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異世界に転職しました  作者: Aries
第3章
41/202

ブリリアント王国

 




 次の日、俺たちは王様とやらにあった


 正直言って俺のカンは当たってると思う


 どう見ても貧困に喘いでない


 今喋ってるのが王様?


 マジか…


 テカテカの顔に蓄えたヒゲは綺麗に整えられてるし、はち切れんばかりの腹はメタボそのもの


 喋る度に水風船の様にタプタプ揺れてる


 高級そうな服


 ギラギラと指輪やブレスレットなどの装飾品


 王妃もエリザベートも同じく着飾りまくってる


 そしてもう1人紹介されたのが王子


 エリザベートの兄アレキサンダー


 金髪碧眼の優男


 趣味の悪さに内心げんなりしながら殊勝な態度で感謝の言葉を述べた


 この辺のポーカーフェイスはお手の物だ


 まぁ新堂みたくいつもニコニコはできんけど


 後輩達はクスクス笑ってる


 空気を読んで誰も声をあげたりはしないが…


 お願いだから朝比奈は黙っててくれよ


「それで、今後は我が国の魔導士と騎士が皆様のレベルアップをサポート致しますわ。

 ソウイチロウ様方も勇者ではございませんが、スキルなどは常人よりも有能かと思いますの。自己防衛の為にも是非一緒に学んでいただきたいですわ。」


「…お心遣いありがとうございます。足を引っ張らないように、自分の身は自分で守れるように努めたいと思います。」


「そうだね。僕らもサポート位は出来るように頑張ろう。」


「そうね。はるか、私達も自分にできることを考えましょう。」


「…うん。」


「俺達に任せとけば大丈夫です!」


「ご安心下さい!」


「大丈夫っしょ。」


「頑張るです〜。」



 ***




 本来なら勇者召喚は、世界に危機が訪れた時、聖国と多数の国が協力し、教会で行われる


 過去に勇者を召喚した国が戦争を起こしたり、勇者が事件を起こしたりと、様々な問題が起こった為、協定が決められている


 今回の勇者召喚はブリリアント王国の独断


 財政悪化の為、他国に圧力をかける為、自国の防衛の為、理由は多々ある


 だが、財政難については完全に王族の浪費のせいだ


 ブリリアント王国は内陸の国で、周りを他国に囲まれている


 北西に聖国、北東に帝国、南東には大小様々な国からなる共和国、唯一国境がないのは南西だが、深い森になっている


 囁きの樹海と呼ばれるその森は珍しい薬草や素材、魔物の宝庫だが、鬱蒼と広がる樹海と強力な魔物が人々の行く手を阻む


 そして囁くように侵入者を惑わせ、迷わせるのだ


 地元の人々の中には、奥にダンジョンがある、古龍が住んでいる、魔女がいる、などと噂が流れていて不気味がられている


 実際に、定期的に強力な魔物が現れるので、放置すると災害級の被害をもたらす


 その対応も財政を圧迫しているのだが森に面している領の貴族に一任してある


 勿論討伐された魔物は王家に献上させている


 ダンジョンがないブリリアント王国では魔物の素材は大変貴重で高値で取引されているのだ


 以前のブリリアント王国は魔物の素材を使って装備を整え、強力な魔物が出た時は軍から騎士団を派遣し、地元民、冒険者達と共に戦ってきた


 そして活躍した者には褒賞が与えられ、協力した者達にもそれなりの報酬があった


 魔物の素材は国を循環させ、加工品は近隣諸国にも人気だった


 勿論、加工品を作るギルドのレベルも高かった


 先先代の王の頃だっただろうか


 徐々に財政が傾いてきた


 魔物の脅威が抑えられ気が緩んだブリリアント王国は、散財し始めたのだ


 そして先先代の王はまだ見ぬ財宝に目が絡み、囁きの樹海の奥へと侵略を進めたのだ


 結果は惨敗に終わった


 軍の半数が樹海の闇に飲み込まれ、帰らぬ人となった


 生き残り樹海から戻った者達も死傷者多数、装備は破損、大破し散々な結果だった


 だが先先代はこの結果に激怒し、更なる侵略の為に徴兵と徴税を増やしたのだ


 兵士達は初めは皆、魔物の脅威が及ばぬ様にと奮闘したが、不十分な装備に人手不足、人材不足


 少しずつ削り取られていた


 そして徐々に衰退していき、今の状況を抜け出せずに勇者召喚に手を出したのだ


 強欲は身を滅ぼす


 ブリリアント王国はまた新たな罪を犯した


 総一郎の読みは概ね当たっていたのだ

 

 ただ、ブリリアント王国の狙いはそれだけではない




 闇は根強く、より深くまで浸透していた…




 ***




「首尾はどうだ?」


「お兄様。上々ですわ。」


「そうか。なかなか使えそうな奴らじゃないか。侍らすのも悪くない。」


「まぁ、あの様な穢らわしい者達にも施しをされるおつもりですの?」


「清めてやるのも王族の務めではないか?」


 ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべて遠目に水瀬はるかを舐め回す様に値踏みする


「召喚された勇者の中に聖属性の適正者がいたら、彼の方に差し出すお約束ですのでおやめ下さいまし。」


「なんだと?そんな事を言っていたのか?黙らせとけば良いではないか…」


「お兄様、彼の方のご協力無くして今回の召喚はなかったのですよ?2人くらい安いものですわ。しかも適正者は幸運な事に巻き込まれた方。」


「クソっ!まぁ致し方無いか。他の者達で我慢するとしよう。」


「クスクス。あの者達は今から我が国に金を運んでくれる雛。上手に育てませんと。お兄様も上手くやって下さいまし。」


「フハハっ。頼もしい妹だ。此方は抜かりない。」


 まずは勇者を鍛えねばならない


 そして森に行って魔獣の討伐をさせレベル上げ、強力な魔物の素材、薬草などを手に入れて装備を整えてからだ


(少しずつ、手なづけてさしあげますわ。)


 エリザベートはペロリと唇を舐め、これからに思いを馳せた






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