35僕は火、私は物
地球オルモフィーケを無事に奪還できたことで、平和になったことは嬉しいけれど一つ問題点が生まれた。今まで捕食人間はディアヴォロスという存在を知らなかったこともありモンディガや違う種のディアヴォロスを化け物扱いされていると苦情がクレヴィー社に来ている。
と昏来から初日の情報で僕はまだ別荘で寝っ転がっていた。あの装置を使ったことで体が思うように動かず、桜庭課長に報告して急遽、有休を取ることに。
水星ヘルスミエの時はすぐ動けたはずなんだけど、今回はなぜ体が思うように動かないのかさっぱりだ。もしかするとあの力に影響が出ているとかなら、父さんが言ったようにあの力は使わない方がいいかもしれない。
テレビを観ながらそんなことを考えていると、影神が紅茶を淹れてくれてそれを飲みながら星音の特集コーナーを観る。星音が狙われる理由がなくなったことで仕事に専念できているようで何よりだ。
「星音様、星河喰雅が亡くなられたというのに、生き生きしていますね」
「まあそりゃあそうだよ。だって星河会長は元々、星音を使って食そうとしたつもりだったらしいから。ただ気になるんだ。星河会長が蝕夜によって蘇ったら、星音の他に姉さんや流彗くんが危険になる。影神、だから陰で見守ってくれる?」
「もちろんです、坊っちゃん。昏無お嬢様のお子様も私たちが必ずお守り致します」
「そう言ってくれると思った。火星アリーレスに行く前に、昏有兄さんともう一度話しておきたいけど、会ってくれるかな」
「ご兄弟なんですし、きっと会ってくれますよ」
そうだといいなと背伸びをして悠々とお茶を飲んでいたら、ダダダッと走ってくる音がして影神に扉を開けてもらい、どうせ美汐だろう。
「どうした、美汐」
「どうしたこうじゃない!何この記事!」
今朝、新聞でも載っていた記事を見せつけられ、美汐にとっては不愉快な記事でもあったな。
「あたし、こんなことしてない!」
「仕方ないよ。だってこの記事、ネオリオ人が書き上げた嘘の情報なんだからさ。気にすることはないよ、美汐」
「それでも許せない!あんたの兄に言いなさいよ!」
「兄さんと連絡は不可能。だから我慢して」
「いやだ!ネオリオ社に乗り込む!」
落ち着いてとソファーに座らせ、影神にハーブティーを作ってもらい改めてその記事を読み返す。
美汐は流彗くんの誕生日パーティーで一緒に来たことにより、僕の彼女だと思い込んだネオリオ人の誰かがでっち上げた嘘の情報だ。もちろんそれをみた莉耶はとても怒りながら何この記事と連絡してきたな。
「あたしは昏斗とこんなことしてないし、そもそも蝕夜の頼みで来た。あーもう腹が立つ」
「噂に流されないようにね。まあ僕は真の神でもあるからこういうプライベートを盗みたくなるパパラッチもこれから出てくる。もしもこういう記事が載るのが嫌なら僕と距離をおいたほうがいいよ」
「それは嫌だ。だって昏斗は」
頬を染める美汐でふうんそういうことかと肩を押してソファーに寝かせ顔を近づけると影神のストップが入った。
「坊っちゃん、それはよろしくないかと」
「わかってるよ。ごめんね、びっくりさせちゃって」
「昏斗の馬鹿!」
僕にクッションを投げつけ美汐は赤くなりながら新プラネットコード社に帰ってしまう。美汐も可愛いなと思いながら、テレビを消しスマートウォッチの画面を開く。
「心たちの動きはどうだった?」
「えぇ。セリニ・ネアは坊っちゃんが仰っていた通りに動き出しました。いかが致しましょう?」
僕の読みは当たっていたってことか。星河会長が亡くなったかまではいかないけど、クレヴィー社が全滅したことでセリニ・ネアが動き出したこと。
だが僕の読みはセリニ・ネアが動き出したとしても、新しく社を作り捕食人間を管理するエクリプス人が誕生する。そこは蝕夜に問い合わせてみなければわからない部分だ。
「セリニ・ネアの目的はディアヴォロスの消滅ではなく、今起きていることを終わらせることと心から情報はもらえた。本当にそうなのかまだ僕の気持ちは揺らいでいるけど、早めに手を打っといた方がいいか。影神、火星アリーレスを管理しているエクリプス人って確かアリスちゃんだったよね?」
「はい。え?お会いしに行くのですか?」
「まあね。前世の僕は何度がアリスちゃんと接触していることが多かったらしいから会いに行こうと思う。それで影神にどうしても用意して欲しいのがあるんだ。手に入るよね」
影神は笑っていながらあまりエクリプス人と接触しないでもらいたいという顔立ちではあるが、用意してもらえることになった。
今のアリスちゃんはあれが好きなのかわからないけど持って行く価値はありそうだ。また単独行動になりそうでも未来のためでもあるからなと体を休めていった。
翌日、すっかり体が元通りになって僕と菊太は新プラネットコード社に向かっていたら菊太に言われてしまう。
「また単独行動するなら俺も連れて行けよ。だって俺は昏斗の相棒でもあるんだしスリウス犬使いじゃなくなっちまうから」
「寝てたから聞いてないと思ってたよ。わかってる。今度は連れて行くから。それにアリスちゃん、犬大好きだから連れて行けば喜ぶと思うしね」
「んでアリスってエクリプス人なんだろ?平気なのか?」
「んー保証はできないかも」
一発背中を殴られてしまってもしょうがないことだ。
クレヴィー社を新プラネットコード社にしたわけであるが一日でこんなに変わるもんかと建物が変わっていた。まあエンヴィリオンを使えばできそうな感じでも姉さんがずっといた場所でもあるから嫌だったんだろう。
ロビーに入り第七捜査課室へ訪れてみると莉耶斗甘ちゃんしかいなかったのだ。
「体、もう大丈夫なの?」
「おかげさまで。桜庭課長たちは?」
「今、会議に出席してる。私も参加しようと思ったんだけど、昏斗が戻るだろうからって」
「捕食人間たちはどう?慣れてる?」
莉耶に聞くとそれがと苦笑いして甘ちゃんが僕の手を引っ張ってミーティング室へと入りある映像を見せてくれた。化け物は排除しろという映像が流れていて、ディアヴォロスやエクリプス人は表に出にくくなってしまったらしい。
これは差別化が始まりそうな勢いだな。どうしたものかと映像を観ていたら、会議がおわったらしく第七捜査課のみんなが戻ってくる。そこに桜庭課長と海さんを見つけ、ミーティング室を出た。
「桜庭課長、海さん、ただいま戻りました」
「お疲れ様、昏斗。今回もよく頑張ってくれたね」
桜庭課長に褒められ嬉しくなっていると海さんが僕の髪の毛をくしゃくしゃにし、海さんは第七捜査課室に入ってしまわれる。正直じゃないんだからと桜庭課長のお言葉を聞いた。
「会議の結果、僕たちはそのまま火星アリーレスの調査に当たるよう桃花会長に言われた。本当はもう少しこっちにいたいだろうけど、準備を頼みたい」
「はい。あの、昏来と昏未の配属は?」
「鈴哉が戻って来たから、第一捜査課に配属されることになったよ。それとひたると美汐も第一捜査課に人事異動となった。昏無は子育てもあるから総務課に配属」
よかったと安堵を感じ一先ずは安心ってことでいいのか。
「あの、行く前にどうしても兄に会っておきたいんです。それからでもいいですか?」
「もちろん。行って来ていいけど早めに戻ってきて」
「はい。菊太、行くよ」
会えるかわからないけれど、もう一度会っておきたいとペンを起動させバイクとなりそれに乗ってネオリオ街へと急ぐ。バラの流星群をやったから地球オルモフィーケではもう戦争は起きないと信じたい。
バイクを走らせていたらエンヴィリオが数体いて瓦礫を粉々にしていた。もしかして兄さんがと走らせていたら昏希だった。
「昏希」
「昏斗兄上、どうかしたのですか?」
「昏有兄さんネオリオ社にいる?兄ちゃん、火星アリーレスに行くことになったから、しばらく会えないと思って会っておきたいんだ」
「昏有兄上ならさっき出張に出かけてしまったぞ。確か木星セウスジアの調査に行くと言ってた」
「そっか。話せると思ったんだけどな。ありがとう、昏希。そうだ、これ甘ちゃんから預かったもの」
行く前に甘ちゃんが僕に託したものを昏希に渡すと昏希は微笑んで感謝すると僕に言いながら思い詰めた顔でこう言う。
「昏斗兄上、怒ってはいないのであるか?余は星河喰雅を抹殺したこと」
「僕も同じことをしてたと思う。お互い様だよ。だからそんな顔しない、昏希。昏希は昏の希望でもある。たくさんの希望を持ちどの選択を選んでも、兄ちゃんは昏希を応援するよ。それがどんな結末が待っていようともね。またどこかで会おう、昏希」
「うむ。昏無姉上、それから昏来兄上と昏未姉上に伝えてくれぬか?余と昏有兄上はいつでも出迎える準備は整っている。いつでも戻って来て良いと。母上はそれぞれの道を歩んでいるのだから、止めはしないけれど大きな怪我だけは避けるよう言われている。それも伝えてほしい」
「伝える。それじゃあ」
昏希にじゃあという合図をして僕と菊太は新プラネットコード社へ引き返し火星アリーレスに行く準備をしていった。
クレヴィー社が開発した駅で火星アリーレス行きの電車に乗り地球オルモフィーケから離れる。思っていた地球オルモフィーケではなかったけど、これからはまた再築が始まる頃だろうと願いたい。
それにしてもクレヴィー社が使っていた駅を利用させてもらえるとはさすがは姉さんだ。これからは地下に行かなくて済むけれど、今後のプラネットはどうなるか予想できない。
心が言っていた新たな敵が現れるかもしれないという言葉がどうしても引っかかる。ネオリオ人かエクリプス人、それとも違う人種が現れた場合の対処方法を考えなければならない。
星を観ながらそんなことを考えていると莉耶が隣に来て、缶コーヒーをくれる。
「何考えてたの?」
「新しい敵が現れたらどうするか考えてた。クレヴィー社が崩壊しディアヴォロスやエクリプス人の居場所が一変するかもしれない。それに新たな敵が現れたら、何かとてつもないことが起きるんじゃないかって気がするんだ」
「ディアヴォロスやエクリプス人は悪魔そのもの。まさか天使が現れるとかなの?」
「そこまでは読めないけど、新たな人種が君臨するかもしれない。目的がなんなのかそれを探る必要があるかもね」
天使かと莉耶は少し興味を抱いているようで、父さんに教わってきたことを振り返ろうとしたらスマートウォッチが鳴った。誰だろうかと確認してみると、蝕夜からのメールで確認するとえっと声を出してしまう。どうしたのと莉耶が覗き込んで嘘でしょと莉耶も呟いた。
義弟昏斗、すまぬ。昏花が失踪してしまった!僕の力でも探せぬ。渡しておいたペンダントも部屋に転がっていたから居場所が掴めず、探せない状況に追い込まれている。昏花を見つけ次第連絡を頼むぞ、義弟昏斗よ。
昏花が行方不明になってしまうだなんて思いたくはない。なぜよりによって昏花がこのタイミングで奪われる必要があった。考えても答えは見えず、火星アリーレスに着いたらプラネットコード社で捜索願を提出しないと動いてくれない。
「変だよね。ディアヴォロスの帝王である月日蝕夜に飼われた昏花が奪われるだなんて何かの間違いなんじゃ」
「いや。例えディアヴォロスの帝王である蝕夜が昏花を守っていたとしても、昏花は昏の花。リコーフォスを示す鍵となるから狙われやすい対象なんだ。だから蝕夜は常に付き添ってもらってたのもある。ただ引っかかるのがこのタイミングで奪われてしまった」
「まさか新たな敵とかじゃないよね?」
予想を遥かに超えるほど、僕は今、混乱の状況になっている。昏花は遊園地の時、蝕夜から許可を得て連絡先を交換していた。昨日も連絡してたから終わった直後に何かが起きたとしか考えられない。
一度昏花に連絡とってみるかと連絡帳を開いて昏花に連絡をとってみるが音信不通になっていた。スマートウォッチにはGPSがついているからそれで特定はできるけれど、電源がオフになっていたらアウトだ。
クレヴィー社がなくなってしまったから、クレヴィー社にいた全社員をプラネットコード社に入社させる方向性で、姉さんが手配してくれていたのにな。
このことは姉さんに報告だと姉さんに一通のメールを作成して送信する。後から連絡はくれるだろう。
「桜庭課長たちにも報告して、調査をしながら昏花を探しに行けないかな?」
「そうだね。みんなと相談してみよう、昏斗」
僕らは桜庭課長たちが座っているところへと行き、桜庭課長たちに事情を説明していった。
⁑
気がついたら体を縛られて箱に閉じ込められている私は、影神に教わっていた縄解きをしていた。手だけでも解けばここから脱出できる。そう思い込んで縄を解いていくとパカッと開けられ一瞬眩しく目を細めた。
赤茶の肌を持つエクリプス人の女性たちが私を見ていてゆっくりと起こされる。ここはと周囲をみていたら目の前にアラビアン風の衣装を着た茜さんが立っていた。
「丁重にお連れしなさい。ごめんなさいね、昏花」
「茜さん、どう言うことですか?状況が全然読めない」
「昏花は蝕夜様の物ではなく、アリス様の物になるの。お連れして」
全く状況が読めぬまま女性陣に連れられ着ているものを脱がされ、茜さんと似たアラビアン風の衣装に着せられる。サンダーソニアのピアスを盗られそうになり止めてと抵抗するも奪われ、ルビーの宝石をつけられてしまった。
全て没収されてしまい出来上がった私を見て、美しいわと言い出す茜さん。私を連れ去るために昏斗捜索隊に志願したのと茜さんを睨む。
「そんな顔しないの」
「私を連れ去るために志願したの?」
「えぇそうよ。全てはアリス様のため。逃げようとも無駄よ。ここは火星アリーレスでここは火山の中。生き延びることは不可能よ」
バラさえあればエンヴィリオを使って逃げ出せた。ここには花すら置かれてないから逃げることも不可能ってことなの。
「さあアリス様の元へ行きましょ。あなたに会えるの楽しみにしていたのだから」
アリスってどんな人なのと茜さんに背中を押されながら歩き出す。窓もなく本当に山の中なんだと悟りながら歩き部屋に案内してもらった。
入ったその先に待ち構えていたのは八雲くんより一、二個下の少女がおとぎ話に出てくるアリスの格好をしている。手作りっぽい人形で遊んでいるも、人形が不気味で体が一瞬震えた。
「アリス様、お連れ致しました」
「茜、ありがとう。下がっていい」
茜さんが部屋を出てしまって少女と二人きりになり部屋から出ないようにと炎が現れる。アリスは人形を置いて私に近づき何をする気と思いきや胸を触ってきて思わず叫びながら突き飛ばした。
何この子、女の子なのに何やらかしてるわけと半泣きしながらアリスを睨んだ。そしたらアリスは高笑いしながら面白えと姿が切り替わる。その姿はアラビアン風の衣服を着た男の子だったのだ。美汐ちゃんのように姿を変えられるってわけなの。
手が揉みたそうにしていて、ニヤニヤしながらアリスは私にこう告げた。
「昏花は俺様の物。蝕夜より先に奪いたかったのにプルトナスが邪魔するからさ。我慢できなくて俺様の部屋、昏花だらけにしたんだー。なあ俺と遊んでくれるよね?」
「遊ぶって何を?」
「だからこうだって」
すぐにアリスがいなくなってどこへ行ったのと周囲を見たら何かを感じ、目の前をみるとアリスがまた私に触れて来た。この馬鹿小僧と私は再び突き飛ばす。それでもアリスは向かってきてしばらく続いた。
嫌らしい子供が火星アリーレスを管理しているとは思えなくて、狭い部屋で走り回ったことで息を切らし呼吸を整える。
「茜は言うこと聞いてくれるのに、昏花は全然だけどちょー面白え」
「子供がやるもんじゃないでしょ。そもそもどう言う教育受けたらあなたのような子ができるわけ。それが知りたっ」
喋っていたら隙を突かれてやられてしまい、アリスを徹底的に礼儀正しい子にさせないと未来が怖すぎる。今は我慢だと降参と発言したら、ピタッと止まった。
「やりぃ。今日から昏花は俺様のもの!俺様のゆーことは絶対な。蝕夜に見せびらかすのは後にしよう。おい、茜。飯の時間にしよう」
茜さんが入って来てその後ろにエクリプス人が料理を持って来て、三人でカレーを食べることになってしまう。昏斗や蝕夜にこの場を見せたら、恐ろしいことになりそうと嬉しそうなアリスを見ながら助けが来るのを待つことにした。




