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異世界に転職しました  作者: Aries
第5章
79/202

樹海の壁

今日からまた勇者サイドです

 





 今回の討伐は囁きの樹海の中層に入り、戻るというアタックを7日かけて行い、武器のメンテナンスも兼ねて3日休む、という10日がかりのスパンとなる


 それを3回繰り返す


 だいたい1ヶ月ほどの滞在のため囁きの樹海入り口には大規模なベースキャンプが張られた


 樹海からは強力な魔物が溢れて近隣の住民、田畑や家畜に被害が及んでいる


 もちろん冒険者による討伐も行われているが、王国直轄地であるため、国軍が動くのだ


 毎年、春と秋に間引いていなければもっと多くの被害が出ていただろう


 過去にはAランクの魔物の討伐に失敗し、街が半壊したという記録もある


 数年前にBランクの冒険者が樹海の『囁き』に惑わされ消えていってからは、街に不安な空気が続いていたのだ


 住民たちも今回の大規模な討伐に、ついに現国王が樹海攻略に本腰を入れていると浮き足立っていた


 そんな囁きの樹海攻略はブリリアント王国の悲願なのだが、本当の意味での()()を知る者は少ない




 ***




「わぁー!かわいい〜!」


「面白い柄の鳥だな。魔物か?」


「先輩!捕まえてください!お城に連れて帰りたいです〜!」


 飯田は珍しい色の小鳥にテンションが上がり、先ほどまで疲れたと言って、しおらしくしていたのが嘘のように飛び跳ねている


『小動物と戯れる美少女な私』を演出してるのだ


 1stアタックは、それぞれの武器の具合を確かめながら野営や魔物の解体、森のぬけかた、毒のある植物などを学び、実践、戻って報告


 という流れだった


 小林と朝比奈は現場責任者のアレクサンダー王子に報告中


 本当なら斉藤と飯田も報告をしないといけないのだが、面倒だからと2人に押し付けて、一足早く休んでいた


 報告を終えた小林、朝比奈とともにテントから出てきたアレクサンダー王子は騒ぎの主を見て呆れた顔をした


「騒がしいぞ。何事だ?」


「あっ王子。この子っす。」


「へー。これがユイピーの?」


「なるほど、見た目はほぼ普通の鳥だな。」


 小鳥はひらりと人々の間を抜けて、朝比奈のすっと出した指に留まった小鳥をまじまじと見つめる男2人


「あっアレクサンダー様ぁただいまです。今回もアイリとっても頑張立たんですぅ!」


「そうか。報告ご苦労だったな。」


 アレクサンダー王子にとって飯田の扱いは楽なものだった


 微笑み1つで事足りる


「えへへ。その小鳥さんはアイリンが見つけたんです〜。可愛いでしょ〜?」


「見つけたもなにも元々あたしのだし〜。」


「ユイピー、意地悪してやるなよ!アイリンが欲しかってるんだからさ!小鳥ぐらい譲ってやれよ。」


 にじり寄る斉藤に朝比奈はきょとんとした


「斉藤パイセン、小鳥じゃなくてあたしの式神っすよ〜?そーかーん。」


 朝比奈の掌の上の五芒星の中に小鳥が沈みゆく


「えー!なにそれ〜!ユイピーだけずる〜い!アイリも欲しい〜!!」


「なんだよユイピー、秘密にしてたのか?!そんなの使えるなら早く言えよ!」


「そーだよ〜ユイピー!ずるいよ!アイリも小鳥さん欲しいのに!ぷんぷんだぞ!」


「今、ちょうど報告してたとこっす。レベルが上がって出せるようになったてきな〜?」


 もちろん嘘だ


 朝比奈はズルいズルいと騒ぎ立てる飯田が面倒だから適当に誤魔化すことにしたのだ


 だいぶ前から使えていたが、聞かれなかったから答えなかったまでだ


 王子も2人を気にしない事にして話を進めた


「それで、式神だったか?戦闘時はどうしてる?」


「うーん。式神を操作しながらの戦闘はまだムズいっす。」


「ユイ、式神で辺りを見たり、魔物の数を調べたりなどの斥候の役割はできるのか?」


「長い時間はムリっす。魔力たりないっすね。小鳥は壁超えたら直ぐ消えちゃうっす。」


「壁?」


「壁なんてあったっけ?」


「小林パイセン、自分で直接見たわけじゃなくてってか見えなくて…。うーん、なんつーか、中層の奥の方に透明な結界みたいなのがあって〜。その更に奥はまだなんかあるっぽいけど、分かんなかったっすね。」


 ブリリアント王国の上層部を震撼させる爆弾が1人の女子高生から落とされた瞬間だった


 アレクサンダーは直ぐに周りにいた者に箝口令を敷いた


 それほど重要な事だった


 囁きの樹海攻略に繋がる糸口を見つけたのだ


 それからのアレクサンダー王子の行動は実に素早かった


 会議を行い今後の方針を決める


 朝比奈には可及的速やかにレベルを上げさせることが決定された


 式神の使い方をマスターしてもらわねばならない


 珍しいジョブなので期待はできないが、陰陽師、式神に詳しく、朝比奈に指導ができる者を探す事も検討された


 その者のスキルが『勇者』と同じとは限らないが、朝比奈を他国(そと)に出すよりはマシだ


 今回も王子が同行していたので、話はスムーズに進み、この討伐時は情報収集とし次回の討伐で行動を起こすかどうかを判断する、という事にまとまった


 ブリリアント王国は囁きの樹海攻略に向けて大きく一歩前進することとなる


 小さな歯車が回り出した






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