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異世界に転職しました  作者: Aries
第1章
8/202

我が子をこの手に

 愚鈍な龍を裁きましょう


 稚拙な龍を律しましょう


 傲慢な龍を殺しましょう


 ちゃんとわかってる


 愚鈍なのは私


 稚拙なのも私


 傲慢で最低なのも私


 これはただの八つ当たり


 ミーティアを危ない目に合わせた私への罰


 恵まれた環境に溺れて、自惚れ、甘えていた自分への罰




 ***




 大勢の視線を集め喋り出す


「今日は急な呼び出しにもかかわらず集まってくれてありがとうのう。黒龍ノワール女王クィーンの弟にしてヴィオラの長、デボラだの!!集まってもらったのは、我輩の姉君、黒龍ノワール女王クィーンの忘れ形見が見つかったのだの!!プリンセスはまだ大変幼いので姉君に頼まれて我輩が引き取ることにしたんだの!」


 男の周囲には王や、大臣達が陣取り一段高いとこから見下ろしていた


 ここ、闘技場の360度ぎっちり龍族でうまった観客席の野次は次第に喝采へと移行して行く


 ヴィクシーとヴィオラが大きな台を運んできて、目隠しを、取り払うと…


「お披露目させて頂くのう!!我が娘!奇跡のブラン龍姫プリンセス!!!」


 辺りから音が消えたかと思うと次の瞬間に割れんばかりの大喝采


「姉君は素晴らしい遺産を我らに残された!!白龍姫の無限の魔力で我らは更なる力を手に入れる!!」


 少女等が白い魔水晶を掲げて飲み込んだ、するとどんどん髪の色が濃くなっていく


 莫大な魔力もが少女達の中で渦巻き、治ると、ヴィクシーの髪色は黒ずんだ紫に、ヴィオラには一房の黒髪が


「なんと言うことだ!…魔力が跳ね上がった?!」


「あの石1つで!!とてつもない力だ!!」


 感動する者、感謝する者、驚愕する者、嫉妬する者、憎悪する者、沢山の感情が渦巻いて登っていく


 そのほとんどが黒龍に敬意を払い、死を尊び、弔い、幼子の誕生を喜び、祝福するものだったのに…


 目先の欲に走り、溺れだす大衆


「我輩は至高の龍人族を更なる高みに引き上げる事を約束するのう!!!」


 民衆のボルテージは最高潮に達した




 ***





 真下に大勢が集まってるのが見える


 結界が張ってあるけど関係ない


 お姉様の威光をお借りして傲慢に振舞う私はデボラとなんら変わらない虎の威を借る狐


 自嘲の笑みが浮かぶ


 近くまで転移すると深紅の魔力は直ぐに感じれた


 彼の魔力は素直で、真っ直ぐで、綺麗なマナに溢れているのがわかる


 そな視線の先にミーティアはいた


 まるでペットのように首輪をつけられ、鎖で繋がれている


 しかもあれは…


 胸が張り裂けそう


 髪につけた空色の薔薇(シエルローズ)の香りが私に冷静さを取り戻させてくれる


 ミーティア


 遅くなってごめんね


 迎えに来たよ




 ***





 台座に鎮座したままぐったりして動かないミーティアをブレイスは心配そうに見ていた


 やはり連れてきたのは間違いだった


 あのままでは魔力が枯渇してしまう


 後悔と焦燥感が身を焦がす


 何か手立てはないか…


 無い知恵を巡らせていた


 観客の視線も一点に集中していたので、ほぼ全てのものが異変に気付いた


 寝ている白龍がその首を上げ、上を見上げたのだ


 釣られてみんな上を見上げる


 音が吸い寄せられるように段々と消えていく


 女神だ…女神がご降臨された


  我々を祝福しに、女神様がご降臨された!


 誰かが呟いた


 誰もがそう思った


 静かに降りてきた女神様の表情は固く、だかそれが一層神々しさを高めていた


「結界を…通り抜けただと?!そんな?!まさか!」


「まさか本物の?!」


 偉そうなおじさん達から驚きの声が上がる


「そんなわけあるか!そのものを取り押さえろ!侵入者だ!!」


『さぁ帰りましょう』


「無礼者!


「貴様何ヤツだのう!?それは軽々しく触れて良いものでわないの!!」


「おしじ様!私たちの白龍が!」


「大丈夫じゃヴィクシー。この魔道具を解けるはずがない。ティアここに座るんだの!どこにも行ってわならん!!」


「そう!コレは私たちのモノ!!ティア、じっとする!!」


 一瞬でブリザードが吹き付け、凍ったような冷たいマナの嵐が吹き荒れる


 視線を向けただけでその場に縫い付けられたように動かなくなる


『私達の?…モノ?』


「ヒィっ」


 誰の悲鳴なのかわからない


 ガチャガチャと歯がなり股間を濡らす少女


 息が出来ず青くなり震えだす少女


 這いずるように後ずさり逃げようとする男


 尻餅をつき、狼狽する男たち


 一思いに殺さないように気をつけなければ…


 己の愚行を省み、恥じろ


 まぁそれができればここまで増長してないか


 嘲りがうかぶ


 手を伸ばすとミーティアを拘束していた魔道具がドロリと溶けた


 ミーティアが光に包まれ奪われた魔力が戻っていく


「そんな?!まさか?!我輩の魔道具が!ティア!!ダメだの!!ぐギュぁーーー」


 覇気を込めて圧を強める


 風が渦を巻く


「あ…ああ"あ"」


 少女達から何がが抜けていく


 髪の色がどんどん薄くなっていく


「ま、まりょく、が!っごほっ」


 表情が段々険しくなるのが自分でもわかる


『お前の話なんて黒龍(かのじょ)から一言もなかった』


『お前は黒龍(かのじょ)墓を暴き龍玉を奪おうとした』


『そして私の娘を攫わせた』


『汚らわしい、罪人め』


『一族諸共消し飛べ』


 デボラ達の魔力を纏めて黒龍の涙の結晶から作ったオーブに吸収させる


 汚らわしいので吸収したくないけど、お姉様の世界に撒き散らしたくない


 周りの者の魔力も抜けていく


『傲慢な種族よ。今日が、お前達の最後の日だ。自分たちの傲慢さを呪いながら死ね』


 1つ1つ圧力を強めて言ったら男はベシャリと潰れて痙攣してる


 まだ生きてるのか


 しぶとい奴


 まぁ覇気だし、神気じゃないし


 どこの世界でも害虫はしぶといものですね


 ミーティアを抱きかかえる


 あぁ、やっと、やっとこの手に戻ってきた


 一雫溢れた涙をミーティアがぺろりと舐めた


 慰めてくれるの?


 ありがとう


「ま、待ってくれ!は、話を聞いて頂きたい!コレはそのものの独断だ!この力を解いてくれ!」


『トカゲよ。私は発言を許可した覚えは無い。』


「ト?トカゲ?!不敬な!!おい!アイツを撃ち落としーーピギャっ」


 奇妙な声を上げて倒れる


 武器を持ってこちらに来てた者たちも圧をかけて地に伏せさせる


『龍人族がいなくなっても世界は困らない』


「そんな!」


『必要になったらまた作り直せば良いだけ』


「まさか?!そんなことが許されるものか!」


「やめろ!やめてくれ!!」


 うるさい


 きゅい


 とん、とん、と服の上からつつく


 彼の鱗


 …ミーティア


 しょうがない


「なにとぞ!なにとぞご慈悲を!!」


「早くなんとかするのだ!魔力が枯渇するぞ!」


 王と取り巻きは土下座してるけど、この場を乗り切れれば良いと思ってるのかな?


 好き勝手喚いてる


 めんどくさい


『魔力が全て抜けるだけで、命は助かる。一生地べたを這いずり回って、お前達が蔑んだ下級種のように生きたらいい。それが嫌なら名誉ある死を選べば良い。』


「そっそんな?!我等に下等種のように生きろと仰せか?!」


「今回のことは紫がした事!紫が責任を取ります!!」


「我々には関係なかろう!」


『確かに、1人の愚かなる者の責任を、全てに取らせるのは行き過ぎかもしれない。』


「でしたら!」


部下()の責任は上司(おや)がとるべき。ただそれだけのこと。』


「そんなっ?!」


「我が身をお望みならば、美しきあなた様に捧げます。どうか、それで収めてはくれないか?」


 藍色のおじさんが上から下まで舐めるようにこちらをを見ながら提案してきた


 ん?


 何言ってるのこのおじさん


 キモいな…


 ぐったりしていた者たちの力がさらに抜けていく


 だいぶ魔力も抜けたみたい


『罪なき者を虐げる傍若無人、理不尽な行い、お前達の行動は目に余る。龍人族が謙虚さを、己の愚かさを学ぶ事を望む。あれらは、まぁ魔力ももうないので何もできないだろうが、後はお前達で裁きを下しなさい。』


 にっこり笑顔で言ったら、重役の皆さんの顔色が真っ青になった


 完全に許したわけじゃ無いけどもう帰りたいし、この辺で良いかな


 正直、もうめんどくさくなってきた


 さてと、最後に懐から深紅の鱗を取り出す


「…それは?」


 藍色のおじさんまだいたのか


 関係ないのでとりあえず無視


 キモいからあっち行ってて欲しいのに


 私は言霊を込めて真紅の鱗にキスをし風にそっと乗せる


 投げキッスです


 深紅の鱗はひらひらと蝶々のように舞いながら彼の腕に留まり、淡い光を放ち消えた


 腕の鱗だったみたいね


「あの、女神よ。今のはいったい…彼はなんなのです?」


『お前に関係ない。』


 ふふふっ


 人差し指でしーってしたら、ミーティアもきゅいーってご機嫌だった


 帰ろっか!


 私たちのお家へ


「あっ!女神様!せめてお名前ーーーー」


 私はミーティアを抱っこしたまま空へ飛び立つ


 我が子を抱くこの幸せを噛み締め


 空色の薔薇(シエルローズ)の花吹雪と共に

お付き合い頂きありがとうございました。もうちょっとざまぁな感じにしたかったんですけど、なかなか難しいですね!

精進します。

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