注意を怠った代償と教訓
――記憶に印象強く残っているものは、雲ひとつ無い晴れた空だった。
ある平日の夕方。
いつも通りに学校へ行って授業を受け、掃除も終わればあと少しで帰れるというタイミングでそれは起こった。
担当場所の教室にある電灯が切れていたから付け替えようとして、高さが足りないからと踏み台に乗ったわけだが。
「――は?」
その瞬間に視界が反転し。間を空けずに衝撃が来て目の前がぱっと暗くなった。
「…………」
何が起こったのかはその瞬間こそわかりはしなかったけれど。
頭の痛みを堪えながら起き上がって周囲を見れば、半笑いの顔がいくつかそこにあって。ああ足元をすくわれたんだなと状況を理解した。
どこにでも後先を考えない――考えられないバカというものはいるらしい。これをちょっとした悪戯だと思って、面白いことだとでも思ってやったのだろう。
……相手に怪我をさせる可能性があることを面白いと思うのは、やってる側だけだろうが。
そう思って、こちらが主犯だろう相手をじろりとにらみつけてやれば、そこでようやくやってはいけないことだったという考えに至ったらしいそいつらは逃げるように教室を出て行った。
……まだ掃除が終わってないんだがなぁ。
怪我もするし、手間は増えるしでいいことなしだ、と。そんなことを考えながらため息を追加した後で、作業を再開した。
電灯が割れていなかったことだけが、この件における不幸中の幸いというところだろうか。
なぜならば、バカな真似をした連中は、現場を見ていた人間がいなかったのでお咎めなしだったからである。
世の中はやったもんがち。
ホント、嫌な世の中である。
お題:雲、逃げる、踏み台