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異世界に転職しました  作者: Aries
第1章
2/202

出会いと別れ

 





 黒龍は静かにセレニティの話を聞いた


 晴海は女神にMareマーレ Serenitatisセレニタティスという名をもらった。晴れの日の海と言う意味だそうだ。


 彼女のことは女神から聞いて知っていたがあえて本人から直接聴きたいと思っていた


 黒龍もピュアで慎ましいセレニティを気に入り、彼女になら任せられるような気がした


 二人は長い時間をかけてお互いの話をした


 何日もかけてお互いのことをはなした


 この世界のこと、これからのこと、晴海の世界のこと…そして空の色が変わり始めた頃、黒龍から話を切り出された


『セレニタティス、会ったばかりで厚かましいかもしれないが、我もそなたに頼みたいことがあるのだ。どうか聞きいれてくれまいか?』


「なんでしょう?」


 セレニティの前に卵が現れる


 漆黒の夜空に銀色の星々と渦巻く流星


 銀河を切り取ったような神秘的な模様だ


『これは我の子だ。だが我はこの子の成長を見守ることは出来ぬ。旅立たなくてはならない。だからこの子をそなたに託したい。』


「そ、そんな!何故ですか?!どんな時でも母親は一緒にあるべきです!おいていくなんて!!」


『仕方のないことなのだ。 生きとし生けるものには寿命がある。だが、そなたが来なければ、我はこの子の誕生に立ち会うことはできなかったであろう。そなたが来てくれたおかげで残りの力を生きるために使える。そなたにも、そなたを御選びくださった女神様にも誠に感謝している。』


「もう、どうしようもないのですか?」


 彼女の覚悟決めた眼差しにセレニティがただただうなずき涙をこぼすしかなかった


『我ら親子のために涙してくれてありがとう。1人寂しく朽ちていくと思っていたが、最後にそなたと言う素晴らしい友に出会た。我はとても幸せだ』


 2人は静かに卵に寄り添いあった



 ***



 それから数日


 色々なことを話し穏やかな時を過ごした


 そしてあたりが闇に包まれるころ


 私たちが見守るなか、ついに


 卵が孵った


 中からは、まるで月の光のような淡い光とともに、純白の龍が生まれた


『あ、あ、まさかこの目で見ることができるとわ思わなんだ。これもそなたのおかげだ。我が人生の最大の誉れぞ』


 黒龍は我が子を引き寄せ抱きしめるように愛しむ


 空には星々が宝石のように煌めき、月は静かに、穏やかにあたりを照らしている


 今宵は満月


 夜の空は新たな生命の誕生を祝うかのように静かに輝いていた


 神秘的な光景だ


 私はせっかくの親子水入らずの時間を邪魔しないようそっとその場から立ち退こうと…


 ごつん!


「いっった!」


 何か頭に落ちてきた!


 頭をさすりながら辺りを見回すと、手のひらサイズの石が落ちていた


「なにこれ?当たり所が悪ければ死んでるんじゃないかしら?」


『クックック。それは我の涙の結晶だ。そこまで大きいのは珍しい。』


 黒龍が笑いながら教えてくれた


 龍の涙が周りの魔素を取り込んで結晶化したものらしい


 本来ならば、この大きさの物が一瞬でできることはない


 私のせいらしいです。はい。


 よく見たら周りに落ちて、キラキラしてるのは全部…


「あれ?なんか色が違う石が何個かある?…綺麗」


『ほう…それはそなたの結晶のようだ。』


「え?えぇ?!凄い!…涙が宝石になったとかヤバイ。異世界では涙は宝石になるの?」


『大事にすると良い。そう安安とおこる現象ではないからの。ただ、あまり人目に触れぬ方が良いだろう。その石は人間には強すぎる。』


「そうなのね。あなたとの思い出の品だし大切にするわ。」


 心臓に悪いなw


 慌てて石を落っことすとこだった


 ほっと胸をなでおろし、ポケットにしまった


 子龍は寝ているようだ


「黒龍から白龍が生まれるんですね〜」


『そうではない。この世界で白鱗をもつ龍ははこの子だけだ』


「そうなの?白は珍しいんですね」


『白い鱗は龍種の中で最上である。そもそも白は女神の色、白いというだけで女神に愛された個体だどいうことになる。我は古龍だ。なので最低でも我が子は第4位はあると思うておった。』


 龍の色は白>黒>藍>紫>赤、青>緑、黄>その他(マダラ、灰色、茶色など)に分けられる


 第4位というと紫


 ちなみに黒龍の鱗は漆黒で第2位の黒龍の中でも最上と言える漆黒だ


 そして古龍でもある


 古龍は龍が一千年生きて進化したもの


 上位の龍は大体生まれた時は中位の赤か、青が多く、成長とか共に色が濃くなっていく


 成長の段階で一定レベルを超えると、上位の色へと進化できる


 だから赤、青以上の色は上位種だと確約されていると言える


 また、それ以外は明確な隔たりがあり、赤、青以下の龍は所謂ドラゴン、多少の知恵ある獣といった程度


 黒龍も生まれた時は漆黒ではなかった


 長い年月を経て漆黒の鱗を手に入れ、更に古龍となった


 そう考えると生まれながらにして白い鱗を持つ白龍は異常とも言える


『このの力は異常と言えるほど高い。我が娘は生まれながらにして女神の加護を得た。それ故に安定しておらぬ。そなたには我が子の力の暴走を抑え、良き道へ導いてほしい』


「もちろん。あなたの頼み、お承りします。そして女神に誓いましょう。この私、Mareマーレ Serenitatisセレニタティスがあなたの代わりに、この子のことを見守り、この子のために、私の持てる力を最大限に注ぐことを」


 あぁ…我が子をこの腕に抱くことができなかったこの私に、子供を育てる喜びを与えてくれた女神に感謝します



 ***



 数日後、黒龍は静かに息をひきとった


 子龍はと私は静かにその様子を見守っていた


 黒龍は死後の自分の体を存分に素材として使ってほしいと言ったが、私は黒龍の身体を切り刻むのに躊躇した


 黒龍の血は子龍のために少し頂いたが他の部分は、とりあえず使う予定もないので、どうしてもの時が訪れるまで保留にした


 時を止める魔法を展開し、周りの時間を止める


 黒龍は神殿の主って感じだし、子龍が大きくなってこのことを理解できるようになったら、またここに一緒にこようと思う

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