君が欲しい
いつからだっただろうか…
剣が肉を裂く感触が『気持ちいい』と感じる様になったのは
むせ返る様な血の匂いに興奮する
こちらの力量を計れず、絶対的優位な位置にいると思い込んでいる相手を、虫けらの様に嬲る
斬りつけた相手が命乞いする様を見下ろしながら振り下ろす刃
阿鼻叫喚のたうちまわる様を眺める
なんて愉快なことなんだろう
自分の快楽を満たしてくれる
尚且つ至高の存在である御主人様からも褒めて頂ける
経験値も入るし良い事づくしだ
こんなに素晴らしい事は他にないだろう
嗚呼
この世界はなんて素晴らしいんだろう…
俺はもう、元の世界に特段未練はない
元の世界でもそれなりのポジションだった
スクールカーストでも上位にいた
成績もそれなりに良かった
運動もできる方
サッカー部のレギュラー
毎年インハイで上位に入るそれなりに強いチーム
だからといって、別に勉強も運動も一生懸命してたわけじゃなかった
自慢になるかもだけど、手を抜いても人並み以上にできるスペックがあんるだ
家はよくある冷めた家庭
父は商社マンでほとんど家にいないし、母も交友関係で家を空けることが多い
姉は家にいたくなかったのか、大学に入って早々に海外に留学した
それでもお金に困ってるようには見えない
自分で言うのもなんだけど、俺は顔も割とイケメンだし、控えめにいっても上の下くらい?
特別良いわけじゃないけど…って感じの評価だ
だが、この世界ではどうだ?
俺は勇者
この世界の女神に選ばれた勇者
努力せずに頂点に立つことができる
俺がする事は正しい
誰も俺を止められない
何故なら、俺は勇者だから
こんなに罪のない奴らを殺しても、女を嬲っても、強奪しても、何も咎められない
誰も俺を裁く権利はない
俺が気持ちよく勇者をするための対価だ
ただで勇者を働かそうなんて、烏滸がましいだろ?
ただ、彼女は違う
麗しい御主人様
俺が認めた唯一の女
彼女の喜ぶ顔のためならなんだってできる
彼女の美しい顔が曇るなどあってはならない
彼女の清らかな瞳にゴミ屑が写るなど不愉快だ
今日もスラムのガキが俺たちが乗った馬車の前を横切った
馬車が汚れてしまったが、優しい彼女は気にせずそのまま馬車を走らせた
俺は風魔法に毒を乗せて漂わせ、目障りなガキを始末した
2人でいれる数少ない時間を邪魔しやがったんだ
当然のことだ
スキルで作った俺の毒は、上級の聖魔法を使わない限り俺しか解毒できない
己の行いを後悔しながら痛みにのたうちまわって死ね
周りも数人は浴びただろうから同じ結末を辿る
ガキを抑えられなかった罰だ
まぁどうでも良いがな
「ハヤト、どうかしまして?」
「いや、なんでもないよ。お姫様。」
「そう?ふふふっ。いけない子ですわね。」
隣に座っていた彼女は俺の膝に座り直し、耳元で囁く
こういう挑発的なところも大好きだ
「ところで、お願いしていたお薬はできていまして?」
「もちろん、悪戯好きのお姫様のために匂いも味も甘〜く仕上げてるよ。」
俺のスキル、毒精製は色々な種類の毒が作れる
毒といってもさっき使ったような致死性のものや、軽く体が痺れるくらいのもの、遅効性のもの、即効性の劇薬、媚薬、麻酔薬、麻薬など様々
地道に熟練度を上げて、奴隷で実験してるので効果は折り紙つき
彼女もとても気に入ってくれてる
「今夜はたっぷりご褒美をあげますわ。」
頭を撫でてくれる
髪をすく指がこそばゆい
至福の時間と言える
とっておきの俺特製の媚薬で今晩はハイにしてあげるね
「嬉しいな。楽しみだ。」
彼女はゆっくりと目を閉じた
これは『キスして良い』の合図
啄ばむ様な口づけから始まり、彼女の小さな口内に舌を這わせる
甘い
頭の中が痺れるように甘い
漏れる声
溢れる吐息
滴る唾液
余すところ無く堪能する
もちろんお薬も一緒に流し込む
ほら、だんだんと気持ちよくなってきた
彼女の僕は俺だけではないようだが、1番は俺だ
彼女のこの顔は俺だけのものだ
誰にも渡さない
そのためならなんだってできる
最初は、薬に依存していれば良い
そのうちそれが『俺』に変わる
ゆっくりと堕としていけばいい
俺が彼女に堕ちたように
エリザベート
君も俺に堕ちたらいい
花弁を一枚ずつ剥がしていくような遊戯を今は楽しもう
しばらくは君に付き合うよ
君が俺に堕ちるまではね
逃がさないよ?
勇者は姫を望んだんだから