祈りの祠へ
朝起きると身支度を整えて朝のミサ
これは全員でじゃなく部署ごとに集まる
俺たちは神官のローマンさんと一緒だ
ミサと言っても朝のホームルームみたいなもので、今日の業務連絡と女神様に祈りを捧げ、今日も頑張りましょう!って感じでおわる
それでその後、朝食
朝食はギッシリパンとスープと日によって違う一皿
ベーコンや卵、フルーツの時もある
俺的に朝はガッツリ食べたいので全然足りないが、水瀬は小食でスープだけで良いらしく、余りを貰っていつも食べてる
最初のうちは食べきれなくてこっそり収納してたんだと
朝食を食べた後は聖魔法の練習とこの世界、聖国、の歴史の勉強
ぶっちゃけ歴史にはあまり興味がないが、イネス様の話はわかりやすくて、面白かった
聖魔法も色々あって
癒すだけでなく、精神世界に直接攻撃をする魔法や、武器に付与して魔物に直接、物理的に攻撃する方法も試した
そして昼だが、巫女たちは昼を食べない
1日2食
朝と夜以外は、14時くらいに軽くお茶をするくらいらしい
耐えられずローマンさんに言ったら、聖騎士達と同じ様に昼を準備してくれた
流石に身体が資本の聖騎士達は炭水化物やタンパク質を摂取し身体を作っているようだ
しかも交代で昼寝の時間まである
12時〜15時くらいまで休み時間
日本じゃ考えられないな
それで起きたら身体を動かして、沐浴後に夕食
最近の俺らの生活はこんな感じ
巫女や聖騎士達も午前中は仕事をし、午後から魔法や武器を使った訓練をするそうだ
大変健康的です
俺はどちらかというと和食が好きだけど、こんなに長いことパンとスープで生活すると、ジャンキーなものが食べたくなるな
唐揚げとかラーメンとか
はぁ
奇数の月に狩を行うらしいので俺たちも参加する事になっている
討伐演習だ
魔物の肉は食べたことが無いので少し楽しみだ
この世界も1年12ヶ月で四季がある
何でも昔の勇者がもたらした暦らしい
違う所は1月ヶ月30日に統一されてる所くらいか
それによると俺たちがこの世界に来たのは4月
今は7月
だいぶ暑くなり、動きにくくはあるが、この時期に討伐を行わないと、魔物が溢れてしまうそうだ
討伐を指揮するのは北の教主フォース・ウィルソン
足運びや体捌きが油断ならない、達人級の武人だったが、喋るととても残念な人だった
聖女ヲタク
うん、あまり関わり合いたく無いな
北の教主はユグドラシルと呼ばれる女神の領域の、南の祈りの祠を拠点とし、そこから出てくる魔物が市街地へ入り込まないように管理している
世界樹ねぇー
大層な名前だな
奥は深い森になっていて、この祈りの祠から進まないと、迷路のような森を彷徨い、祈りの祠に連れ戻されるらしい
しかも祈りの祠にから入るのも条件があり、聖国の許可を取るか、聖騎士か冒険者で言えばCランクから
祠には泉があるだけで、特別なものはなかった
この泉で手を洗い、口を濯ぎ、ゲートの前でお辞儀をして入る
神社か?!っと突っ込みたくなったがみんな真面目にやってたのでやめた
泉の水は冷たくてとても美味しかった
通常は東と西と南の3手に分かれてそれぞれの祈りの祠から入り、討伐を開始する
正義の姫巫女エミリーは俺たちと同じ南の祈りの祠から
ケイシーは西へ、プリシラは東へ向かった
北の教主は南の祈りの祠の出入り口近くに拠点を構え、指揮をとりながら、俺たちのレベリングに付き合ってくれるそうだ
基本的に俺たちは神官のローマンさん、聖騎士のグレコさん含む合計8人のパーティで動くそうだ
俺は練習で地道に上げても良いんだが、水瀬は早くレベルを上げた方が良いだろう
体力的にキツいだろうし
さて、スキルとやらを試してみますかね
***
南の祈りの祠からははどんどん魔物の素材が運び出されていた
Dランクのフォレストボアやモスディア、Cランクのフォレストグリズリー、モスサーペントなどなど
叶と水瀬が討伐したものだけで20体以上ある
叶が弱らせ、水瀬がトドメを刺す、っというスパルタ方式のブートキャンプでドンドン水瀬にCランクの魔物を回したので、効率よくレベルを上げれた
そして叶はヴァルトディアというとても希少な魔物を仕留めていた
ランクはCなのだが、その希少性はSランクと言っても過言では無い
角の部分を合わせると2メートル近くなる大きな鹿型の魔物で、上品な灰緑色の毛皮は敷物や服飾にも用いられる
その立派な角は装飾品は勿論、霊薬や錬金の素材としても優れており大変人気なのだ
角の形が良い物はそのまま剥製にされ、首が飾られる事が多く、肉は言うまでもなく大変美味である
ただ、滅多に姿を見ることが無い魔物で、逃げ足がとても早いので、捕まえるのが大変困難なのだ
この所有権を巡って言い争いが起きている
討伐した魔物は討伐者の物、っと言うのか基本的なルールだが、姫巫女達の討伐では討伐した魔物は所属のの姫巫女の成果となる
「それはあたし達がいただく。こっちに寄こして。」
「断る。これは俺が討伐した物です。アイリス様からも仕留めた魔物については好きにして良いと、許可を頂いていてますので、御遠慮願います。」
「今回の南の代表はあたしなんだから、南での成果は全てあたしの物よ。」
「俺は貴女とは別行動だったでしょう。人の成果を横取りするつもりですか?」
叶は教会にお世話になってるし、半分くらいなら渡しても良いかなと思っていたのだが、エミリーの余りの傲慢さに頭にきていた
ヴァルトディアの角は錬金術の媒体として素晴らしい効果ぎ期待できる為、新堂に持って帰りたかったのだ
「あたしが欲しいと言ったんだから渡すべきでしょう?あたしは正義の姫巫女なのよ?あたしがいつも正しいのよ!」
(バカなのか?)
深々とため息をついた叶はヴァルトディアを抱え、水瀬の腰に手を回した
「悪い、ちょっと付き合ってくれ。」
「えっ?きゃっ!キャ〜〜。」
叶は天歩と縮地を使い、水瀬と2メートル近くある大鹿を抱えたまま颯爽と森の中へ消えていってしまった