三兄弟
「何するんだよばーちゃん!!」
「五月蝿いよ!大きな声を出すと赤ん坊が起きちまうだろーが!」
「赤ん坊ってなんだよ!」
「だって知らんやつが庭に入ってきてるんだぞ?」
「アタシの客に対して失礼だよ!セレニティ、五月蝿くて済まないね。ちょっとお返しするよ。」
「はい。」
作業の間、ミーティアはチェルシーさんに抱っこして遊んでもらってたんだ
はいお帰り〜
ミーティアも楽しかったようです
ご機嫌です
「ばあちゃんに客?」
「ってかなんで俺だけ2発なんだ?!」
「せっかく綺麗に整えた庭に何してくれるんだい!お前たち!今日は朝から来る約束だったのに今何時だと思ってるんだい?!」
「いや、俺らだって予定があったんだよ?」
「そうそう。ちゃんと土産にホーンラビットもあるぜ?」
ちょっと離れとこう
この後、彼は踏み潰したカモミールを雑草と言いもう1発拳骨をお見舞いされていた
チェルシーさん激おこ
彼らがアムルさんの弟さん達かな?
アムルさんはチェルシーさんの説教は長いからほっといて良いって、さっさと角が生えたウサギを持ってどこかに行ってしまった
ホーンラビットはその名の通り角が生えたウサギ
中型犬ほどのサイズ
割と好戦的で、出会うと健脚を使い突進し、ツノで攻撃してくる
素早いが見切れないほどではなく、低級冒険者でも仕留める事ができるため、安価で流通している
そのため庶民にとっては、割とポピュラーな食材と言える
お肉の味はイマイチ
不味いわけじゃないけど、特段美味しいわけでもない
独特の臭みが原因だろう
臭みかぁ
羊肉みたいな感じかな?
ローズマリーやセージを揉み込んでから焼いたらどうかな?
中東はミントを使うんだったと思う
やってみようかな?
「アムルさん、そのお肉もしかしたら美味しく食べれるかもしれないんですけど、ちょっと試して見ても良いですか?」
「お?まじか!ウサギがうまく食えるんだったら店も助かる。ちょっと待ってな、これはもう焼いちまったからあいつらに食わせよう。」
ハーブを拝借してキッチンに行ったら、アムルさんはもう既に解体を終えて焼き始めていた
速いな
焼いている臭いもあまり美味しそうじゃない
その間にハーブの準備をしよう
「手伝いますね。」
「ありがとうございます。ミントとローズマリー、セージを使いましょう。レナさんはミントを刻んでもらえますか?」
「了解です。」
私はローズマリーを棒で軽く叩き、セージと一緒に鍋に入れる
ニンニクはスライスして、オリーブオイルをたっぷり入れ、少し温める
温めると臭いが良く出る気がするので
「こうすると油に、ハーブとニンニクの香りが移るんですよ。お肉の臭み消しですね。」
「なるほど、これなら簡単にできそうですね!ミントはどうするんですか?」
「肉、捌けたぞ!」
「ありがとうございます!では、ミントに白ワインとお塩を少し混ぜてお肉を漬け込みます。あ、外側の脂身は外しましょう。量が減っちゃいますが、多分そこが臭いの原因だと思いますので。」
「そうなのか?よしわかった。」
アムルさんは流石の包丁捌きで、外側の脂肪を取り除いて、食べやすい大きさに切っていく
それをレナさんが丁寧にミントに漬け込んでいく
阿吽の呼吸ですね
「30分ほど置いて様子を見ましょう。今回はニンニクを油の方に入れましたが、漬け込む方に入れても良いかもしれません。」
「なぜ此方は白ワインを使ったんですか?」
「赤ワインを使うと、お肉が色を吸ってしまい赤くなります。見た目の問題もあるんですが、白ワインの方がブドウの渋みが少ないし、今回はシンプルな焼きなので、その方がウサギ肉には合う気がします。」
「なるほどなぁ。お前はチビのくせに物知りだな!」
「ちょっとアムル!ごめんなさいセレニティさん。」
「ふふふ。気にしてません。ただの食いしん坊なんですよ。ふふふ。」
「あ、それは私たちも同じです。ふふっ。」
「そりゃ違いねー!ハハハッ。」
「待ってる間、私はもう少し庭で手伝いをしてきますね。」
「レナさん、私もお手伝いします。」
「ありがとな!俺は残りの肉を片付けから呼びに行くよ。」
「「はい!」」
***
「なんだこれ!めっちゃ美味い!」
「兄貴ずるいぞ!」
「時間通りに来ないお前らが悪い。」
どうやら私たちと入れ違いに、弟さん達はご飯を食べてたみたい
あれ?
赤ワイン煮はもう無くなってたと思ったんだけど
アムルさんに聞いたら、鍋に少しだけ残ってたのが勿体無かったので、スープで伸ばして具を足したそうだ
へー!
流石!
「あ、あんたは!さっきはいきなり怒鳴って済まなかったな。」
「勘違いして悪かった。」
「いえ、こちらこそご挨拶が遅れましてすみません。セレニティと申します。よろしくお願いしますね。」
ふふふっ
「ぐっ!!あんた、いや、セレニティさん!自分はイフです。冒険者やってます!何か困ったことがあればいつでも自分を頼ってください!」
「セレニティちゃん!俺はウーゴ!よろしくな!」
イフさんは赤毛をツーブロックにしてる細マッチョな青年
片方の耳にイヤカフをしてるオシャレさん
ウーゴくんは長めの赤毛を後ろで結んでる
ウエーブした髪がチャラそうに見えるが、ソバカスが残る顔はどこかあどけない
「はい。お2人ともよろしくお願いします。」
ふふっ
三兄弟そっくり!
「セレニティさんって天然よね〜。」
「まぁ、あいつらもあんまし免疫ねぇからなぁー。嬢ちゃんのあの顔はしょうがねぇだろーよ。」
「ちょっとアムル?」
「そう怒るなよ。単純に好みの問題だろ?俺はお前の方が好みだそ?ハハハッ!」
「も、もうっ!調子いいんだから〜!」