初めてのデートで浮かれる心
今日は雲ひとつ無い晴れた空が広がっている。絶好のお出かけ日和というやつだ。
……天気のことだけが少し不安だったんだよなぁ。
天気予報では元より晴れという話だったとは言え、天候の変化というものは予想から外れることが多いものだ。出かけようとした日に限って天気が悪くなるという、雨男として身内に定評がある自分にとっては特にである。
元より個人にはどうしようもないものだから、出かける時に雨が降る様子がないことには心底ほっとしたものだ。
人と一緒に出かけるときに天気が悪いという状況を、出鼻が挫かれたようで歓迎できないのは自分だけではないだろう。
……しかし、ちょっと早く来すぎてしまったか。
待ち合わせの時間は十三時で、現在の時刻は十二時である。
遅れるよりはマシだろうけれど、一時間も早く待ち合わせた場所へと来てしまったあたりに、自分でも高揚していることがわかってしまう。
なにせ、待ち合わせの相手が相手だ。
……まさか休日に女の子と出かける機会が出来るとは。
引き篭もりで喪男のまま青春を終えることになると思っていたのだが、ひょんなことからクラスの女子と趣味の話で盛り上がることができ、今日はそんな彼女の買い物に付き合う約束になっているのである。
男女が一組で出かけるのはデートというものだ。人生初のデートとなれば、テンションが上がってしまうのが男子というものだろう。そうじゃない? 違う?
……いや本当に、人生とは何がどう転ぶかわからないもんだ。
とは言え、これがまだ女子グループのお遊びである可能性は捨てきれないのも事実である。油断などできないのが現状だ。現実ってのは厳しいもんだってすげえよく言い聞かされてるし。悲しいことだが、そういう人が居たという事実も知っている。
……せめて身内だけで盛り上がって、教えてくれなければいいんだけどさぁ。
自分の場合はどうなんだろうか。不安になるが、考えてもわかりはしない。
「――あら、ずいぶん早くに来てたんだね。お互い様だけど」
と、そんな風にぐるぐると考えていたところに、知っている声が話しかけてきた。
視線をあげれば、そこには待ち人である彼女の姿があった。続く動きで時計を見ると、時刻はまだ十二時半にもなっていない。
……これだけで安心するのもどうかと思うけど。
ただそれだけのことでお互いに今日の約束を楽しみにしていたと思えて、頭を過ぎっていた不安が少し消えたのは、やはり男子のちょろさというべきか、それとも自分の人生経験の無さというべきか。
……後者かなぁ。
後者なんだろうなぁと内心でため息を吐きながら、こちらの反応を待っている彼女へと笑って言った。
「楽しみだったからね」
「へ?」
「ところで、昼はもう食べてしまったかな?」
「え、あ、うん。まだ食べてない」
「じゃあ、先にどこかで何か食べて行こうか。近くの喫茶店なら、ちょうど割引券を持っているんだけど」
「……おいしいところ?」
「うん、まぁ、そうだと思う。思ってるだけだけど」
「なにそれ。――でもまぁ、君がおいしいと思うなら外れじゃなさそうだし。行きたいな」
「じゃあ行こうか。こっちだよ」
そう言って歩き出すと、彼女もこちらについて来た。歩きながらちらりと横顔を覗くと、幾分楽しそうにしている様子が見えて。
……これが演技だったらすげえなぁ。
そう考えて。せめて今日一日くらいは夢を見てもいいだろうと、そう思うことにした。
「なあに?」
こちらの視線に気づいた彼女が笑いながら首を傾げる。
その問いかけになんでもないと返しながら、食事のときに何を話そうかなと、無い頭を絞って使う話題を考えることにした。
お題:晴れ、女の子、券




