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異世界に転職しました  作者: Aries
第1章
29/202

晩餐

 





 ロビーに出ると視線が凄く痛い


 めっちゃ見られてるけど何か変だったかしら?


 キョロキョロしてるとみんなを見つけることができた


 淑女は走らないらしいので、テクテク歩いてく


 ルシフェルはネイビーのセットアップにグレーのシャツ、スカーフやカフスなどの小物は私と同じ水色


 髪は後ろに撫で付け、ジャケットと同じくネイビーのハットを小脇に抱えて待ってた


 クラルスはルシフェルとお揃いのネイビーのセットアップでスカーフの代わりに水色のリボンタイを結んで、ソファにちょこんと座ってる


 髪は編み込んで後ろに纏め、共布の帽子を被って女の子みたいに可愛い


 ルシフェルは直ぐに此方を見つけてくれた


 クラルスから目を離すと私の手を取り、手の甲にキスを落とす


 あわわあわわあわわ


 皆んなが見てる前で何してる!


「姉上!すっごくキレイです〜。」


「あ、ありがとう。クラルス。あの、ルシフェル、お待たせしました?」


「…いや、全然。じゃあ行こうか。」


 どこへ?


 みんなで表の馬車に乗り込んだ


 ミーティアはおめかしして可愛らしいクーファンに入れられていてとてもキュート


 花の中の蜜で溺れてしまいました


 食べ過ぎちゃってすっかり福々です


 みたいな?


 これもマダムが?


 できる…


 ミーティアもおめかしして機嫌がとってもいい


 女の子ですもの


 ルシフェルはどこに行くか教えてくれない


 今日は午前中はマダムに紹介されたアダルマンの装飾品店を見に行き、他にも色々なお店を見て回り、お昼を食べて宿に戻った


 午後からはマダム達が仕立てた洋服の調整に来てくれた


 ここまでは良かったんだけど、マダムと一緒にメイドさん達もいてまた上から下まで、とぅるっとぅるに磨き上げられた


 今回は髪も念入りにとかされ、結い上げキラキラと輝くパールの髪留めが華やかに飾る


 ルシフェルが選んだ春らしい水色のドレスは上品なデザインで、Aラインの切り返しの所にパールが縫い付けられ、背中には大きめのリボンが付いている


 袖は肩が隠れるフレアスリーブ


 靴はちょっとヒール


 レースの手袋の手元には扇子と小さなクラッチバッグ


 後はほんのりお化粧され完成


 全体的にふわふわして、歩くたびに裾が揺れるのが可愛らしく、背中のリボンが羽みたいで妖精の様な気分にさせてくれる


 マダムやお針子さん、メイドさん達のリップサービスに、もしかして私って綺麗?


 ちょっと自惚れちゃう


 クラルスは褒めてくれたけど、ルシフェルは何も言ってくれないし、やっぱりそんなにだったかな


 せっかくおめかししたんだから、ちょっとくらい褒めてくれても良いのに


 そんなこと考えながら馬車に揺られて着いたのは、帝国でも有名な高級レストラン


 エントランスを抜けたフロアは食事をしている人たちでいっぱい


 最初は誰でも入れるフロア、半個室は上流階級用と別れていて、上級貴族や王族専用の個室もあるんだって


 フロアは天井が高く吹き抜けになっていて、中央に楽団や歌手やダンスが入ってたのしげで、こちらを使う貴族も多い


 パーティや催し物の会場に使われる事もある人気店で、予約はなかなかとれないらしい


 ずっとルシフェルに説明を聞きながらエスコートされて、反対側はクラルスの手を繋ぎ歩く


 ミーティアのクーファンはルシフェルが抱えてる


 本来なら子供連れで入れない様なとこだけど、気にしなくて大丈夫なのかな?


 座ったところは二階の席で、一階の音楽やダンスを見聞きしながらお食事を楽しめるボックス席みたいな所


 レストランで食事と言うより御屋敷で晩餐って感じで気構えちゃう


「セレニティ、驚かせてごめんね。今日は僕からのプレゼント。ほぼ個室だし、テーブルマナーは気にせず楽しんでくれたら嬉しい。」


 全部ルシフェルが手配してくれたみたい


 楽しみだな


 オードブルは色彩が鮮やかな野菜と鶏肉のテリーヌ


 食感が楽しい


 スープはコンソメかな?


 透明な黄金色


 具は賽の目の野菜が入って食感も優しい


 なんとクラルスの分はお子様仕様なのか、お野菜が星やハートになってる手の込んだ仕上がり


 野菜を美味しそうに食べてる


 ポワソンはエビみたいなカニみたいな見たことない魚介


 未知の食材だったけど美味しかった


 味はカニで食感はエビ


 お口直しにフルーツ


 ヴィアンドはジューシーなお肉


 赤身なんだけど柔らかくて肉汁じゅわわ〜で美味しい〜


 何これ〜


 赤ワインとのマリアージュが更なる高みへと誘う〜


 ってグルメ漫画だとそんな感じ?


 なんのお肉だろう


 シーサーペントのお肉?


 え?


 ヘビなの?


 ヘビじゃないの?


 ドラゴンの亜種?


 中々の大物でSランクのパーティが2組で10日もかかって仕留めたんだって!


 凄い!


 シーサーペントってこんなに美味しいんだ!


 私も狩に行こうかしら?


 我が家だったら1年は余裕でもつわよね?


「セレニティ?そういうのは僕が行くから勝手に行かない様にね。」


 え?


 心の声漏れてた?


 …だって美味しかったんだもん


 高ランクの魔物のお肉は魔力を多く含んでいて美味しい物が多い


 最後にデザートのベリーのムースを堪能してたらシェフが挨拶に来てくれた


 鉄人!


 素晴らしいです!


 凄く美味しかったです!!


 初めて食べました!!!


 料理長は白髪混じりの老紳士で榛色の瞳がとても優しい


「お肉!お肉が1番美味しかったですー!」


 はしゃぐクラルスに視線を合わせてお話する姿は、孫大好きおじいちゃんって感じでとても微笑ましい


 こっそりレシピをパクリ…参考にさせて頂いてます


 心が痛いですが、こんな所何回も来れないです


 クレアさんが教えてくれるのです


 シェフが退出した後、みんなで雑談してティータイムを楽しんでいたらフロア長さんがやってきた


 とあるお貴族様が私に会いたいんだって


 何か用かな?


 って思ったんだけど、そんなことか


 何だかかな〜


 めんどくさそうなのでお断りしたらフロア長さんに渋い顔をされた


「貴族ですよ?!」


 貴族だからですよ


 せっかく楽しい気分なのに不愉快な思いをしたくないし、初対面なんだから遠慮してほしい


「信じられない!何て不敬な!!」


 フロア長は私達を睨め付け騒ぎだした


 うるさいなぁ


「何を騒いでいるのですか?お客様に対して何て不敬な!大変申し訳御座いません!!」


 っと騒ぎを聞きつけて来た副支配人がその場を納めてくれた


 副支配人さんは別件で訪れたようで、大変申し訳なさそうに要件を告げた


 この国の伯爵ご令嬢が私に会いたいとのことだった


「会って頂けるならお屋敷にお招きしたいとまで仰っておられます。」


 とのこと


 ルシフェルは我関せず


 私の判断に任せるって感じ


 呼びつけてまで聞きたいことなのかしら?


「副支配人、お気持ちはお察しします。ご令嬢のご配慮にも感謝いたします。ですが私たちは明日この国を出る予定です。またの機会があれば是非に、っとお伝えください。」


 帰ろうとする私達を副支配人はやんわりと牽制する


 フロア長はまた不敬だの何だのブツブツ言ってる


 副支配人は静かに微笑んでるけど、伯爵家に恩を売れる機会は安安と逃さない、っと顔に書いてあるようで笑える


 結局、丁寧なだけでフロア長と変わらないな


 はぁ


「さぁ馬車は来ているんでしょう?我々はお暇するとしよう。(副支配人、本来なら彼女(あのかた)はお前が御目通りできるような方ではない。況してや()()()()()()が呼びつけるなど不敬にも程がある。)」


 傍観していたルシフェルはミーティアのクーファンを抱えると、副支配人の肩をポンポンと触れ帰りを促す


「…そ、それでは、お出口までお見送り致します。」


 最後まで聞き取れなかったけどなんて言ったのかしら?


 出口まで誰にも見られなかったし、気にもされなかったのはルシフェルが何かしてたから


 マナの流れが見えた


 まぁ気にしなくて大丈夫かな


 馬車に乗るとクラルスはうとうとして、帰り着くまでに寝てしまった


 美味しかったし、オシャレして楽しかったけどちょっと疲れちゃったかな?


 私も軽くお湯を浴びて早めに休もう


「最後、副支配人に何を渡していたの?」


「ん?マダムカメリアのところで買ったハンカチよ。たぶんだけど、あれをご令嬢に渡せば副支配人が怒られる事は無いと思って。」


「なるほどね。」


「マダムにはお伝えしてお詫びしないとな〜。」


「その必要は無いと思うけどね。…不快な思いをさせてしまってごめん。」


「そんな事ない!素敵なディナーだったわ。とっても美味しかったし、お姫様になった気分。」


「あぁ、今日の君もとても綺麗だ。皆に自慢したくなるくらいにね。」


「ふふふっ。ありがとう。ルシフェルも素敵よ。」


 やっと褒めてくれたので、最終的にハッピーな気分で戻る事が出来た







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