表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転職しました  作者: Aries
第3章
52/202

慈愛の姫巫女

 




 私と叶先輩は東西南北の街を見て回っている


 馬車で1時間かからないので割と近い


 田畑が広がりのどかな風景が続いてる


 南は来るときに寄ったので、今日は西


 西の街は主に農作物を作ったり加工したりしてリアムに持ってきてる


「西の教主様はどんな方なんですか?」


「うーん。お金が大好きね。」


「え?」


「西は主に農作物を作ったり、嗜好品をよそから仕入れてくるのよ。ポーちゃんはお買い物とかも上手なの。いつも質の良いものを持ってきてくれるわぁ。」


 慈愛の姫巫女ジュリア様は相変わらず叶先輩にベタベタしてる


 とても同じ歳とは思えない


 色気が半端ない


「ソウイチロウ様、さぁさぁこちらです。早く挨拶を済ませましょう。うふっ。」


「ジュリア様、あまり密着されますと周囲に余計な誤解を与えてしまいますので、もう少し離れて頂けると…。」


「まぁ!誤解じゃなければよろしいんでしょう?私は全然構いませんわ。姫巫女は勇者にお仕えするのがお仕事ですもの、ソウイチロウ様でしたらこの身も、心も、何なりと。」


「ハハハッ参ったな。」


 耳元で囁かれて赤くなってる!


 叶先輩ももっとちゃんと拒絶すればいいのに!!


 あの断り方だと相手には遠慮してるだけに見えちゃうし


 相手を傷つけずに断るの難しいかもだけどさぁ


 十和ちゃんには見せられないよ〜


 …もしかして私もあんな風に見られてたのかな?


 うゎ〜


 気をつけよう


 西の街の教主様は商人って感じのまん丸したおじさんだった


「どーもどーも!ようこそ西の街へ!教主のポーシャウ=エンセいいます。どーぞ宜しゅう。」


 エセ関西弁がとても胡散臭いけど、なんか憎めない


 ここでも私達は過剰な接待を受けた


「いや〜勇者様達は酒も飲まんのですか?」


「我々の世界では成人は18歳なので、それまでは飲まないですね。」


 先輩…


 お酒はハタチになってからですっ


 叶先輩の周りには数人の美女が代わる代わる訪れては料理を取り分けたり、飲み物を注いだり甲斐甲斐しくお世話をしている


 先輩!


 負けないで!!


 私の周りはというと、天使のように可愛らしい男の子達がせっせと給餌をしてくれている


 可愛い


「パンはいかがですか?」


 上目遣いは反則ですよ


 頂きましょう


 ご飯は美味しくないわけじゃないけど、日本と比べるとどうも味気ない


 パンもふわふわ系じゃなくてギッシリハード系


 顎が痛いです


 お味噌汁飲みたい


 食べれなくなると食べたくなる


 イネス様が教えてくれたんだけど、東の外れに勇者様が作った国があるからそこならあるかもって


 聞いた時は私も叶先輩もテンション上がってはしゃいだ


 魔王を倒して帰る方が早いのかもしれないけどちょっと行ってみたいよね




 ***




「いや〜酒も女も反応イマイチでしたな!」


「聞いた話だと、東の勇者の国に興味があるそうよ〜。なんでも、故郷の食べ物があるかもって。ポーちゃんなんとかならない〜?」


「東でっか?まぁやれん事はないですけど費用は嵩みまっせ?」


「大丈夫よん。勇者様特別予算が組まれてるの、そこに入れ込むわぁ〜。ふふっ。」


「特別予算!ほな気張りまっせ!!」


「もーポーちゃんったら調子良いわぁ〜。当然私の分もよー。ソウイチロウ様には、私が頑張って頼んだってことにするんだから。」


「ほう!っということは勇者さんはまだ墜とせてないんでっか?100戦錬磨なジュリア様が?」


 ポーの顔が驚愕に染まる


 勇者とは胆力も凄いものなのだなと手を組んで目の前の美女を眺めた


「そうなのよ〜。なかなかガードが固くて!今回ようやく外に連れ出せたのに余計なのが付いてきたし!だから今回はあまり推しすぎないで、印象だけつけるの。ふふふっ。そして次回来たときに、サプライズよ!先に伸ばした方が、ポーちゃんも恩が売れるわ〜。」


「なるほどでんな!そやったら色々とじっくり吟味して揃えましょ!ほんで、今回はどないされます?会って頂きたいのは共和国の公爵令息か帝国の子爵でんな!後はブリリアント王国の子爵他、ぎょうさん偉いさんが来てまっせ?」


「帝国の子爵は初めてー?勇者様の情報を探りに来たのかしらん?何を持ってきてくれてるのー?」


「帝都の流行りもんと、装飾品ですな!いや〜中々良い物でっせ?」


「ふーん?共和国の公爵令息は…あら残念。次男なのね〜。でも中々タイプだわ。彼は明日の夜ね。その前にお昼は帝国の子爵に会うわ〜。ブリリアント王国の子爵にはお手紙を渡しといて〜。そのほかはいつも通り他の子達にご挨拶に行かせるわぁ。」


「会わへんので?」


「ふふふっ。勿論よ。姫巫女はブリリアント王国の子爵如きに会うほど暇じゃないわ〜。伯爵以下は基本的に取り次がなくて良いのよ〜?」


「敵わんなぁ。断りを入れんのも骨が折れますよ。火遊びも程々にでっせ?」


「あら?穢れを清めてあげてるのよ〜?それに、できれば良いところに嫁ぎたいじゃない?それでポーちゃんも良い思いをしてるんだから、お互い様よ〜。」


「ひょっひょっひょっ確かにでんな!まぁ小言いうようで申し訳ないですけど、勇者さん来られたっちゅーことはいよいよ魔族との戦争が始まるかもしらんいうことでっせ?帝国は気をつけてほしいでんな!」


「あら?心配してくれるのー?さすがポーちゃん!そういうところ大好きだわ。帝国のことはそれとなく聞いてみるわね?うふふ。」


 成る程、としたり顔で小首を傾げる様はとても16歳には見えない


 ポーシャウは慈愛の姫巫女に会うこの仕事を羨まれる事が多々あるが、さほど良いものでもない


 一歩間違うと骨までしゃぶり尽くされる恐ろしい女に育ってしまったからだ


 だからせっせとと餌を与える


 与えた分はそれなりに返ってくるのだから


「おおきに!ほんで、今日はどうしはります?」


「勿論、いつものよう!」


 食物の管理を任されている彼女は、巫女たちと共に月に2〜3度西の街に訪れる


 お金の管理は節制の姫巫女だが、何をどの位仕入れるか、何処から仕入れるか決めるのは慈愛の姫巫女であるジュリアの仕事だ


 窓口であるジュリアの元には沢山のアポイントが寄せられる


 それをある程度篩にかけるのは西の教主ポーシャウに任せている


 ズブズブの関係である


 そこで毎度毎度、接待と称して公費で豪遊するのだ


 上から下まで磨き上げ、見目麗しい男を侍らせ、気が向いたら閨に…


 最初は可愛いものだった


 先輩と一緒に、仕事帰りにお菓子を買ったり、リボンを買ったり


 それが次第にエステに行ったり、香油を買ったりと金額は次第に増えていった


 美しさには磨きがかかり、巷でも噂が尽きなかった


 ジュリアは14歳の時、慈愛の姫巫女に選ばれた


 有頂天だった


 とある時は大商人の所に商談で様々な嗜好品を頂いた


 またある時は貴族のパーティに招待された


 貴族のご令嬢そっちのけで自分達に群がる様はとても愉快だった


 そしてとある青年に恋をし、その身を委ねてしまった


 乙女ではなくなったことに恐怖した


 断罪されるのでは?


 だか、どうしてか儀式の時にも何も起こらなかった


 色々教えてくれた先輩巫女は18歳の任期を終えて貴族の元へ嫁いでいったので相談できなかった


 もしかして先輩も?


 乙女でなくなった今も女神様の声は確かに聞こえる


 女神様は気づいておられないのか?


 乙女で無くても良いのか?


 それとも…自分だけが許されているのか?


 青年はいつのまにかいなくなっていた


 秘密を握られているとポーシャウに相談したら彼がなんとかしてくれた


 青年を綺麗に始末してくれたのだ


 ジュリアの行動に拍車がかかる


 女に生まれたのだ


 女の武器を使わない手はない


 微笑むだけで籠絡していく男達


 自分の行いは女神様公認だ


 何も責められることはない


 そうして自分を正当化し、快楽に溺れていった


 慈愛ではなく自愛


 それが今代の慈愛の姫巫女ジュリア


 今日も快楽に身を委ねる





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ