1僕は星、私は花
以前投稿していたプラネットコードを改訂したものになります。内容は異なりますが、人物の名は変更していません。
自然豊かな街に多くの観光客が訪れ、今日も朝から賑やかだなとシャッターを上げながらその光景を眺めていた。いい天気だし夜には満天の星が観察できそうだと空を見上げる。
何も起きませんようにと願いながらシャッターを全てあげ、まだ寝ているであろう双子の妹を起こしに行く。
僕らの両親は二年前、神様から手紙と贈り物を頂き、確認すると、父さんには上品な燕尾服に母さんにはドレスだった。手紙には真神夫婦を神パーティーに招待するとあり、その日がちょうど僕と妹の誕生日。
神パーティーは毎月一度行われ招待された者しか入れない場でもあり、長年の夢だったらしい両親の背中を押し見送って、二人だけでお祝いした。
されど両親は帰ってこず、心配になった僕と妹は神役所という場所へ訪れ、待合室で待っていたら次々と部屋から出ていく人が目に焼き付いたのを覚えてる。
真神さんと呼ばれてお部屋に入り、担当者からガラスの箱を渡され、その中身が父さんがつけていた眼鏡と、そして母さんがつけていったピアスを渡されこう言われた。
〝誠に申し訳ありません。あなたのご両親は神パーティーに出席後、これを置いて道に迷われてしまいました。捜索願を出しますか?〟
僕はその人の瞳に裏があるとわかってしまい、妹がお願いしますという前に、自分たちで探しますと伝えて、それを受け取り妹の手を握って神役所を出た。
妹はどうして捜索願出さなかったのという口論により、あれ以来僕らは不仲のまま一緒に過ごしている。
妹は引きこもり生活を送り、そうさせないために父さんと母さんが残してくれたこの家で自営業をしていた。
妹は夜遅くまで起きていることが多いから寝ているだろうな。ノックをしても反応せず、入るよと言いながら扉を開けると、スイッチが入り最後にはボクシンググローブが僕の顔面に当たりそうになって避けた。
もう僕が嫌いなのはわかったよとカーテンを開けて、朝日を浴びさせるも布団に包まっている。少しは日光に当たらないと身体によくないと布団を引っ張った。
「昏花、朝だよ。ほら起きて」
「ほっといてよ、この馬鹿、昏斗!」
枕でバシバシと叩かれ今日も元気でよかったよと、朝食食べようと誘ったら部屋で食べるからいいと断れてしまう。そうですよねと布団を返し、朝食をトレーに乗せて持っていくとありがとうと扉を閉められた。
花屋なら昏花も興味持ってくれそうでやり始めたが、昏花は花に一切興味を持たず、パソコンがほしいと言い出したから、与えた途端に見られないようにと、いつも昏花の部屋には悪戯が仕掛けられているのだ。
毎度そのトラップに引っ掛かり一度包丁が飛んで来たときは焦ったよ。その時は昏花に相当怒った記憶があり、それ以来はボクシンググローブのみとなった。
リビングに戻るとドテンと移住犬が寝ており、餌の袋を取り出すと起きて、キラキラした目をしながらお座りをしている。この子はなんていい子なんだと移住犬の前に餌が入った器を置いて待てよと指示する。
一切僕の目を逸らさず今日もお利口だとよしっと言うと、ガツガツと食べ始め、僕も朝食をいただく。
神パーティーの日付が決まったらしくその日程が放送されて、再び僕らの誕生日だなんて信じられない。
まあこの二年招待状が送られていないから、今回も大丈夫そうかと食べていると、すみません宅急便ですと言う声にはーいと返事し出た。
僕はその姿を見てお引き取りくださいと言いたくても、これはチャンスかとサインをしてその場で確認する。そこに入っていたのは、白いドレスのみで手紙には真神昏花様を神パーティーに招待するとあった。
なぜ僕は招待されないと思考を膨らませていたら、後ろから視線を感じ振り向く。部屋から出ない昏花が何が届いたのと言う顔でいた。
見せたくはないと仕入れた花が届いたんだよと誤魔化すも、僕をどかして見てしまう。
「昏花、行くな。兄ちゃんが働いていくから、昏花は好きなことしてていい」
「私、行くよ。お父さんとお母さんを探しに行く」
「無茶だ。出席した人が誰一人帰って来ていないことぐらいわかってるでしょ?考え直して」
「嫌だ。その手紙私の」
ドレスが入った箱と手紙を奪われさっさと自分の部屋に行ってしまい、追いかけても今までは鍵を閉めていなかったのに完全に鍵を閉められた。
昏花とノックしても開けてはくれず、神パーティーなんかじゃない。絶対に何かがあるんだ。僕の目は誤魔化せないよと、その場で立ち崩し扉に背中を預けた。どうにかして僕らの誕生日までに説得しなければ、昏花が行ってしまう。
どうしたらいいと頭を悩ませていたら移住犬である菊太が来た。僕は菊太に触れどうしたらいいかなと撫でても何一つ、浮かばなかった。
誕生日がどんどん過ぎていきながらも、昏花に考え直してと言っているが、ご飯を受け取るとすぐ鍵を閉められてしまう日々が続く。
そうして誕生日当日となってしまい、迎えが来るのは夜。それまでに昏花とちゃんと話さなくちゃと昏花の部屋に行った。
「昏花、お誕生日おめでとう。開けてくれないかな?ちゃんと話し合おう」
それでも返事はなく開けようとしても鍵はかかったまま。このまま一生話さないで行っちゃうつもりなのと、一階に降りようとしたらカチャッと開く音が聞こえた。
入っていいんだねと扉を開けると悪戯道具は消えており、あんなに散らかっていたのが綺麗になっている。
「昏花……」
「昏斗、ごめんね。ずっと避けてて。お誕生日、おめでとう」
僕の左腕に何かをつけ昏花の手が離れるとスマートウォッチで北斗七星が描かれていた。マネキンにはあのドレスが飾られており、昏花の手をとって昏花に最終確認をとる。
「本当に行くんだね」
「探しに行く。お父さんもお母さんも見つけて、他の人たちも探して戻ってくるから」
「兄ちゃんは行ってほしくはないけど、昏花は曲げない部分が強いから行っておいで。そして必ず戻ってきて僕たちの家に」
「約束」
小指を出して僕も小指を出し指切りげんまんをして、その日は花屋を手伝ってくれた。
夜となり昏花はドレスに着替え、どうかなと照れながら、凄くいいよと貰ったスマートウォッチの画面を宙に浮かせ、カメラをタップし菊太を入れて写真を撮る。
「昏花、ちょっと待って」
行くと聞かないだろうからせめてこれは僕からの誕生日プレゼントとして贈った。ピアスやネックスレスとか色々悩んだ結果、髪飾りを選んだ。
つけてみるとドレスに似合っていて、僕の可愛い妹と頬を触れおでこをくっつける。
「昏花、無事に帰って来てね」
「うん。身体には気をつけて」
昏花もと告げると迎えが来たっぽく扉を開けると馬車があり、二度僕は見送らなきゃ行かないんだ。最後に思いっきりハグして、昏花は神パーティーへと向かわれた。
スマートウォッチで撮った最初の一枚を印刷し写真たてに飾り、食べ終わった皿を片付けていくも視界がぼやけていく。どうして僕は招かれなかったんだという思いと、どうせなら一緒に行きたかったよ。
その日どれだけ悔しみの涙がでたのか数えてもわからなかった。
次の日、やはり昏花は帰っては来てくれずも昏花を信じ、普段通りに店を開ける。空を見上げると今日は曇っており星はお預けかと、店の中に入って花を出しているとすみませんと声がかかった。
振り返ってみると武装した子が来て見たこともない服装だなと、不思議に思っているとワンッと吠えてしまう菊太。
「すみません。菊太、ほらあっち行ってて」
僕が言うと唸りながらリビングの方へと行ってもらい、彼女と向き直す。
「私はこういう者です」
名刺を渡され僕も名刺を渡し職業を確認した。
プラネットコード社 本社在勤 第七捜査課 課長代理 國月莉耶
プラネットコード社という会社はディアヴォロス退治や調査関連の会社だそうだ。ディアヴォロスって何とそこから疑問点が浮かび上がり、彼女をみると耳に手を当てて無線を使いながらはい、はいと言っている。
彼女のことを待っているとわかりました、連れて行きますと、上司か誰かに言い終えた後僕と向き直ってくれた。
「説明は後でします。とにかくあなたは荷造りをしてください。三十分後にこの街は崩壊します」
「どういうことですか?僕はここから離れたくはない!ここで待つと妹と約束したんだ!」
彼女に伝えるとひっぱ叩かれ頬がじわじわし頬に手を当てていると、彼女は涙目で俺に訴えた。
「あなたは死にたいんですか?妹となんの約束をしたのかはわかりませんが、妹はもう帰ってはこない!生きる希望を託されたあなたは、真実を突き止めたくはないんですか?真神昏斗!」
俺の服を掴みそう言った彼女はまた耳に手を当てて後十分と驚愕しており、僕は彼女の手を離して必要なものと家族の写真を積める。どうして彼女が僕の名を知っていたのかは知らないけど、何か秘密を握ってると確信した。
これでいいかと僕は指笛を吹いて来い、菊太と呼ぶとワンッといい返事をして来てくれる。
「準備はできましたか?」
「はい」
「急ぎますよ」
うーというサイレンが鳴り始め今まで聞いたこともなかったが雲空がなぜか消え、地面の色をしている。立ち止まりたくても彼女についていったら、早くと武装している彼女と同じ人が顔を出していた。
そこに入った途端に僕らがずっと住んでいた街が崩壊し見えるのは土砂崩れの壁。
「間一髪だったね、莉耶。そして初めまして、真神昏斗くん。僕は桜庭昴。おっと自己紹介している暇はなさそうだ。早速、本社に戻るよ。ついてきて」
桜庭さんについて行き後ろの方はまだ音が鳴っていながらも、振り向かず向かった先はなんと美しい世界なんだろうと見惚れてしまう。
そこはまさしく宇宙であり列車が止まっていて、それに乗り込むと列車が発車した。國月さんはスマートウォッチの画面を開き、リストを見ながら腕を見せてと一人一人チェックを入れ全員いるか確認をとっている。
そういや僕もついてたかもと腕まくりをして確認しようとも、ちょうど見れない部分にあるのかな。諦めた時に國月さんが声に出して教えてくれる。
「Sー138435、真神昏斗で間違いはないと。課長、全員揃ってます」
「そう。よかった。一人でも残ってたら食されてたからね。今は家を失った人たちの家を提供しなければならない」
「はい。ですがセウスジアはごく一部しか破壊しなかったのはどういうことですか?本来ならば全エリアごと崩壊し、新たな人材を入れて新しい街づくりが始まる。それなのにどうして?」
「狙いはおそらく、君が関係してる。それはついてからにしよう。ディアヴォロスが追って来る前に本社に入らなければ、この列車ごと破壊されるからね。急いで」
運転している人に告げて列車が少し速度を上げていき、着くまではこの美しい宇宙を眺めていった。
起きて、起きてよと昏花の声にはっとあれは夢だったのかと思いきや、目の前には腕を組んで僕を睨んでいる國月さんがいる。ここはと列車の窓で確かめてみると建物の中だと知り、さっさと降りろという目つきだから立ち上がった。
菊太はと一緒にいたはずなのに、いないのはどういうことと首を傾げていたら、ワンッと外から菊太が吠えていることに気づく。
列車から降り菊太と両手を広げると僕に気づきこっちに来て、ペロペロと舐めて来たのだ。くすぐったいよと戯れていたら國月さんの視線を感じ、すみませんとおいでと菊太に伝えて建物の中に入った。
建物の中には空が見えしかも街のように建物がいくつも建って生活している人がいる。
「あれは?」
「偽装空。本来、私たちは地下に住んでる。そして地上には私たちの強敵ディアヴォロスが住んでるの」
「さっきから気になってたんだけどディアヴォロスってなんなの?」
「ディアヴォロスというのは人食い星人。そしてあなたたちが住んでいたのは捕食エリアの一部。いつも質を選び神パーティーという偽のパーティーに招待して食す会でもある。それで質がいいものがなくなったら一度壊すの。さっきみたいにね」
じゃあ、僕がいくら待っても父さんや母さん、昏花は戻らないってことなの。信じたくはないと立ち止まっていたら、僕の異変に気づいた國月さんは戻って来て、ちなみに妹のドレスは何色だったと聞かれた。
「純白なドレスだった」
「純白か。ご両親は?」
「漆黒の黒。色と関係してるの?」
「なるほどね。とにかく、本社についてから話してあげる」
國月さんは僕の背中を押して行き、ドレスの色になんの意味があるのか想像がつかない。この街にいる人たちは國月さんたちが助けてあげた人たちなのかな。
みんな、幸せそうな笑顔だなと昏花の笑顔を思い出す。昏花、ごめんね。僕がもっとしっかりしていれば昏花は死なずにすんだ。昏花の分まで僕は絶対にそのディアヴォロスという星人に負けるもんかと誓った。
⁑
神パーティーは偽物であり、人を狩る場でもあった。夜明けが来るまで化け物に狩られないよう逃げるゲームらしいけど、ドレスのせいで木に引っかかってしまう。後もう少しで夜明けなのになんでよと、ドレスを引っ張っていたら化け物がこっちに来てしまった。
早く逃げて私は昏斗のところに帰るんだからと、ビリッとドレスが破れ、その衝動に尻餅をついてしまう。いや、いやだよ、昏斗助けてと、後ろに下がっていると誰かとぶつかり上を見た。
凛とした顔立ちにサラサラの髪質の青年に気を取られていたら、化け物に食べられそうになったところ、陽が出てきて鐘の音が聞こえる。
そしたらその化け物はお辞儀をして退散していき、やっと帰れるんだと安心を持っていたら、後ろにいた青年がしゃがんで私を強く抱きしめた。
「いい匂い。食べたらもったいないぐらいの香りだ」
「やめてっやめてってばっ」
「気に入った。おい、この子を僕の屋敷へ。丁重に扱わなければお前を食う。よいな?」
違う化け物が私を担いで離してと背中をパコパコ叩くもびくともせず、一瞬で場所が切り替わった場所はなんという広さの豪邸の屋敷。
変な化け物がスーツを着てるし夢でも見ているんじゃないかというぐらいだった。
降ろされた先は風呂場らしく女性が現れて汚れた私を洗い流す。
新しいドレスを用意されてそれに着替えるためにも手伝ってもらって、帰れるんじゃないのと、昏斗がくれた髪飾りがないことに気づく。
「あの、このかごに入ってた髪飾りはどこですか?」
「あれならもう送りましたよ」
「え……?お願い!それは大切な人が私に贈ってくれたものなんです!返してください!」
ですがと女性は困惑し始め、あれがなきゃ勇気が出ないよとその場で身体を崩すと、何事だとさっきの青年が来てくれた。私は思わずその青年に飛びつきお願いと伝える。
「私、なんでもするから。だからお願い、私がつけてた髪飾りを返して!」
「髪飾り?それならこれのこと?」
見せてもらうとお父さんとお母さんと同様に、ガラスのケースに髪飾りが入っておりよかったと安心する。
「よかったのですか?」
「うん。緊急でなんか知らないけど、セウスジアのGエリアを崩壊するって聞いてたから家族に送っても届かない」
「ちょっと待って。どういうことなの?」
「食事をしながら話そう」
状況が読めぬまま私は食卓へと連れてってもらい、椅子に座って料理が並び始める。青年はワインを飲みながら普通に食べており、これって人間の肉やワインは人の血と抵抗感があった。迷っていると青年がこう言う。
「大丈夫、ワインは葡萄酒でありこの肉は牛肉だから安心して構わない」
そう言われてもと思ってもお腹は正直に鳴ってしまい、食べるしかないと頬張る。
「さて先程のことが気になるよね。僕たちはディアヴォロスという人食い星人。そして君ら人間は僕たちに狩られる捕食人間」
「どうしてこんなことするの?」
「生きるため。ただそれだけのこと。時代は変わったんだよ。今度は動物が狩られるのではなく、人が狩られる時代に。ようこそ、地上の世界ディアヴォロスが住む世界へ、昏花」
青年は私のことを知っていて尚且つ、さっきの発言。緊急でセウスジアのGエリアを崩壊させたのも、そこに昏斗がいることを知っていたからってことになる。
それとここに来たのにはあることを聞き出すため、私はこの神パーティーに参加した。
「お父さんとお母さんはどこにいるの?生きてるの?」
「真神夫婦は僕が食そうと仕入れたのに、邪魔が入ったおかげで食べ損ねた。奪われたことでそこからは知らない。その代わりに双子を食そうとあれを送ってみたけど、捜索願は出さなかったから見逃してたのに、昏花が捜索願を出してくれたことでチャンスと思ったんだよ」
「いずれは私を食すの?」
「気が向いたらかな。仮に昏斗が生きて現れたら昏斗の前で食してあげる。だからそれまでは保留にしておくよ。今はその香りだけで十分」
昏斗、どうか無事に生き抜いて。私もこの人に食べられないように頑張るから。なんでも知っているような清々しい顔を見ながら食事をしていった。