1日目
文字通り祈りの森を駆け抜けた
なるべく体力を温存し、今後に備えるためだ
Cランクの魔物ですら今の俺たちにとってはザコ
それぞれ単騎で余裕を持って倒せる実力を持ってる
年末から比べるとみんな平均的に10以上レベルが上がってるからな
1日で迷いの森の手前までついた俺たちは早速、野営の準備を始める
まだ少し早いが夕方になって始めると遅くなるからな
とりあえず今日は初日だから肉や野菜がふんだんにある
何故か俺と陽介がメインに料理してる
味はまあまあいけると自負しているから別に良いけど
陽介は意外にアウトドア好きでよく海や山でキャンプとかしてる
俺も付き合って2人でいろんなところに行ったなぁ
「ってゆーか楪、なんだこりゃ?皮分厚すぎ。野菜の大きさくらい揃えて切れよ。」
「えっ?先輩めっちゃ上手…そんなっ。」
「お前、料理できないんだな…。」
楪の女子力の無さよ
それに比べて朝比奈は意外とできる
「叶パイセン切り終わったやつは鍋に入れちゃいますね〜。あ、自分式神飛ばしたいんで後はお願いしていいっすか?」
「おう、いいぞ。ありがとな。」
綺麗に皮むきされたジャガイモと切り刻まれた残念なニンジンを見比べてため息をついた
ニンジンはしょうがないから細かく刻んでしまおう
これなら水瀬の方がまだマシだな
「水瀬さん火起こしありがとう。いい感じだね。」
「この前、叶先輩に教えてもらったんです。包丁は危なくて任せられないって言われちゃいました。」
「こっちのナイフは日本の包丁とちょっと違うから慣れないと使いづらいよね〜。」
水瀬は陽介と一緒に肉を焼いてる
斉藤は武器を磨いてる
特にここまで使ってないので対して汚れてない
小林は薪になるような枝を拾ってる
飯田は手伝う気すらない
まぁ飯田の料理の腕なんか最初から期待してないけどな
そんな感じで準備をしてた時、ケイリー御一行が到着した
何しに来たんだ?
「準備ご苦労だな。お前らにしては良い働きだ。褒めてやる。」
ん?
「は?」
「え?何?」
斉藤と小林がイラついたのも気にせず、ケイリーはさも当然とばかりに次の言葉を発した
「おい、私たちのテントと食事はどこだ?」
何言ってるんだ?
「ケイリーさん何かご用ですか?俺ら今から飯なんで話は手短にお願いします。野営するなら早くテントを設置しないと暗くなりますよ。」
「ケイリー様、すみません。来られるって聞いてなかったのでご飯は私たちの分しか用意してないんです。」
しょうがないから俺と水瀬で対応する
全く損な役回りだ
「なんで私が自分でテントを張るんだ?お前達の仕事だろう?」
「いやいやいや、そもそもケイリーさんは今回のメンバーに選ばれてないですよね?来ない人の分を頭数に入れてないです。」
「私達がわざわざ付いてきてやると言ってるのに、貴様その態度はなんだ!」
やれやれ
頭が痛い
「俺たちは付いてきてほしいなんて言ってないですよ?」
「なっ!お前達が不甲斐ないから助けてやろうと言うのになんなんだ!この私を誰だと思ってる!!!」
おいおい
周りの連れの巫女達も止めろよ
なんで一緒になってついてきてるんだよ
どうしたもんかなぁ
「ケイリーが勝手について来ただけだろ。足手まといはいらねー!俺らの邪魔をすんじゃねぇ。」
「光輝はハッキリ言い過ぎ。」
「だって…なぁ?」
「まぁそうっすね。うちらの中で1番弱い水瀬さんでも付いてきてるし〜、無理しないほーがいんじゃね?」
「予定が遅れると帰るのが遅くなるです!(ずっとお風呂入れないんだから、空気よめ!)」
斉藤はそういう繊細な配慮は無理だった
俺がどうしようか決めあぐねている間に、ズバリと本当の事を言ってのけた
しかし話を急に振られた朝比奈と飯田も否定的な意見を述べた
「俺もこの辺で帰った方がいいと思うな。まだ君達だけで引き返せるだろうし。」
「私でもって失礼な!このくらいは余裕だもん。」
「え?今日そんなにペース速くなかったよ?」
陽介、水瀬、楪は我関せずで飯の準備を進めてる
はぁ
俺も腹減ったし、さっさと諦めて帰ってくれないかな
ケイリー達は俺らの通った魔物を間引きされた道を通って来たみたいだから体力も残ってるだろうし、そこまで時間もかからないだろう
見たところ軽装だから、そんなに荷物もなく身軽に動けそうだ
もしかしてなんの準備もせずにきたのか?
そんな馬鹿な
…いや、討伐訓練の時とあまり変わらない格好だ
そもそも普段から姫巫女に荷物を持たせる事は無いから、念頭にないのか?
茹蛸のように赤くなったケイリーは沸騰して何を言ってるのかわからないが、周りの巫女達に諌められてとりあえず引き下がっていった
そこで諌めるなら、速くしとけよ!
ついて来させるなよ!!
と、心の中で俺は突っ込みを入れた