超ショートショート「魔法使いさん」
魔法使いさん 人類最後の魔法使い。貧乏生活中だか、あまり危機感が無い。
子供 お小遣いを貰ったので商店街を散策中。
私は魔法使いだ。千葉のとある商店街の最奥地で小さな雑貨店を営んでいる。今日の客は小学生くらいの子供が一人。退屈そうに家の商品を見ている。なかなか手強そうである。と言うのも、家の商品は大抵高価で複雑なのだ。高価で複雑な故に大人のリピーターすら居ない位だ。三日ぶりの客だ。なんとしてもなにか買わせたいところ。だが、子供にも扱える物はあっただろうか…。そもそもこんな調子で今月の家賃払えるだろうか…。なんてことを鉛筆をくわえながら考えていたら、子供が私に話しかけてきていた。「これなに?どうやって使うの?」持ってきたのは店頭の飾りとして置いておいた風車のようだ。今の子供は風車の使い方を知らないのだろうか?まあ、今日は風が無かったから仕方ないか。だが、実はこれはただの風車ではない。暇潰しに作ったとはいえ、魔法の能力を付与しておいた。いつでも手を抜かないのがプロの仕事だ。私は無駄につばの大きい帽子を取り、説明をする。「これは風おこし車。風が吹いている場所に置いておくと風を倍増して返してくる。」
私は風車に小さく息を吹き掛ける。風車は勢い良く回り、私は突風に目を細めた。
「用途は…わからない。なんせただの飾りで作っただけだしね。買うかい?」
風で滅茶苦茶になった髪を整えながら子供に聞く。子供は暫くなにかを悩んでいた。なにか言うべきか悩んでいるような…。私は買ってくれるのかと期待して、静かにレジの前の本の山を片付けた。
「あー。だから最近ここの路地、風が強くて通れなかったのか。」
思わず椅子から落ちそうになる。
「…」
三日間客が来ない訳だ…。
「ねーおねーさん。それでこれいくらなの?」
「…ただで持っていってくれ。店の前にあるやつも全部持っていってくれていい。」
子供が帰ったあと、私はひとしきり落ち込んで過ごした。その間客が一人も来なかったのは、幸運なのか不幸なのか…。なんて無意味な時間を過ごしていたのだろう…いや、人生なんて無意味さの連続なんだしそんなに落ち込むことない!と、よく分からない励ましを自分に送っていた。
お恥ずかしながら文章の仕事を目指しています。先はまだまだまだ遠いですが、一生懸命1歩ずつ頑張りたいと思います。アドバイス等をどしどし下さると助かります。
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毎日1話以上の投稿を目指していて、今日で5日目の投稿です。