明けの明星
クラルスと一緒に住む事になったので、セキュリティも強化したいし、食事や教育の事もちゃんと考えないと
お勉強はクレアさんがいれば問題ない
体術や武術、武器の扱いなどは私では教えることができないし、どうしようか悩んでる
なんなら私も護身術位は出来るようになりたい
ミーティアはまだ幼いし、もう少し先の話だったんだけど、直ぐにどうにかしないといけなくなった
いろいろ悩んでたらクレアさんが、悪魔を召喚して契約することを勧めてきた
悪魔?
大丈夫なの?
《悪魔は、契約の通り、忠実に任務を遂行してくれるので、精霊より使いやすいです》
《何より、暇してる奴が多いですから!》
とのこと
契約に背かない、裏切らない、長命で、博識な部下か…
いいね!
使い魔も欲しいし
見た目は黒猫ちゃんとかでも良いな…
…十六夜?
冗談だから拗ねないで?
みんなの視線が怖いから今回は動物タイプはやめとこう
契約料で捧げる供物は黒龍の涙の結晶で大丈夫とのことだったが、私が契約するのに黒龍の物を使うのは気が進まなかったので、私の涙の結晶にしようとしたら、それはあげすぎだ、と怒られてしまった
髪の毛数本で良いらしいので、ブラシについた髪の毛を数本集めた
黒龍の血、黒龍の涙の結晶のかけら、私の髪の毛
召喚の供物、受肉用の媒体、契約料
どれがどれになるかはわからないけど、足りないことはないでしょう!
この時、クレアさんがちゃんと説明してくれてたら…と悔やんでならない
***
魔法陣の中には蠢く何かが在る
『素晴らしい供物だ。呼び出しを受け入れよう。』
(暇つぶしに出てきた甲斐があったな)
(供物も素晴らしいが、なんと美しい)
(見た目も、魔力も、魂さえも!)
(しかも乙女)
『さて、乙女よ、なにが望みだ?』
悪魔はニヤリと笑った
…
やばぃ!やばぃやばぃやばぃやばぃ!!!
これ絶対やばいやつじゃん!
クレアさんどういうこと?
アレ、大丈夫?
おかえり頂いたほうがいいんじゃない?
《セレニタティス様の魔力、そして魔力の凝縮された古龍の涙の結晶。かけらとはいえ過分でしたね。マナの多いこの地も一因でしょうが、まさか傲慢の君が出てくるとは…。中級悪魔が数体出てくれば、と思っていましたが、流石でございます。》
えーなにそれーってゆーかこの悪魔私に仕えてくれるの?
《問題ありません。対価はすでに充分すぎるほど与えております。後は報酬ですね。契約条件などはこちらで提示します。良い条件を引き出してみせますので、どおぞお任せ下さい。》
はい
『そう恐れることはない。お前がその身を差し出すのであれば、この俺の側に在ることを許そう。』
「えーっと…貴方には私に仕えて、ボディガードとか雑用をして頂きたいんですけど…あっ!嫌なら全然おかえり頂いて大丈夫です!」
『は?』
帰って〜
お願い〜
『くくくっ面白い冗談だな、俺に仕えるでなく、仕えろだと?笑わせてくれる。お前ごときに対価が払えるわけがない。』
「受肉の媒体はこちらで、報酬はとりあえず私の髪の毛で、お気に召さないのであれば、あの、…別の方にお願いするので、お気になさらずお帰り下さいませ。」
悪魔は久々の事で機嫌が良かった
まさかこの乙女、本気か?
なんて、いつもなら思わなかっただろう
気に入らないモノは潰す
そうやって生きてきた
どれだけ傲慢に振舞っても許された
悪魔は思案し、よく観察した
見れば見る程美しい少女だった
果たしてこの乙女は人間なのか?
極僅かに人間のような気配はする
だが、もっと厳かで神聖な得体の知れない何かを感じてしまう
そしてふと気付いた、力が膨大すぎで、測れないのではないか、と
自分が見ているのは窓に切り取られた空の一部なのではないか、と
まさかね
何故そんな事を思ってしまったのか
悪魔=悪ではない
悪魔とは精神生命体
肉体がない、精神世界の住人
だからこそ感じ取ることができたのかもしれない
『ふむ』
チラリと供物を見る
『龍の高み、古龍へと至った黒龍の鮮血か…』
そして、乙女の髪の毛
強さ故に、暇を持て余した悪魔は、好奇心に勝てなかった
自分を沸きたてる好奇心
あの髪の毛がどれ程の物なのか…
美しい乙女に付き合うのもまた一興
悠久の時を生きた、傲慢の君と呼ばれた悪魔はその日、受肉し現の世に降り立った
***
悪魔が供物のプラチナブロンドの髪に口付けすると、彼の烏の濡れ羽色の髪に一筋の銀色が差す
長めの前髪をかきあげる仕草が艶やかで思わず見惚れてしまう
瞳は薄水色と中心が金
白目の部分が黒いので、星が輝いているように見える
明けの明星の様な瞳に吸い込まれそうだ
黒龍の血で受肉した彼はクレアさんと雇用条件について確認してる
報酬はたりてるだろうか…
凄い眉間に皺が寄ってるけど…
クレアさんふっかけてるのかな…
「要件は大体わかりました。ご主人様の為に、できる限りのことをさせて頂きましょう。」
「あの、セレニタティスです。セレニティで良いですよ?後、口調もそんなに改めなくて大丈夫です。よろしくお願いします。」
「そう言われましても、これからお仕えするのに…」
「だからです!一緒に住むのにかしこまられると肩が凝ってしまいます…そんなに気にしないで?」
さっきと違いすぎて違和感がすごいんです
「はぁ…そう言うなら楽にさせてもらう。」
「えっと…お名前は?」
「悪魔には名前は無いので適当に呼んでくれて構わないよ。」
「えっと…じゃあ…明けの明星。ルシフェルという名はどうかな?」
「え?」
「瞳が、明星のようで綺麗だったので…」
「…いえ、ありがとう。良い名だ。嬉しいよセレニティ。」
彼の髪の銀色の部分が一筋から一房に増えたような気がする
笑顔を向けられるとなんだか照れるな
イケメンですからね!!
無駄に!!!
「改めて、よろしくね!ルシフェル。」
「ああ、こちらこそよろしく。セレニティ。」
「気になることがあったら、いつでも言ってね!」
「じゃあ…さっそく対価を頂こうかな?」
握手をしたら、そう言って彼はニヤリと笑った
***
…どうしてこうなったの?
拝見、お姉様
お元気でしょうか?
私は今…
…膝の上にいます
クレアさんが、私の召喚した悪魔と契約の報酬について協議した結果、この様な状況にあります
どうしたらいいんでしょうか
後ろからお腹のあたりをホールドされて動けません
体重はどこにかければいいんでしょうか?
逃げようとするとさらにホールドが強まります
「みゃっ!!」
変な声出てしまいました
「くくっ」
耳元で笑わないで下さい
ギョッとして振り向いたら思いの外顔が近くて、顔から火が出そうです
「まぁ最初はこれくらいにしてあげようかな。」
最初?
どういう事でしょう?
「じゃあ行こうか、大丈夫?…ご主人様?」
いきなり立ち上がられたので、バランスを崩してしまいました
この体勢は…お姫様抱っこ…
いえいえなんでもございません
随時報告致します
敬具
クレアさんに確認したところ、報酬は
固定給で月3回のハグからの魔力譲渡
臨時給は年に2回、彼の要望をできる範囲で
こちらからの個別の要望は仕事量に応じて要相談
月、3回?!
クレアさんに詰め寄ったら
《あら?毎日が良かったですか?》
だって!
違う!!
魔力を渡すならほかに方法は色々あるでしょう?!
そもそも最初は髪の毛で良いって言ってたくせに
《ずっと髪の毛で支払いを続けたら、ハゲますよ?ハグだけで良いって言う好条件なんです、減るもんじゃあるまし。大体、セレニタティス様は中身はもうさんじゅ…くどくど…くどくど…》
…うううっ
辛い〜
お姉様〜
おばさんがいじめるよぅ〜
《…》
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しばらくはほのぼの回が続きますが、お付き合い頂けると幸いです。
よろしくお願いします!