動き出す
聖国から帰った俺たちは、2週間ほどの休息を挟んだ後、囁きの樹海に討伐へ向かい、1ヶ月を越す訓練を終えた
俺のレベルは17
陽介16、楪19、水瀬15、斉藤28、小林26、飯田25、朝比奈24
陽介には勝ったが、楪に負けてる
なんか悔しいな
水瀬のレベリングに付き合ってたからしょうがないんだが、後輩達のレベルがめっちゃ高かくなってて驚いた
だいぶ離された
どうやら斉藤のスキル『成長促進』の恩恵らしい
レベルが上がって動きが機敏になってる
増長してなきゃ良いんだが…
この世界のレベルは魔物を倒したり関連で上がる
自動的にパーティ4人で振り分けられるそうだ
トドメを刺した奴が1番多くもらえるらしい
ぶっちゃけパーティを組んでいたら付いて行くだけでレベルが上がる
ただ、レベルが上がっても基礎値が上昇するだけで、技術が向上するわけじゃない
剣術にしても同じレベルならスキルがある方が強いし、更には技術を身につけている方が強い
だから斉藤や小林のレベルが20を超えてても、純粋な剣の腕は騎士団の人たちの方が強い
正直な話まだ俺も負けないと思う
特に練習をサボる斉藤の攻撃は単調で拙い
力でごり押しする感じだ
小林は見た目重視なのか全体的に攻撃が軽いし、無駄な動きが多い
魔物相手に慣れてしまうと対人戦キツそうだな
しかし成長系のスキルは便利だよな〜
どこまで上があるかわからないが、高レベルになってくると上がりにくくなるだろうから
上限がどこまでなのかが気になるところだ
陽介は朝比奈に注目してたみたいだから俺も彼女を鑑定てた
今回の討伐で、スキルについてわかったことがあるらしく、重点的にレベリングしてたからな
朝比奈のジョブ、陰陽師はかなり珍しいみたいで参考にできるものがないんだと
だからできることを増やせるように、レベルを上げて基礎値の底上げをし、色々試していくという方針のようだ
今後の方針について王子から御達しがあるそうだが、なんだろうか?
嫌な予感がするな
戦争のために呼ばれたんだ
そろそろそんな話なのかもしれないと思うのはフラグか?
ブリリアント王国は最初の印象が悪かったが、今のところそこまで『最悪』じゃなかった
そのまま放り出されるわけでもない
飼い殺しにあってるわけでもない
俺たちの成長を待ってくれてるし、ちゃんと教育もしてくれてる
ライデン将軍をはじめとする騎士団の奴らも気さくな雰囲気で話しやすいし、親身になってくれる
逃げ出すほどではないかなって思いそのまま保留してた
さてさてどんな話なのやら
***
嫌な予感というのはだいたい当たるらしい
俺たちに憎しみのこもった目を向け、呪いの言葉を吐き続ける男がいる
王子と王女が連れてきたエルフ
奴隷というやつだ
この国には刑務所がない
犯罪者は奴隷になるらしい
王子曰く『敵国のスパイ』
人の形を真似た魔物
魔王の手先
人類の敵
本当にそうなのか?
鑑定もしてみたが、魅了や精神的異常はなかった
だから本当のことなのか、判断が難しい
ブリリアント王国の国土は昔はもう少し広く、豊かだったそうだ
囁きの樹海はその頃はまだ今の半分くらいで、そこまで強い魔物もおらず概ね平和だった
2百年ほど前、日照りが続き天変地異が頻繁におき世界が揺らいだ
魔王が起こったのだ
世界中の皆が協力し、戦った
その時も『勇者』の活躍により魔王は討伐され、再び世界に平和が齎された
しかし、残党は多く北の地には魔族が残っている
また、魔王の眷属である獣人や森人は各地に散り、人々の生活を脅かしている
囁きの樹海の奥にはエルフの残党の拠点がある
「先先代の国王の時代、我々は大規模な樹海攻略を、行った。と、されているが、本当のところは残党との小競り合いなのだ。前回、ベースキャンプを張った場所。あそこには本来小さな町があった。我々はそこを守ることが出来ず、樹海に飲まれてしまった。このことは一部の者しか知らぬ、国家機密だ。民に知れるとパニックになるやもしれぬのでな。」
「もう何十年も前のことですわ。生きておられる方はいらっしゃらないでしょう。しかし、樹海は年々広がっています。敵方の拠点がいくつあるかはわかりませんが、我らは民のために為せばなりませんわ。ご無理を承知とは思いますが何卒、ご協力を頂きたいのです。」
ここにきての急な対人戦
戦争なんて教科書でしか知らない
況してや平和ボケした日本人
「ころすの?」
重い空気の中、誰かが震える声で言った
飯田だろうか?
「少なからず犠牲は出るだろう。だが、我らは皆殺しに行くわけではない。あくまでも拠点を潰す。それが目的だ。一時的に捉えることはあっても無抵抗のものまで切る必要はない。」
「今すぐに、というわけではございませんの。これから対策を立て、準備を致します。皆さまお心積もりをお願いいたしますわ。」
誰も何も喋らなかった
重たい空気は次の日になってもそのままだった