全員で聖国へ
聳え立つ大聖堂の裏手
到着早々、神官達の居住区の応接室で大司祭様からの挨拶と諸々の説明をうけてる
大司祭の爺さんは所謂、国王的な存在だから初めに挨拶するのは正しいんだろうけどさ
ブリリアント王国の王様よりは威厳あるし
そんな大司祭様のありがたいお言葉を聞いて、斉藤と小林は渋い顔をした
聖国に着いたら早速やらかすかな、と思ってたんだが大司祭様の話はナイスな忠告だった
巫女達は聖女候補として各国から預かっている大事な乙女
乱暴を働いて、乙女でなくなった場合、勇者様といえども罪を償わなければならない
しかも俺らはまだ正式には『勇者』ではない
因みに罰は軽くて去勢、重くて死罪
巫女側は被害者となるので、罪には問われないが合意なら除籍
うげげ
「お若い勇者様方には酷なことかもしれませぬが、決まりゆえお気をつけくだされ。勿論、嫁にもろーてくれるなら喜んで祝福を捧げますぞ。ふぉっふぉっふぉっ。」
相変わらずこの爺さんタチが悪い
俺がこの前来た時には何にも言わなかったぞ?
巫女はという表現を使ってるということは他は良いって安易に言ってるようなもんじゃねーか?
あわよくば感が半端ない
そりゃブリリアント王国より聖国に肩入れしてほしい気持ちも分からなくはないが…
俺は気づかないふりして話を流した
自分の身は自分で守ってくれ
俺は関係ない
…
とりあえず、このままアイリス様のところへ行って今日は挨拶して終わりだ
ぞろぞろと移動する
今回は男の人数が多いから、アイリス様は姫巫女達と居住区の手前にある会議室までご足労頂いてるそうだ
「聖女様かぁ楽しみです〜。」
「そうだな、お初にお目にかかる。光栄なことだ。」
先頭は王子と飯田
そのあと女子が続き、俺らと最後に斉藤と小林
「あんなこと言ってるけど、脅しだろ?ヒソヒソ」
「まぁ、合意ならアリってことじゃね?ヒソヒソ」
…
あ"〜
こいつらは馬鹿か?
そうだな、馬鹿だったよ
「おい、お前らマジで気をつけろよ?ここの女達はマジでやばいから。気を抜いてると肉食女子に搾り取られるぞ。」
最後尾でヒソヒソ話してた内容があまりにもだったのでついつい口出ししてしまった
「珍しっ、総一郎が他人の心配するなんて。」
俺だって口出しする気は全くなかったさ
後輩2人は面食らったようだった
男組はあんまししゃべらないからな
「いや、後輩のアレがちょん切られるとか聞くのもやだろ?!マジでお前も気をつけろよ。学校の女子なんて巫女達に比べたら可愛いもんだ。」
うん
男なら共感できる筈だ
想像だけで背筋がゾワっとする
「まぁ聖国は一夫一妻制で、離婚もできないらしいから彼女達も必死なんじゃない?」
「「え?!」」
サッと青くなる馬鹿2人
「…忠告はしたからな。」
「パイセンらどしたんすか?」
「なんでもない。聖女様の事を聞かれただけだ。」
「ふーん?」
「行くぞっ。」
「やぁ楽しみだね〜。」
「そっすね〜。」
「…マジかぁ。怖ぇ〜ヒソヒソ。」
「良い情報もらったな。ヒソヒソ。」
ちゃんとわかってれば良いんだが…
***
会議室の中には聖女様が中心に座って、その後ろに姫巫女達、部屋の側面には聖騎士達が並んで待ち構えていた
「聖女様、私はブリリアント王国第1王子、アレクサンダー。彼らがブリリアント王国の勇者。此度はこのような場を設けて頂き感謝致します。」
「はじめまして殿下、それと勇者の卵様達。今代の聖女を努めますアイリスです。長旅ご苦労様にございます。こ滞在中はどうぞごゆるりとお寛ぎくださいませ。」
「ありがたきお言葉、重ねて感謝致します。」
それぞれ自己紹介して、軽く喋って今日はこれで終わり
今後のことは明日話し合う予定
2回目の聖国訪問だけど疲れた
移動手段は陸路は馬車か騎獣しかないので、しかたのない事だがなかなかに辛い
そして聖女様との対話
アイリス様のことは苦手でもなんでもないし、どちらかというと好感を持ってる
しかしだ
こちらのことはまるっとお見通しなのが怖い
何を考えてるのかわかりづらいのもある
目は口ほどに物を言う
と言うが、あれは間違ってないな
「イネス様はヨウスケ様とユイ様のご質問に答えて差し上げて。ケイリー様とエミリー様はブリリアント王国の皆さんのご誘導を。プリシラ様は勇者様方をお部屋にご案内、ジュリア様は明日の準備を。サンマリア様は巫女達の差配をお願いいたします。」
「「?」」
ほらほらこういうとこだよ
大方イネス様が錬金術と陰陽師のスキルについて教えてくれるんだろう
見えていないのに視える
本当に、良い女だなぁ
「まぁ、光栄です。うふふ。」
?!
アイリス様はこちらを見てくすくす笑った
心まで読めるのか?
ハハハっ
笑うしかないな