愛しい人が茉莉花の莉が入っていたし、愛する人がエンジースだと知って大鳳天満に挑んだのが理由だ。
無論、愛する人は取り戻せたから、次の僕も取り返せると信じている。天王星ラウモイズについたらきっと記憶が蘇るんじゃないかな。そこは次の僕の頑張り次第だけどね。
大鳳天満の目的は悪魔を抹殺し、人間の自由を奪う天使だ。天使の方が悪魔じゃないかって思うぐらいにいろんな人が亡くなったよ。今はどうなっているかはわからない。
だけど大鳳天満は僕たちが持つ神から直接頂いた力を得ているのが、羨ましいからなんじゃないかって気がするんだ。
本当はディアヴォロスのように和平を結びたかった。だけど大鳳天満は耳を貸してはくれない人物。自分の思い通りじゃないと気が済まない天使だ。
大鳳天満は右頬に僕がつけた傷が今も残っているはず。後は他の天使より輪っかが大きいのと天使の羽根が凄いついている。写真は残せなかったけど、僕が覚えているから記憶を辿って読み取ってほしい。それくらい、楽勝でしょ?
さて最後にこれだけは忘れないでほしい。
赤いバラは天使には効かない。白いバラは天使に勝てる武器だ。もし赤いバラで挑むつもりなら白いバラを持て。そうじゃなきゃ一撃で勝敗が決まってしまう。
そういうことか。僕たちはずっと赤いバラで戦ってきてたけど、白いバラで戦ったことはなかった。
それに白いバラの花言葉。無邪気、清純、相思相愛、尊敬を意味する。前世の僕と愛する人は相思相愛だったから勝てた。
僕と莉耶もそういう関係性だからきっと大鳳天満に勝てる。とにかくこの七つのことについて琥珀さんと真珠さんに明日、聞いてみよう。
翌日、琥珀さんと真珠さんに問い合わせたところ、昏来か昏未が死すという意味はあの神パーティーのことだったらしく、間一髪で助かったからもう二人がエンジースに殺されるとかはないらしい。
よかったと安心は持てたけどそれ以外の五つ。つまり一つ目にあった流彗くんが攫われたことで残りの五つは未来が変わっていないと回答がきた。
だから其の四は一番避けたいことだから、一応八雲くんに連絡してみたが連絡がつかない。そこでここは頼れる兄君に、相談を持ちかけ、様子を見に行ってもらっているところだ。
影神が作ってくれた朝食を食べ終え、軽く鍛錬でもしようかと考えていたら昏来と昏未が僕の前に来て、なぜか土下座をし始める。
「二人とも、どうしちゃったの?」
「吾輩と昏未を昏斗兄様の弟子にしてください!」
「私めたちは誰かについていないと力が出ないの。お願い!」
急にどうしたと姉さんの顔を見るといいんじゃないかしらという笑みを出しながら食器を片付けていた。参ったなと頭を掻いていると、チャイムが鳴り誰だろうかと思えば莉耶と昏花に蝕夜が来訪して来たのだ。
「てっきり蝕夜の家にずっといるかと思ってたんだけど、大丈夫?」
「私は平気だよ。それより昏斗たちが負傷したって聞いてびっくりしちゃったんだよ。体、大丈夫?」
「平気。兄君、わざわざ連れて来てくださってありがとうございます」
「よい。それより八雲と話してきたぞ。助けに行きたいけど我慢するようだ。その代わり早く来ては言っていたがな」
そうは言ってもねえと蝕夜たちを応接室に案内して、影神にお茶を淹れてもらいなぜか昏来と昏未は僕が座っている後ろに隠れている。
「場所は特定してあるの?」
「以前エンジースが使っていた空島は何もなかった。おそらく別の空島に移っているようだが探すのに手間がかかる」
「また莉耶ちゃんを囮にして使うのはリスクが大きいってお兄ちゃんから言われたから、神パーティーと神舞踏会は完全に終了させる方向性でいるの。ただエンジースが使うかもしれないから撤去作業を開始しててね」
「これで捕食人間は助かったけど、残りのプラネットにバラの流星群を発動させないと裏社会とか生まれそうだねって昏花ちゃんと話してて」
莉耶が言ったようにまた誰かを襲うケースはあるかもしれない。そうなれば僕の力が必要になるってことか。
「木星セウスジアはすぐにできる。でも引っ掛かるのが蝕夜が住むプラネットを除いて残り三つのプラネットだ。父さんが話しておいてくれたことで、ディアヴォロスは落ち着きを見せバラの流星群が流れるのを待っている。だけど三つのプラネットはどのような感じなのか行ってみないとわからない」
「ふむ。なら三名に少し話をつけてみよう。昏花は莉耶のそばにいてくれ」
蝕夜は早速他の三名のところへと行ってもらい、昏花は少しだけ姉さんと話がしたいらしく行ってしまった。
「莉耶、少しはゆっくりできた?」
「うん。ディアヴォロスもみんないい人たちでゆっくり休めた。流彗くんのこと……」
「莉耶のせいじゃないよ。だけどなんで急にあっち側についたのかまだ状況が読めてないけどね」
「お兄ちゃんの息子だから連れて行かれたんだよね。怖い思いしてなきゃいいな」
「大丈夫だよ。だって姉さんの息子だ。心配しなくても、流彗くんはこう見えて頭の回転が早いから乗り越えてくれるよ」
そうだといいなと莉耶が呟き、大丈夫と隣に座って手を握る。
「こんなことがなかったら、本当はデートの終わりに渡すつもりだった。だけど今はエンジースが動き出しているし、いつ渡せるかわからないと思って今渡しちゃう」
僕はポケットにしまっていたものを取り出し、莉耶の左薬指に指輪をつけた。
「可愛い。この花にも意味があるの?」
「うん。花の意味が悲しい逸話があって本当はこれを贈るか凄い迷ったんだ。でも金木犀よりこっちの方がいいと思って」
「どんな花言葉なの?」
「勿忘草と言って、花言葉は私を忘れないでと真実の愛。花名の通り、川岸に咲いていた花を恋人のために採ろうとしたら、誤って川に落ち、その花を恋人に投げて私を忘れないでと残したという逸話があってね」
「へえ。私を忘れないでか。ん?だったら金木犀と迷ったってどういう意味?」
「金木犀の花言葉は謙虚、真実の愛、初恋、陶酔、気高い人で、四つは当てはまるんだけど一つが当てはまらないから勿忘草で作ってもらったんだ」
いきなり不機嫌になって本当は金木犀が良かったよねと思いつつも正直に答える。
「僕の初恋は昏花だよ。例え兄妹であってもずっと昏花がいつもそばにいたし、その時はまだ幼かったからで」
「はいはい。私は昏花ちゃんに負けてることぐらいわかってます。でも嬉しい。プロポーズの返事はもちろんこうだよ」
莉耶が僕に口づけをして僕も莉耶に口づけをして笑い合っていると何か視線を感じた。扉の方を確認したらバタンと閉められ見られてたと僕と莉耶は恥ずかしい笑顔になる。
「見られちゃったね」
「そうだね。まあいいんじゃないかな。どうせ見ていたのは僕の兄弟なんだから」
だねと莉耶は僕の肩に頭を預けて僕は莉耶の頭に軽く僕の頭を寄せた。
「ねえ昏斗」
「ん?」
「一つ私のお願い、聞いてもらえるかな」
「なんでも言って」
ぎゅっと莉耶の手の力が入り少し怯えているようなイメージでも、莉耶は僕に願い事を言っている間、僕はただただ何も言わず聞いていくことに。
⁑
お姉ちゃんと二人で二人のところへ行ったら、お互い愛し合っている場を目撃してしまい、お姉ちゃんはニヤニヤしてた。そのせいで昏斗にばれてしまい速攻逃げてきた私たち。
「後もう少しでいいところだったのに、残念ね」
「ちょっとお姉ちゃん、そこは邪魔しちゃダメでしょ。それでさっきのことなんだけど、お姉ちゃんはどう思う?」
「そうね。莉耶ちゃんがどのタイミングで天使の姿になるのかが肝心。昏花、琥珀さんと真珠さんに問いかけてもらいたい。私は他のことを調べてみるわ」
「わかった。あっまた覗きしちゃダメだよ」
「わかってるわ」
本当にお姉ちゃんは私たち弟妹がどんなことしているのか見に行っちゃうタイプなんだから。もしかしてお兄ちゃんもそのタイプと思いつつも、蝕夜がくれたペンダントでワープし金星アプロディロへと到着する。
まさかまたここに訪れるとは思いもしなかったなと琥珀さんと真珠さんのお店へと行き店員が案内してくれた。すでに顔パスで行けるとはねえと部屋に通してもらうとなんでとはてなが出る。
そこにいたのは第七捜査課の陽瀬海さんが二人を抱いていたのだ。
「どうした?」
「どうしてここにいらっしゃるんですか?てっきりプラネットコード社セウスジア支社にいるのかと」
「ちょっとな。琥珀と真珠に結構借りを作ってたから、休暇ってことでこっちに来た。それでどうしたんだよ、飼育員の妹」
初めてそういう名で呼ばれ、昏斗、飼育員って呼ばれているんだと苦笑いしながら正座をする。
「琥珀さんと真珠さんに聞きたいことがあって来たんです。莉耶ちゃんがどのタイミングで天使になるのか気になって」
その言葉を告ぐと琥珀さんがカードを私に渡してくれて、その絵を見た。天使が周りにいてその真ん中にジャスミンの花を持つ男性の絵。
「これって……」
「莉耶を捕まえた時点で大鳳天満の勝ちとなりますの」
「昏斗は大鳳天満に敗北する未来が訪れますわ。何度占っても同じ結果」
昏斗に見せてくれた前世の昏斗が書いた本に記されていなかった事実がある。このことを知っていたから、前世の昏斗は今の昏斗に伝えない方向性で記録を残したとしたら……。
「未来を変えるにはどうしたらいいの?」
「そうですわね。何かきっかけさえあれば未来は変わります。例えば昏斗の周りにいる者たちが違う行動をしたり、あるいは二人の愛が強くなければ大鳳天満には勝てない」
「それと二人が仮に喧嘩でもしたら吉ではなく凶ですわね。二人の関係性がすれ違いにならないように気をつけるのも手ですわ」
私たちの行動や二人の関係性が崩れないように動くしかない。だとしても一体、どうすれば莉耶ちゃんを守れる。セリニ・ネアに転職したはいいけど、エンジースは追ってくるから。
「琥珀、もう一つのカードを見せたらどうだ?真の神なら謎を解明できる」
「ですわね。占った結果、もう一つこんなカードが出ましたの」
私に見せてくれたカードはえっと思わず三人の顔を見てしまう。女性はジャスミンの冠を被っていて、男性は星の冠を被って手と繋いでいる。女性のお腹あたりにはハートがあり、隅っこには小さいけれど天使がぽつりと描かれていた。
小さな命が宿っているとしたら、奪わせられない。
「感づいただろ?まだ本人は気づいていないだろうけど、体に異変が起きるはずだ」
「めでたいことですわ」
「そうですわね、姉様。ただその命が落ちる未来もおありなことですわ」
真珠さんが私にカードをくれてそこに描かれていたのは女性が天使に奪われハートが真っ二つになっている絵。
「じゃあ今の段階だと莉耶ちゃんは流産する可能性が高いってことなの?」
「九十九パーセント、その未来が確定しそうな段階ですわね」
なんとかして二人の子供も守らなくちゃならない方向性で考えるしかない。今はセリニ・ネアに機密情報で伝えるしかなさそう。それに莉耶ちゃんも妊娠していることを知った時点で、エンジースを恐れ始める。
このことは昏斗にはまだ教えないのはどういうことなのかさっぱりだけど、心の奥にしまっておこうと思った。




