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異世界に転職しました  作者: Aries
第1章
7/202

龍人族

 




 ブレイスは物思いに耽っていた


 彼は竹を割った様な性格で物事を難しく考えるのが苦手だった


 だけど今回のことは、自分の流儀に反するのではないかとモヤモヤしていた


 ブレイス達が里に着いて暫くして、デボラ達も帰ってきた


 次の日、白龍様にお会いしに行ったら、疲れて寝ているとのことだった


 やはり幼い白龍様は母親がわりになる者がいないと寂しいんだ


 あの人はアレに気づいただろうか?


 アレがあれば俺の魔力を感じられる


 ただ、人間にそこまでの魔力があるかが分からないが、黒龍様に選ばれた人間だったらもしかしたらと思い、ベッドに仕込んできた


 本当にあの人は黒龍様を騙したのだろうか?


 ダヴィークはああ言ったが黒龍様は聡明なお方、人間ごときに騙されるわけがない!


 そもそも愛情なく育てていたらあんなに白龍様が懐かないだろう


 連れて行くにしても別れぐらいさせてやっても良かったのではないか


 デボラ様は喜んで白龍様を差し出したと言ってたけど、それも怪しい


 …聖母の様な眼差しだった


 あんなに愛情深そうな人が子供を簡単に差し出すだろうか?


 信じられないな


 今頃泣いてないだろうか


 心配だ


 もし、番うならあんな感じの優しい眼差しの女がいいなぁ〜


 龍人族の女性は気が強い者が多い


 力こそ全ての龍人族の中で、生き残る強かさも持ち合わせていないと上にはのし上がれないので、仕方のないことなのだが、外の世界の、多種族の女性に接したことがないブレイスには、か弱く、直ぐに摘み採れてしまう花のようなセレニティはとても新鮮で、穏やかな表情の彼女が鮮明に焼きついたのである


「モヤモヤしててもはじまらん!ちょっと走ってくるか!!」


 彼が、自分の気持ちに気づくのはまだまだ先の話のようだ




 ***




 ミーティアは首に隷属の魔法具をつけられて拘束用のオリに入れられていた


 このオリは対象の魔力を徐々に吸い取り、中央の魔石に貯めて魔晶石を作る魔道具で、対象者の魔力が強いほど質の良い魔晶石ができる


「くくく。まさかブランがここまでとは笑いがとまらぬの。くゎはは。」


「流石でございますわね!もう魔晶石が出来上がりそうですわ!」


「おしじ様。ヴィエラ頑張った。ご褒美に1つ欲しい」


「しょうがないのう。1つづつじゃぞ?それと、明日は皆にお披露目をするのであまり騒ぐでないぞ?疲れ果てておったらごまかしきれんからの〜。それと、ブレイスが来ても会わせてはならん。彼奴は頭が硬いのでの。我輩はインディゴのやつに報告に行ってくる」


「「はーい」」


「おしじ様、心配しすぎ」


「この子の鱗で髪飾りを作ったらどんなに美しいでしょう?きっと私に似合う素晴らしい物になりますわ〜」


「ダメ、まだ小さい。もっと大きくなって取らないと枚数が足りない。花の形にならない。ヴィクシーが鱗なら、ヴィエラは爪をもらう」


「あら、それも素敵ね!お揃いの髪飾りと首飾りができそうだわ」


「うん。楽しみ。早く大きくなってね。」


「そうだわ!明日のお洋服を選びましょうよ!明日はお披露目会ですもの。バッチリ決めたいわ!」


「ドレスはバッチリ。おしじ様に新しいものを用意してもらってる。見に行く?」


「もちろんですわ!アクセサリーを選びましょう!さぁヴィエラ!明日は私達が主役ですわー!」


「もちろん。ヴィクシー!私たちが1番!」


 2人の頭の中は白い龍のことでいっぱいだった、どの素材で何を作るか、どういう物が自分たちに似合うか、それがいかに自分たちに相応しいか、そんな話なら永遠にできる2人にとって楽しい時間だった


 2人にとってはね




 ***




 デボラは有頂天だった


 彼にとって人生最良の日とも言える日だった


「ついに我輩の時代だの!!紫が第3位に上がるやもしれん、いや、最早第1位と言っても過言ではないの!!!くくくっ」


「それにしてもあのインディゴの顔!いつも偉そうにしよって、いい気味じゃの!清々する!あんな奴が龍人族の王などと甚だ遺憾だの!」


 龍人族の王は各色のトップから決められており、今の王は藍の族長が務めている

 

 族長は人間の国で言う領主のような者で、色によるヒエラルキーが存在している


 龍と同じく白、黒、藍色、紫、赤・青、緑、黄、の順で色が濃い方がより良いとされている


 龍人族は勿論、龍ではないので色の違いだけで魔力の量は測れないが、そう信じている者が多い


 彼らは、はるか昔に古龍の眷属になった人間が、龍の魔力とその魔力に集まるマナなどの影響を受けて変化したもので、元を正せば人族


 名残として、角が生えていたり、翼を出せたり、咆哮が放てたり、龍の力の一部は使える


 その力が色濃く出ているものがトップに君臨している


 現在黒はおらず、藍の一族が王となっている


 デボラはこの藍の王が大嫌いで、度々衝突し、覇権を争っている


 デボラは帰宅後直ぐに伝令を出した


 翌日には藍の王、族長や大臣らを招集し緊急会議を開催


 デボラはミーティアをさらって来たにもかかわらず、黒龍から授かった、自分が頼まれたので自分が管理し、育てると主張し、他の族長、大臣達を黙らせ自分の功績を称えるため、白龍のお披露目会を催すことを報告した


 それによって明日、全ての龍族が集まることとなる


「それにしてもあの忌々しい下等種め、黒龍の龍玉を、どこへやったのか。やっと黒龍の気配が消え龍玉に変化したのかと思ったのだがの〜。藍の奴が疑っておったようだがまあ良い。時間はたっぷりあるしの。」


 龍玉は龍の体内にある魂の器で、その龍が生きた証でもある


 龍が死を迎えると、その身体は使役していた者達によって食われる


 もちろんその場合、龍より長く生きる必要がある


 使役時の契約の対価は自分に、子孫に、魔力の譲渡だったり、身体の一部、定期的な生態エネルギーの譲渡など、様々


 聖獣や精霊なと寿命に限りがない者達は龍を喰らいより強い力を得る方を望む者が多い


 しかし、龍玉は対価にはならない


 龍を慮って、というのもあるが、そもそも対価にするには余りにも釣り合わなすぎるからだ


 龍玉の中にはその龍の魔力と記憶が残されており、悠久の時を生きた龍の知識の黙示録でもある


 手に入れれば古龍の魔力、知識が手に入ると思ってるが果たしてデボラごときに使いこなせるかは謎である


 デボラは黒龍が気まぐれにとった眷属だ


 しつこくて面倒だったのもあるが、身の回りの世話をさせていて対価として少しの知識と僅かな力を与えていた


 黒龍が神殿に引きこもってからは、完全に虎の威を借る狐が増長し、ついには破門、縁を切られているが周囲に隠して、黒龍が神殿に籠もっているのをいいことに、今まで通り好き勝手にやっていた


 デボラにとって龍人族の王である藍だけが自分より上位であり、目の上のたん瘤だったけれど、白龍を手に入れた今、いずれ自分は王となる。


 実質の最高権力者である


 白龍のお陰で一族も更なる力を手に入れられる


 そしてその地位は揺るぎないものになるだろう


 自分に従えば、白龍の力の恩恵に触れられるのだから


「笑いがとまらんの。くふふ。くっくっく。ふふっ。」


 絵に描いた餅


 取らぬ狸の皮算用


 砂上の楼閣


 夢物語


 デボラは明日のために嬉々として準備を始め、部下達に指示を飛ばす


「これが我輩の栄光への第一歩だの!」



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