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苦手な方はご注意ください。

御徒町樹里シリーズ

イケメン妖怪ハンターリックの冒険リターンズ4〜僕は本当は強いんだにゃん!の巻〜

作者: 神村 律子

 リックは古今無双のスケべな妖怪ハンターです。


 スケべな妖怪をハントするのではなく、妖怪ハンターのくせにスケべな奴だという意味です。


「妖怪ハンターなんて、みんなスケべだにゃん! 僕だけじゃないにゃん!」


 赤信号はみんなで渡れば誰も捕まらない的な某関西の一部の方々のような発想で地の文に切れるリックです。


 リックと美人幼妻の遊魔は、またある町に入り、妖怪退治の依頼を受けるために役所に行きました。


「おおお! ここはパーラダイスにゃん!」


 リックはよだれを垂らして喜びました。役所の女性達が皆美人でスタイルが良くて、しかも水着姿だったのです。


「遊魔、早く手続きして来てにゃん」


 リックはその中でも過激な水着姿の税務課の前から動こうとしません。


「リック様、まずは納税を済ませてくださいね」


 窓口の女性に言われて、


「はいにゃん」


 いつもは踏み倒したりとぼけて支払わないハンター税を納めました。


「そ、そんな事、した事ないにゃん!」


 事実を指摘した地の文に理不尽に切れるリックです。


 ハンター税とは、無免許の妖怪ハンターを取り締まるためにできた税制です。


 一応、ゴールド免許を持っているリックは、ハンター税は安価で、コーヒー一杯分です。


「お前様、行きましょう」


 税務課から離れようとしないリックの耳を掴んで引きずる遊魔です。


「イタタタタタッ!」


 リックは涙を零してしまいました。


(天国なお役所だったにゃんけど、様子がおかしいにゃん)


 スケべなリックでも、さすがに役所の様子が変なのは気づいたようです。


(窓口の女の子達、笑顔だったにゃんけど、涙を浮かべていたにゃん。あれは、妖術で無理やりやらされているんだにゃん)


 どうやら、リックよりスケべな妖怪が街を支配しているようです。


「お前様、退治を依頼された妖怪は、町外れの森にいるそうです」


 何も気づいていないらしい遊魔が笑顔全開で告げました。


「そうにゃんですか」


 リックは苦笑い全開で応じました。


(本当に退治しなくちゃいけないのは、役所の奥にいるにゃん)


 リックは思いましたが、町外れの妖怪の退治料が破格だったので、気づかないふりをしています。


 結局は、金が全てなリックです。


「その言い方、やめてほしいにゃん! 僕にだって、事情があるんだにゃん!」


 真実を解明したい地の文に切れるリックです。


「そうなんですかあ」


 それにも関わらず遊魔は笑顔全開です。


 


 しばらくして、リックと遊魔は町外れの森に着きました。


「この先に妖怪がいますよ」


 依頼書を見ながら、遊魔が言いました。


(でも、全然妖気が感じられないにゃん。感じるのは、悲しい波動にゃん)


 いつになく真面目にストーリー進行をするリックです。つまらないと思う地の文です。


「そういう事じゃないにゃん!」


 ふざけるのも大概にしておきたい地の文に切れるリックです。


「行くにゃん、遊魔」


「はい、お前様」


 二人は森の奥へと進みました。


 


 その頃、役所の奥にある町長の部屋では、二人の男が話していました。


「町長、うまくいきましたな。我らの邪魔をする者達を妖怪に仕立て上げて、ハンターに始末させる。最高の方法です」


 高速揉み手の名手のような男が言いました。


「その上、町中の美女達を役所に駆り出してハンターの目を曇らせる。どれ程の腕利きでも、あの状況ではまともな判断はできん」


 髪の毛の全てを頭頂部にまとめあげた奇妙な髪型の町長がニヤリとして言いました。


「そして、最終的には、ハンターも騙し討ちにして、その妖力を奪い取り、我らのものとする。そうすれば、高額な退治料も支払う必要はない。完璧だ」


 町長が酒を注いだグラスを掲げました。


「プントラ様に栄光あれ」


 揉み手をしていた男もグラスを掲げました。


「うまくやれよ、ベーア」


 プントラ町長は側近のベーアに命じ、酒を飲み干しました。


「仰せのままに」


 ベーアはニヤリとしました。




 リックと遊魔は、森の奥にある妖怪の住処と思われるような蔦の絡まるチャペルを発見しました。


 でも、ペ○ーさんは無関係です。学生さんも関わりがありません。


 もちろん、上州三日月村の人はもっと関わりがありません。


「お前様、ここですよ」


 遊魔が依頼書に書かれている絵を見せました。


(全然似ても似つかない絵にゃん)


 その絵のチャペルは、尖塔の先にガーゴイルが座っており、屋根の上にある十字架には逆さ磔にされた人がいます。


 でも、現実のチャペルは、ごくありふれたものでした。


「美術さんの仕事が間に合わなかったセットみたいだにゃん」


 如何にも芸能人風のコメントをするリックです。その時、窓の向こうを影が動きました。


「誰かいるにゃん」


 リックはチャペルのドアに駆け寄りました。


「お前様、危ないです!」


 遊魔の真空飛び膝蹴りが、屋根の上から落ちてきた岩からリックを守りました。


 リックは、チャペルの壁に激突してずり落ちました。


(岩の下敷きの方がマシだったかもしれないにゃん)


 涙ぐんで思うリックです。


(しくじったか)


 屋根の上から岩を落としたのは、プントラの側近のベーアでした。


「お前様、中に入りましょう」


 遊魔は気絶寸前のリックを引きずって、チャペルの中に入りました。


「お前様、誰かがあの部屋に隠れましたよ」


 遊魔が礼拝堂の奥にある小部屋を指差しました。階段の下には偽札の印刷工場があると思う地の文です。


「ロリコン伯爵は関係ないにゃん!」


 意味不明な推理を展開した地の文に切れるリックです。


「追いかけるにゃん、遊魔」


 リックと遊魔は誰かが隠れた小部屋に向かい、中に入りました。


「た、助けてください! 私達は妖怪ではありません!」


 そこにいたのは、リック好みの二人の少女でした。


「だから僕はロリコンじゃないにゃん!」


 性癖を捏造する地の文に涙ぐんで抗議するリックです。


 ああ、そうでした。貴方はオールラウンドプレーヤーでしたね。


「それも違うにゃん!」


 捏造の上塗りをした地の文に更に抗議するリックです。


「君達は異教徒にゃんね?」


 リックは如何にも名推理気取りで言いましたが、建物がチャペルなので、仏教徒ではないのは一目瞭然だと思う地の文です。


「そんな事をバラさないで欲しいにゃん!」


 細かい事が気になってしまう地の文に切れるリックです。少女のうち、姉と思われる方が、


「はい。父母が戦争で死んでしまって、ここまで逃げてきたのです。この建物も、町長が造ってくれました。私達はこの地に住みたいだけで、布教をするつもりはありません」


 震えながら言いました。リックは微笑んで、


「心配しなくていいにゃん。僕は君達を退治したりしないにゃん」


 その代わり、あんな事やそんな事をするかもしれないと思う地の文です。


「違うにゃん! そんな事、考えてないにゃん!」


 遊魔の目が怖いので、尋常ではない汗を掻きながら地の文に切れるリックです。


「町長は始めは親切でしたが、私がその正体を知ってしまってから、態度が変わりました。あの人は妖怪です。他にもここに逃げてきた同じ国の人達がいましたが、そのほとんどが町長に殺されてしまったんです」


 姉は泣き出してしまった妹を宥めながら言いました。


「大丈夫にゃん。僕は妖怪ハンターにゃん。町長を退治して、君達を助けるにゃん」


 リックは胸を張って告げました。


「ありがとうございます、おじさん」


 少女は全く悪気なく言いました。その言葉に引きつるリックです。


「ありがとう、おじちゃん」


 そして、妹が追い討ちをかけました。


「どう致しましてにゃん」


 ダメージが大きいリックです。何とか涙は堪えました。


「奥に隠れているにゃん。僕が戻ってくるまで」


 リックは二人の頭を撫でて言いました。そして、もうずっと手は洗わないと誓いました。


「そんな事思ってないにゃん!」


 深層心理を見抜いた地の文に動揺しながら切れるリックです。


 リックと遊魔は、町長一味を退治するために森を出ました。


 そして、役所までもう少しというところで、プントラとベーアが待っているのに出くわしました。


(気づかれたのかにゃん?)


 ニコニコして出迎えた二人に警戒するリックです。するとプントラが、


「さすが高名な妖怪ハンターの先生ですな。あっと言う間に妖怪を退治してくれたのですね?」


 ニヤリとして、森の方を見ました。


「え?」


 リックは嫌な予感がして、振り返りました。すると、森の奥の方から、黒煙が上がっているのが見えました。


「えええ!?」


 リックは仰天しました。


「あのおぞましい建物ごと妖怪を焼き殺してしまうとは、さすがです。素晴らしい!」


 ベーアが高速揉み手を繰り出して言いました。


(この気配、あの時、建物の中を動いた影?)


 リックはベーアがあの場にいた事を知りました。


「何て事をするにゃん!」


 リックは急いで森へと走りました。


「お前様?」


 状況がわからない遊魔は、リックを追いかけました。


「あのボンクラ共の始末もしろ」


 プントラがベーアに命じました。


「はい」


 ベーアはニヤリとして消えました。


 


 リックは今まで生きてきた中で一番速く走りました。岩崎○子もびっくりだと思う地の文です。


「あああ……」


 しかし、リックと遊魔が建物があった場所に着いた時には、すでに黒焦げになった柱が数本建っているだけでした。


「ごめん、ごめんにゃん……。僕が浅はかだったにゃん……。一緒に連れて行くべきだったにゃん!」


 リックは地面に膝を突き、両手で地面を殴りました。


「お前様……」


 遊魔はリックが泣いているので、もらい泣きをしました。


 めでたし、めでたし。


「鬼かー!」


 唐突に物語を終わらせようとした地の文に切れるリックです。


「許せないにゃん! 絶対に許せないにゃん!」


 リックは今まで生きてきた中で一番の怒りを感じていました。


「遊魔、これからする妖怪退治は、全然お金がもらえないにゃんけど、いいにゃんか?」


 リックが涙を拭って立ち上がり、遊魔を見ました。


「はい、お前様。遊魔はお前様と一緒にいられれば、それで満足です」


 遊魔も涙を拭って言いました。


「その前に……」


 リックは焼け跡に向き直り、手を合わせました。


(宗教が違うにゃんけど、許して欲しいにゃん)


 リックは歯を食いしばって涙をこらえつつ、某お師匠様直伝のお経を唱えました。


 


 そして、夜になりました。


 プントラとベーアは、プントラの邸に戻り、祝いの宴を催していました。


「あのハンター二人を取り逃がしたのは残念だったが、あのような腰抜けなど放っておいても大事ないだろう」


 結構酔いが回ったプントラが言いました。


「はい。聞けば、よくしくじっている間抜けなハンターのようです」


 こちらも酔っ払ってきたベーアがニヤケながら応じました。


 すると、あのテーマ曲が流れました。ここは好きな曲を妄想して欲しい地の文です。


「逃げていないにゃんよ、僕は」


 どこからか、リックの声が聞こえました。


「おのれ、どこにいる、ボンクラ!?」


 プントラが怒鳴り、正体を現しました。プントラは妖怪の中でも悪知恵の回る怒鳴瘻奴どなるどでした。


「曲者だ! 出会え!」


 怒鳴瘻奴が叫びました。するとわらわらと下っ端のやられ役が中庭に登場しました。


「相手にならないにゃん」


 リックの声が言いました。次の瞬間、遊魔の真空飛び膝蹴りとかかと落としの連続技で、あっと言う間にやられてしまうやられ役です。


「ウゲエ」


 それを見て、正体を現したベーアは、大物妖怪に腰巾着のようにくっついて回る烏曽疹うぞしんでした。


「お前達のやった事は、絶対に許せない事にゃん。成敗してやるにゃん」


 リックは屋根から飛び降りて、中庭に姿を現しました。


「ボンクラが俺達に勝てると思っているのか!?」


 怒鳴瘻奴が高笑いをしました。リックはフッと笑って、


「勝てるにゃん。僕は強いんだにゃん」


 指をボキボキと鳴らしました。


「やっちまえ!」


 怒鳴瘻奴は烏曽疹に命じました。


「ええ?」


 そんなあと思い、たじろぐ烏曽疹ですが、


「死ねえ!」


 ヤケクソになってリックに襲いかかりました。


「お前があの二人を焼き殺したにゃんね? それよりもっと熱い思いをさせてやるにゃん」


 リックの両手の指一本一本から炎が吹き上がりました。


「うへえ!」


 それを見て狼狽えて腰を抜かす烏曽疹ですが、


「死んでお詫びしてくるにゃん!」


 炎を烏曽疹に放ちました。


「ギヤアアアア!」


 烏曽疹は雄叫びをあげ、焼き尽くされました。


「お前は地獄に行くから、天国の二人にはお詫びできなかったにゃんね」


 リックはまたフッと笑いました。


 それを見ていた怒鳴瘻奴はこっそり逃げ出そうとしましたが、


「はあ!」


 遊魔が真空飛び膝蹴りで阻みました。怒鳴瘻奴は無様に中庭に転がりました。


「ヒイイ!」


 鼻血を垂らして顔を上げた怒鳴瘻奴は、リックが目の前にいるのを見て情けない悲鳴をあげました。


「た、助けてくれ、俺の側室を半分譲るから! 金も半分譲るから!」


 怒鳴瘻奴が泣きながら懇願すると、ちょっとだけ気持ちが揺らぐリックです。


「ゆ、揺らいでなんかいないにゃん!」


 本当は承知しそうになったのは内緒にしたいリックです。


「だから内緒にするにゃん!」


 結局バラしてしまう地の文に血の涙を流して切れるリックです。


「言いたい事はそれだけかにゃん?」


 リックは冷めた目で怒鳴瘻奴を見下ろしました。


「悪いのは俺じゃない! 人間共だ! 俺達の住処を奪って、好き勝手しやがって!」


 怒鳴瘻奴は目を真っ赤にして言い逃れをしました。


「聞こえないにゃん」


 リックは再び両手の指に炎を吹き出させて言いました。


「ヒイイイイイ!」


 怒鳴瘻奴の絶叫が業火の中に響き渡りました。リックは怒鳴瘻奴が燃え尽きるのを見届けると、遊魔と共に邸を出ました。


 


 そして、翌朝です。


 リックと遊魔は焼け跡に行き、二人の少女とその他に犠牲になった人達のために慰霊碑を建てました。


(迷わず成仏してくださいにゃん)


 リックと遊魔は手を合わせて祈りました。


(役所にもう一度行ってみたかったにゃんけど、遊魔が怖いからやめとくにゃん)


 少しだけ心残りがあるリックでした。


 


 めでたし、めでたし。

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― 新着の感想 ―
[一言] リックはやればできる子にゃん! プントラもベーアも倒したし、チープンもペンキーもウンジョンも敵じゃないにゃんよ! ところで「高速揉み手」ってのがどうしても想像できん (汗
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