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異世界に転職しました  作者: Aries
第3章
57/202

ウサギちゃん

 





「なんなんですか?!いきなり?!」


(ちょっと漏らしちゃったかも〜うぅっ)


「あまりにもしつこかったからな。これ、収納してくれ。」


 そう言って叶はヴァルトディアの生首を水瀬に渡した


 (うげげっ!鹿の生首!!)


「先輩、私の収納には時間停止機能は無いですよ?」


「え?そうなのか?なんだマジか…流石にそこまでのチートはないんだな。」


「はい。試してみたところ、冷蔵庫みたいな感じでした。」


「なるほどな。じゃあ角だけでいいか。」


 叶は角を頭部から外し、ヴァルトディアの胴体は木に吊るして解体を始めた


「先輩解体できるんですねー。」


「ん?新堂の家で鹿狩りした事あってな、その時あいつの親父さんに教えてもらったんだ。」


「え?家で、鹿狩り?えっ?」


「ちょっとグロイけど見てるか?周囲の警戒を頼みたいんだけど…。」


「散策してきまーす。」


 叶はテキパキと準備を始める


 吊るした下に内臓を埋める穴を掘り、腹を割いて内臓を出し、魔石を取り出す


 水魔法で水球を出して洗うと、ゴルフボールくらいの赤黒い石が出てきた


「へーこれが魔石かぁ。意外と綺麗だな。」


(あの場で、正義の姫巫女にいちゃもんつけられたおかげで、良い経験ができたな。)


 ちょっと上機嫌な叶は、魔石をポケットにしまうと、手早く次の作業に取り掛かった




 水瀬は周囲を警戒しながら歩いた


 気配遮断のスキルを周囲にかけたが、臭いは消せない


 血の匂いにつられて魔物が来ないか、警戒しながら散策する


 ガサっ!


 急に茂みが揺れ、ビクつく


 魔力感知は絶やさず行なっているので、魔力の反応があるのはわかるが、魔物の反応ではない気がした


(お…おばけ?)


 気配感知と違って正確には分からないが、魔物も人間も魔力を帯びているから、なんとなくだが存在を確認出来るので、訓練のためにもいつも使っているのだ


 (綿毛?)


 茂みを除くと、赤い色のまだらなモコモコした物体を見つけた


 慎重に近づいていくとウサギのような生き物だった


 よく見ると、所々赤く染まっていて怪我をしているようだ


「わっ!血が出てる!」


 水瀬は下級の回復魔法、ヒーリングをかけて、ローブで優しく包み叶の元へと戻った





 ***





「先輩!叶先輩〜!!」


「どうした?騒がしいな。まだ終わってないぞ?」


「これ!この子怪我してるんです!ちょっと診てくれませんか?」


 水瀬は慌てて走ってきて、ローブに包まれたモコモコの物体を押し付けてきた


「なんだ、ウサギか?」


 鑑定



 ☆☆☆☆☆


 キュアラビット*状態→麻痺


 ランクS


 見たものに幸福と癒しを与えるウサギ

 その体毛には多くの魔力を含んでおり、瞳と尻尾から幸運を齎す幸せのお守りが作れる

 聖国により乱獲され、絶滅が危惧されている


 ☆☆☆☆☆



 まじか〜


 ヴァルトディア以上の希少種きた〜


「すっごいですね。ってゆーか絶滅危惧種…。目玉からお守りとか怖すぎです。」


「とりあえず、麻痺してるから、先にそれを治してからだな。」


 俺だったら殺して幸せのお守りとやらを作るな


 瀕死であるなら在悪感も少ない


 空気を読んでそんな事は言わないが…


 状態異常回復の魔法、キュアをかけている水瀬を見ながら、複雑な気分だった


「さて、そいつどうするかな…。」


 とりあえずで、途中だったヴァルトディアの毛皮を全て剥いでしまい、解体の続きを終わらせた


「どうするって、置いて帰るんですか?」


「いや、持って帰れんだろ流石に。聖国が狩まくってんだぞ?見つかったら殺されるだろう。」


「ここに置いてても死んじゃいますよ!」


「うーん。お前、召喚術師じゃん?そいつ従魔とかできないの?」


 気配探知に人がちらほら引っかかって来たからそろそろ時間がヤバイな


「新堂先輩に聞いたところによると、お互いの意思の確認が必要みたいで…でも、とりあえずやってみます!」


 水瀬がウサギを抱きしめながら、ウサギの額に掌を合わせてブツブツ言っている様子を黙って見ていた


「お願い!」


 ダメか…


 俺はそう思い、立ち上がろうとした時、ウサギが淡い光を放って水瀬の中に沈んでいった


「あれ?ウサギちゃんは?どこ?」


「とりあえず、時間がない。あとで説明するから、これ収納しといてくれ。いくぞ。」


 毛皮と、肉を水瀬に収納してもらい、辺りの後始末を終える


 血の匂いをたどってるのか?


 どんどん近づいて来ているな


 とりあえず間に合って良かった


「あっ!待ってください。お肉は半分だけで良いんですか?」


「肉は美味いらしいから今日食べようと思う。」


「帰りはどうやっやっ、イヤ〜〜っ!!」


(腰が抜けて先輩にしがみついたのは、しょうがないよね…十和ちゃんごめん。)




 ***




 私達が帰ってきてからも正義の姫巫女からの追求は激しかったが、叶先輩は


『捨ててきた』


 の、一言だけだった


 私が証人という事らしいので『川に捨ててました。』と言って話を合わせた


 探しに向かった正義の姫巫女達を放ったらかして、先輩は鹿肉を焼きだした


 8人のパーティで行動していたからと言って、みんなで分けて食べた


 8人で食べても十分な量があり、北の教主様達にも分けてあげてた


 叶先輩のそういうところ、とても優しいなって思う


 ヴァルトディアのお肉は柔らかくて、ジューシーで、臭みとか全然なくて、すっごく美味しかった!


 赤身なのに肉汁じゅわわ〜で、それでいてクドイくなくて、幾らでも食べれそう!


 収納してる残りをどうするのか聞いたら、干し肉にするって言ってたけど、私の分もあるよね?


 例のウサギちゃんは、先輩曰く、私の中に沈んでいったって


 念のため、ステータスを見てもらったら


 従魔*キュアラビット(仮)


 ってなってるそうです


 たぶん、だけど


 私の中で休んでるんだと思う


 体力が回復したら、その後契約するか決めるんだと思う


 なんとなくわかる


 精霊や精獣と契約する時は、相手に認めてもらわないといけない


 人間側からの一方的なものは力の暴走や不発を招く


 できれば、仲良くなりたいな


 でも、契約してくれなくても、元気になってくれれば良いな







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