帝国
翌朝、屍のようなお2人を起こして、こっそり状態異常を小回復させて送り出し、私もチェックアウトのため身支度を整えて朝食をとった
マーガレットさんにはオレンジ石鹸と手持ちの砂糖をお渡しし、皆さんに別れの挨拶をして木漏れ日亭を後にした
マリーちゃんとマイク君には、後ろ髪を引かれる思いだったけど、また10日後来るからと笑ったら2人とも笑顔で送り出してくれた
短い間だったけど随分と懐かれたな
街へ入った時と同じように、出るときも検問を通り街道沿いを歩く
しばらく歩いて、街道を外れ人気のない森の方にどんどん進む
森の中に入ってから待ち合わせの座標に飛んだ
もちろん気配探知も怠ってないし、森に入ってからしばらくして光化学迷彩と気配遮断で探知されないように気をつけてます
待ち合わせ場所には既にクラルスとルシフェルがいた
って言ってもまだここは空の上なんだけどね
クラルスが私に気づいて手を振ってる
「姉上!ただいま戻りました!」
近づいた私に駆け寄ってきて歓迎のハグをしてくれた
駆け寄って来て…?
「こら、危ないだろう。走るな。」
「ごめんなさいです。ルー兄様。」
ルシフェルに引き剥がされたクラルスは素直に謝ってた
…ルー兄様
クラルスとルシフェルは仲良くできてるみたい
ちょっと意外!
クラルスは人見知りする方だと思ったのに…
2人に何があったかすごく気になる
「お帰り。セレニティ。」
すっと差し出された手が余りにも自然だったので掴んでしまった
パッと離そうとしたら逆に引き寄せられて、バランスを崩し抱きとめられた
なんか、私から抱きつきに行ったみたいじゃん、これ!
もう!っと睨んだら
「クラルスがただいまのハグをしたんだから自分もして良いはずでしょ?」
だって!
ちょっと言うと倍になって返ってくる
もう片方の腕にはクラルスを抱えて、見えない様に配慮してるところがまたなんとも…
「…ただいま戻りました。」
「お帰りなさいです!」
「クラルスも、ただいま。ところで、話が変わる(変える!)けどどうして雲の上に立ってるの?」
「ルー兄様は、すごいんです!雲の上に乗ってるんです!!」
「結界を乳白色にして、更に水蒸気を纏わせてるんだよ。クラルスをずっと抱えてるのも面倒だったから。」
「凄い。本当に雲の上に乗ってるみたい!いい景色〜。」
へー!
器用だなぁ〜
これなら下から見られても問題なさそう
クラルスと2人ではしゃいで端から落ちそうになってヒヤリとした
飛べるから大丈夫とかそういう問題ではなく、タワーの展望台にある透明な床に立った時みたいな感覚です
「それで、これからどうするの?帰るの?」
「いえ、帝都に寄って行こうと思って!」
「姉上、ていとって何ですか?」
「私達の住んでる森の東側にある国の首都よ。この世界で1番大きな街で、色んな物が沢山あるの。そこでお買い物して帰りましょ!何でも好きなもの買って良いわ!」
「世界いち?何でも?すごいです〜!」
クラルスはハシャギ過ぎてテンションが振り切れそう
元気一杯です
とりあえず2人にも偽装の腕輪をつけてもらって、買ってきた服に着替えてもらい、人気の無いところに降りた
2人とも茶髪の碧眼に
黒髪、黒目もこの世界では珍しい
この世界に地球から無理やり召喚された人が結構いる
その人たちが集落を作り子孫を残したらしく、今ではそこが1つの国になっている
クレアさん曰く、1番日本っぽい所って
帝国も私から言わせれば大概なんだけどね
帝国にも黒髪、黒髪の人はいるかもしれないけど、ルシフェルのルックスを考えると、あまり目立たないほうがいい
まぁ彼なら自分で偽装できそうなんだけど、腕輪を渡したら嬉しそうにしてたので良いかな
みんなお揃いです
街道を歩いて帝都に向かおう
ルシフェルは直接、転移するって言いそうなのに、言わなかったので疑問に思って聞いてみたら
「美学が無い。」
ってさ
なるほどね!
***
帝都に入る前も検問があり、入るのに結構待たされたのでお昼を過ぎてしまってる
私とルシフェルはお腹が空くとかはないけどクラルスは限界みたい
入ってすぐのメインストリートにはお店がいっぱい並んでて目移りしちゃう
色々見たいのを我慢して先にお昼にしましょう
出店で串焼きが売ってたのでとりあえずそれを買ってあげた
シンプルな塩味のオーク肉
オーク?
豚肉みたいな感じかな?
さて、何食べようか
ってゆーか何があるかな?
わくわくっ
「姉上!あれ!あれ食べてみたいです!」
「んー?」
クラルスがグイグイ引っ張って行く
あ、あれは!!
「行きましょう!」
お昼を少し過ぎていたので、そんなに混んでなくすんなり入れた
着席してメニューを見ると、絵が書いてあってわかりやすい
「これです!これが良いです!」
店員さんに注文をするとその場でお会計になりました
先払いね!
諸々込みで1万ベリルいかないくらい
高いね!
帝都の物価は3割増しくらい?
お酒とか頼んじゃったのもあるけど
昼から飲んじゃう
クラルスが選んだのはハンバーガーみたいなものでした
私のはチーズ入り!
ビールいるでしょう!
ビールじゃなくてエールだけど
出てきたバーガーは見た目の破壊力抜群!
ハンバーガーよりBLTサンドって感じの見た目だけとね!
良い匂い!
カリッと焼かれたバンズにシャキシャキレタス、コクのあるチーズ、オークのお肉は肉汁ジュワ〜で幸せ〜
マスタードと刻んで入れてあるピクルスもいい仕事してます!
美味しいです〜
付け合わせのトマトとポテト
フライドポテトというよりは、カリッと揚げ焼きにした感じ
ポテト美味しい〜
夢中で食べてたけど、ふと見たらクラルスの口がめっちゃ汚れてて、ルシフェルが拭いてあげてるのを見て、自分の口元が気になってササッと拭いた
誰にも見られてないよね?
ハンバーガーだし多少はしょうがないよね?
ルシフェルは同じものを食べてるとは思えないくらい優雅です
あ、口元にソースついてる
…舌でペロって
なんかいかがわし〜
そして茶髪だとちょっとチャラく見える
クラルスの世話をしてる姿はいいお兄さんって感じだけど
ポテトをもぐもぐしながら周りを観察
召喚された人達の努力もあって帝都の文化は他よりちょっと進んでるのかな?
帝国は召喚者を積極的に保護、支援してるみたいだし
無理やり連れてこられた人達だけど、戻してあげられないので、せめてこちらで幸せになって欲しいな
帝国は打算的なところもあるけど現在の王太子は転生者だから、そんなに酷いことにはならないでしょう
何でそんな事わかるのかって?
一応これでも女神代行ですからね!
まぁこの都市づくりや色々なネーミングセンスを考えると帝国の過去の王族には転生者や召喚者がいたってすぐわかると思う
帝都の名前『シンジュク』だし
マーガレットさん達がいた街は『エビス』で迷宮がある都市は『アキバ』
迷宮都市は秋葉原じゃなくアキバってとこが現代日本人っぽいよね
200年くらい前に帝国として、まとまった時の初代皇帝が都市改革をして、街道を整備し、都市名を決めたんだって
初代さん…鉄ヲタ?
まぁ、わかりやすいし、もう定着してるし、放置で
それはともかく
エールがぬるい!
美味しくない!
こっそり魔法で中を冷やして、キンキンにして飲んでたらルシフェルにバレた
何で?!
マナの動きが見えたから?
いや、別に悪いことしてないし、この方が美味しいんだよ?
ルシフェルも冷えたエールの方が美味しい、と同意してくれたので何よりです
クラルスはまだダメ!
お酒は成人してからです!
私?
この世界の成人は15歳だから大丈夫なの!
おやすみありがとうございました!
引き続き宜しくお願いします!
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