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異世界に転職しました  作者: Aries
第1章
13/202

深紅の咆哮 4

 



「1度だけなら…と、目をつぶってあげたのにも関わらず、2度目の醜態。どこまでも愚かな種族ですね。」


 いきなり声を掛けられて驚いたのか、一斉に視線が集まり、ざわめく


「やはりあの時ちゃんと自分で処分しておけばよかった。」


 ちょっと目を離した先に酷いことになってるよ


「女神様!お待ちしておりました!!貴方のゴライウスはここにおります!」


 私を見つけるやいなや、深紅を離しこちらに駆け寄ってくるおじさん


 目がギラギラしてて凄いキモい


「お前の様な醜い者を侍らせる趣味はない。」


「?!な、な、何をおっしゃいます?この私が醜いなどと、そんなはずは無い。この私こそ女神様に相応しい!」


 無視して深紅の対応をすることにしよう


 私は覇気を発動させる


 バタバタと兵士が気絶し、倒れていく


 呼吸ができる程度に弱めてるので気絶するだけ、死なないので大丈夫


 治癒の力を発動させる


 深紅の頭上に光の輪が広が現れ、輪が通ったとこから順次回復し、深紅に生気が点っていく


 彼には本当に申し訳ない事をした


 お礼はこっそりするべきだった


 龍人族に期待し過ぎてたのもダメだった


「女神様、愛しき人。我が妻よ。その者は貴方のお力を独占し、私の邪魔をした不届き者。お手を煩わせてしまい申し訳ございません。さあこちらへ!!」


 え?


 何それ、超キモい


 キモいキモいキモいキモいキモいキモい〜


 超鳥肌立った


 体の自由が効かなくても口は動くんだよねー


 喋れなくするにはどうしたらいいか考えなきゃ


 とりあえず遮音して魔力を搾り取ってオーブに吸収していく


 殺虫剤かけたGみたいにバタバタもがきながら此方を見て、あひあひ言ってるけど、キモいからもう見ない


 夢に出て来そう…げんなり


 これで王様って、この国ヤバくないかな?


 大丈夫かな?


 まぁそれくらい自分達でなんとかできるでしょう


 さてと


 覇気をとき、深紅に視線を向けると、彼は目を覚ました


「ブレイス!」


「イザークの兄貴、アースランドのおっちゃん…ここは?…俺は森で襲われて…そうだ!ランとダヴィークは?!」


「落ち着けブレイス。()()()無事だ。儂らで保護した。お前の体は、女神様が治してくださったんだ。」


 オカッパ君と老将は駆け寄って行って深紅が目覚めたことを喜びあったが、当の本人は記憶が混濁しているのか、表情は晴れない


「…女神様、俺は…」


 目が合った途端に溢れた深紅の発言を遮り、私は自分の謝罪を述べることにした


「深紅、私のせいで貴方には余計な苦労をかけてしまいました。もっときちんと粛清しておくべきでした。本当にご迷惑をおかけしてすみません。」


「そんな!謝らないで下さい!迷惑だなんて!!そんな風には思っていません。確かに、煩わしい思いもしました。ですがあの時自分は、白龍様を連れて行く事を止められなかった。罰を与えても良かったのに…貴方はお礼の言葉だけでなく加護まで下さいました。だけど、俺には不相応なモノなんじゃないかって…」


「確かに、そうかもしれません。」


「くっ」


「だからなんだと言うのです?不相応ならば、それに見合うだけの中身を作れば良いだけの事でわないですか?不相応だと思うなら相応になるようにすれば良い。貴方にはその努力ができると、力に溺れ、慢心することは無い、と思ったのでお渡ししました。…まさか、やらずに諦める方だとは思いませんでしたし?」


「っ!!もちろん!女神様に恥じぬように、皆に認められるように、励みます!」


 にやりと笑ってみせたら眩しい笑顔が返ってきた


 ふふふっ良かった!


「ところで、女神様はどうしてこちらに?なんで俺がピンチなのがわかったんですか?」


「青い髪の弟くんが教えてくれたんですよ」


「…青い?…もしかしてクラルスが?」


「そう、クラルスって言うんだ。随分と慕われてるんですね。」


「慕われてるって言うか、あいつ、1人なんです。両親も他界してて。よく弟達とも一緒に遊んでたんで、俺にとってはあいつも弟みたいなもんです。」


「あんなに小さいのによく1人で私のとこに来れたなと、感心してます。」


「チビで、泣き虫でよく虐められてたんですけど、意外と根性あるんです。」


 そう言った深紅の顔はすごく誇らしげだった




 ***




「デボラ達の事は女神様のお好きになさって下さい。魔水晶や魔道具などもどうぞお持ち帰り下さい。」


 場の雰囲気が和んだところでオカッパ君が私に紫の処遇を押し付けてきた


 まぁ奴らはもう処理済みだけどね


「いりませんそんなもの。大体めんどくさがらずに人間と交流して、売ったらいいじゃない?食料品と交換したり。孤児院の子たちも、人族なんかより体力も魔力も多いんだから外に出た方がよっぽど稼げるし、食べていけるんじゃないの?」


「下等種の施しなど受けられません!!」


 このオカッパ君も大概、頭が堅い


 こちらの考えは考慮せずに自分の要望だけを押してくるなんて…


「私からしたら貴方だって下等種よ。不敬なトカゲ。甘えないで。」


「そんな!我々は貴方のせいでこの様な事態になったというのに、何の情けもかけられぬと言うのか?!」


「イザーク!よさぬか!!」


 私のせい?


「紫のトカゲがそもそもの始まりだと思ってましたけど?お前たちが止めて入れば我が子が苦しむ事はなかったと思うけど、…これは私の思い違いかしら?」


「め、女神様、若さゆえの失言、誠に申し訳ない。この度はブレイスをお救い下さってありがとうございます。」


 再び凍りついた空気を消し去るように、老将は慌てて深々と頭を下げた


「この際だからハッキリ言うけど、お前は下等種、下等種と見下してる彼らのことをどのくらい知ってるの?鎖的なのは構わない。そういう所もあって良いと思う。全てを受け入れろとは言わない。だけど自分より上も下もいると認識して、そういうものもあると認めなさい。自分たちはどうしたらいいのか、何が最善なのか、みんなで考えて欲しい。1人の考えが全て正しい訳じゃ無い。考え方を1つに統一する必要はないけど、貴方の考えは余りにも浅慮ね。」


 現代日本の、貴族や武力と無関係な平和な生活を送っていた自分には到底理解しがたい統一思想


 勿論、日本にも政治的な問題は多々あったが、ここまで酷くなかったと思う


「そんなっ!!女神様!我々は長い年月の中で、人族に何度も裏切られてきました!軽々しくそのような事を仰らないで下さい!」


「人族は短命ですそれ故に浅慮なとこも多々あります。一部を知ったからと言ってそれが全部ではない。賢いあなた方ならお分かりになると思います。まぁ、理解する努力もせずに否定する方が楽ですけどね?先程言ったように、私にとっては人族も龍人族も大差ないのです。小さな雑草か根の太い雑草かぐらいの違いでしかない。雑草を全部刈ることはできますが、面倒でしょう?」


「なっ!!」


 まぁ極論だけど、オカッパくんは絶句してしまった


「下等種って自分より下ってことでしょ?自分より下なら何をしてもいい。それなら私が貴方達に何をしてもお前に文句を言われる筋合いはないわ。私はこの短い間で龍人族に2度も裏切られてるのですよ?自分は譲歩しないくせに、私には譲歩しろなど図々しいにも程がある。」


「そんな!」


「イザーク、女神様の仰ることも最もだ。儂らは少し頑固になっとったのかもしれん。イザークの考え方と他のもんの考え方は違う。共感する事はあっても押し付けてはいかんと儂も思う。」


「ですが…」


「子供らは自分の目で見て、自分で考えれば良い。それで自分で答えを見つけるしかない。もし騙されたり、裏切られそうになったら、その時は儂らが助けてやろう?まぁ、儂はブレイスならば大丈夫だと思う。」


「アースランド殿…」


 オカッパくんは色々と考えを巡らせている様だ


「おっちゃん、イザーク兄貴…俺、外を見に行きたい!イザーク兄貴が心配してくれてるのはわかる。でも俺、どうしても行きたいんだ!」


 私達の話を聞いてた深紅は話の合間にぶっ込んできた


「…一丁前に生意気言いやがって全く。女神様、私はまだ下等種、いえ、人族を信用することはできません。ですが、貴方のことは信用します。これから私の考えが変わるかはわかりませんが、知ることを放棄することはしない、っとだけ約束しましょう。」


「はい。ふふふっ十分です」


「兄貴!」


「ブレイス、どうせお前のことだ、言っても聞かないんでしょう?弟と妹は俺に任せておきさい。」


「兄貴!ありがとう!!」


「えいこら!抱きつくな!鬱陶しぃ!」


 良かった


 深紅は本当に、周りを明るく照らす


 アースランドさんはあまり偏見が無いようだしオカッパ君のことは任されるかな


「貴方は、外の世界へ行ったことがあるんですか?」


「儂にも昔、人族の友がおったんですよ。」


「そうでしたか。」


 ふと、疑問に思って聞いてみたら、照れながら答えてくれた。


 それともう1つ


「小さい子のお使いにしては遠すぎると思いますが、今回のことは大目に見ておきます。」


「流石、女神様。御明察ですな」


 老将はじゃれ合う2人を見て豪快に笑った




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