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手紙

イケメンで高スペックな主人公、高坂勇介

しかし、センスはとてつもなく悪い

そんな、勇介は思いをよせる二つ歳上の先輩

宮水愛にラブレターを送ろうとするがここでセンスの悪さが発動し、気持ち悪いラブレターにしかならなかった。

そんな、しょぼくれてる勇介の下駄箱に一通の手紙が置いてあった。

ここから、始まる恋物語にこうご期待!

俺には好きな人がいる。なのに、なんだろうこの気持ちは。罪悪感にも似たこの言葉にできない気持ち。

「……くん……すけくん……勇介くん!」

「はっ!」

俺は目を覚ました。なんだったんだあの夢は……。

「おにーちゃん!朝だよ!起きてー!」

下から妹の千春の声が聞こえる。俺は体を起こし右手を顔に押し当てる。汗をかいて額に髪がくっついて気持ち悪い。とりあえずベッドから立ち上がり下へ降りる。洗面所へ行き顔を洗う。夏の暑い日には冷水で顔を洗うのが一番だ。

そして、ダイニングへと向かう。ドアを開けると、千春が既に朝食を半分ほど食べ終えていた。

「おはよ〜」

気だるそうに俺は千春に言いながら席に座る。

「遅いよ!お兄ちゃん!夏休みだからって夜更かしするから!」

「仕方ねーだろ。宿題っていう凶器を始末しないといけないんだから」

「何が凶器よ。そんな事より早く食べちゃって。千春、この後塾に行かないといけないから」

「大変だな、受験生は」

「何?嫌味!」

「まさか。頑張れよ」

「そんな事言われなくても頑張るわよ!」

そう言って、千春は牛乳を飲み干し席を立つ。

台所に食器をおき、そのまま玄関の方へと向かって靴を履き替えた千春は「いってきまーす」とだけ言って家を出て行った。

「ほんと、勉強なんてよくやるな」

自然と独り言がこぼれた。俺も去年は受験生だったけど、ここまで勉強を頑張った覚えはない。なぜなら、自慢な事に俺は頭はいいのだ。自分で言うのもなかなか危ない奴と思われるかもしれないが、本当にそうだから仕方ない。俺は過去最高得点で私立吉原高校に入学した。入学したのはいいが、目標もなく今に至る。夏休みだというのに大してやる事もない。宿題も昨日全て終わらせた。宿題は初日で終わらせるをモットーにしている。

朝食を食べ終えた俺は台所へ行き自分の食器と一緒に千春のも洗ってやる。たっく、これくらいやれよな、アイツ。

洗い終えると俺はリビングのソファーに腰掛け、テレビをつける。ニュースしかやってなかった。やっぱり、平日から面白い番組はやってないか。いつもなら、愛すべきハニー、愛先輩とデートするのだが、愛先輩も受験生の身。さすがに夏休みは勉強しなくちゃまずい。会いたいけど、今は我慢だ!勇介!受験が終わったら、たっぷりとイチャイチャするぞ!勇介!!

そんな事を頭の9.5割を使って考えているとフト俺は思った。

「そーいえば、去年の夏休みって何してたっけ……」

そう思った俺は過去の記憶を探り始めた。しかし、去年の夏休みの記憶だけが思い出せない。すると、俺はなぜか泣いていた。

「え……?」

俺は自分の目から出るモノに触って驚いた。

「なんで、泣いてんだ?俺……」

泣くことなんて全然ないのになんで。俺は不思議な感覚に陥っていた。体と心が繋がってないような感覚に。すると、やっぱり一時間の睡眠じゃ疲れは取れなかったのか眠気が急激に俺を襲い始めた。俺は涙を手で拭ってソファーで眠りについた。



―――一年前の夏―――

俺は親友の沢田佑の家に来ていた。もちろん勉強のため……の訳もなくそれ以上に大切な事を佑と話し合っていた。

「でさ、どーしたらいいと思うよ?佑」

「そんなの、自分で何とかしろ!俺は勉強しなくちゃダメなんだよ!」

「そんな事言わずにさ〜俺ら親友だろ!いや、神友だろ!」

「なんか親友のニュアンスが最初と違うことはさておき、お前の恋愛事情なんてしるかよ!」

「そんな〜佑く〜ん!助けてよ〜」

「なんで、のび太とドラえもんみたいな会話になってんだ!」

俺は今、佑に恋愛相談をしている。俺が受験予定の高校、私立吉原高校に在籍中の2つ上の先輩、宮水愛先輩に俺は入学したら告白しようとしている。その、カッコイイ告白を一緒に考えているのだが、佑は全然真剣に考えてくれない。なんて白状なヤツだ!鬼!悪魔!

「はぁ〜、どーすっかな」

「大体さ、お前ルックスも頭もいいんだからいいじゃねーか。そのまま思った事言えばさ」

俺がふてくされてると、佑がやっと相談に乗ってくれた。視線はノートに釘付けだけど。

「だからな、その思ってる事にってのをどう表現したらいいのか分かるねぇーんだよ!」

「じゃー、ラブレターとかは?」

「ラブレターね〜。そーすっかな」

「……え?嘘、マヂで?冗談のつもりだったんだけど」

「いや、ラブレターって良くね?」

「いやいやいや、男がラブレターはキモいぞ」

「ハッキリ言うな!それでも、俺はやるんだ!」

そう言って立ち上がり佑の部屋を後にする。そして、「じゃーな!佑!相談乗ってくれてサンキュー!」

とだけ残して佑の家から全速力で走って帰る。


家に着いた俺は自分の部屋へ行き引き出しを開け可愛いレターペーパーを取り出す。ここで、疑問に思うかもしれないが、これは俺のじゃないぞ!妹から、なんとなく気分で誕プレをあげようとして、候補の中にこれがあっただけで、結局はクマのやたらデカイぬいぐるみをあげた。それだけだからな!って俺は誰に弁明してんだよ。

「さて、何書こっかな〜〜〜〜」

・・・チィーン

「やべぇ!!書く事今思えば何もねぇーじゃねぇーか!!」

マヂで何してんだよ、俺。バカだろ!よし、とりあえず、思った事を書けばいいんだよな!

『僕はアナタに会った時からずっと好きでした。僕と迷惑でなければこれからも付き合って頂きたいです』

こんな感じか?んー、なんか頂きたいって堅苦しいな。付き合ってください、にするか。いやでも!

クッソー!ラブレターってこんなに難しいのか!

そして、おれは約四時間以上をこのラブレターに使ってしまった。

その結果、このようになった。

『はぁ〜い!アナタの将来のプリンスで〜す。これから二人でラブラブの世界を作って行こ〜ぜ!返事はいつでもいいよ〜子猫ちゃん♡』

……よし!完璧だろ、これ!文句ナシだろ!よし、明日早速学校で佑に見せてやろう!アイツもこれならきっと!


―翌日 放課後―

…………え〜〜〜!なんでだ〜〜!あんな完璧なラブレター他にはねぇーぞ!うわぁ〜!!

なんでだよ!佑!なんであんな事言うんだよ!

「こんなナルシストみたいな、いや、ナルシストそのものの自己紹介ラブレター、絶対に宮水先輩には送るなよ」

ってなんだよ!さすがに酷くないですか!はぁ〜もうどーしたらいいんだよ。なんか、この小説、前半はすごくカッコイイ感じで始まってんのに、途中から俺、キャラ崩壊起こしてんじゃねーか……

俺は明らかにしょぼくれながら下駄箱の扉を開けた。すると、一枚の手紙が置いてあった。

「ん?なんだ、これ?」

手に取ると、それは白い封筒だった。表面には

『異世界の住人さんへ』

と可愛らしい文字で書いてあった。しかし、裏面には何も書いてなかった。

「異世界の住人って……さすがに、これはイタすぎるだろ。……はっ!さては佑の仕業か!アイツ俺をどんだけバカにしてんだ!」

俺は周りを見渡してみるが、佑の気配どころか人の気配すら感じない。遠くで野球部の練習する声やサッカー部の叫び声ぐらいしか聞こえてはこなかった。

「ん?ホントに何なんだ」

俺は手紙事は気になるがさすがにここで手紙の事を考えるのは怪しすぎるから、とりあえず靴を履き替え中学校を後に帰路についた。

帰り道でいろいろ考えてはみたが、全然心当たりもなく、途中で佑に電話して確認してみたが、

『は?何言ってんだ、お前?本気で頭ヤっちまったのか?』

と、逆に心配されてしまう始末。とりあえず家に帰ってから封筒の中身を開ける事にしよう。

家に着いた俺は自分の部屋へと行き、封筒をできるだけ破らないようにゆっくりと開ける。

封筒の中から出てきたのは、半分に折られた数枚の紙と指輪だった。

「ん?指輪?」

俺は折られた手紙を開くと、文面はこう書いてあった。

『どうも、はじめまして。異世界の住人さん。って言ってもこれが本当に届いてるのかは、私には分かりません。私はアナタの世界とは対称のアナタから見ることも感じることもできない世界にいます。もし、この手紙がちゃんと届いたのなら、ぜひお返事を待ってます。あ、名前を言うのを忘れてました。私の名前は小鳥遊 愛です。読みはたかなし あいです。』

これが、一枚目の内容。二枚目にはこう書いてあった。

『送り方をここに書かせていただきます。その手紙のあった所に一緒にあった指輪と一緒に置いて下さい。』

…………は??????え????んんん????

「全く意味がわからん!俺のいる世界と対称の世界?見ることも感じることもできない?は?意味わかんねぇ〜」

そう言って俺は手紙を机にほって夕食にする事にした。下に降りると両親が珍しく帰宅していた。両親は医者と看護婦で基本家にはほとんど居ないため、俺と千春の二人でいることが多かった。

「ん?帰ってたんだ」

「あー、勇介、私達は夕食を食べたらまた仕事に行かなくちゃだけど、アンタどーする?今食べちゃう?」

「んー、そーするわ」

そう言って、俺は手早く食事を済ませた。ちなみに千春は熟で帰るのは夜遅くなる。そして、食器を片付け、シャワーだけ浴びて、自分の部屋へと向かう。

なんとなくだけど、気になるんだよな。この手紙。そう思って俺はあの手紙をもう一度手に取った。

「ま、どーせイタズラだろうけど、返事くらいは書いてやんねーとな」

引き出しを開け、普通の紙を取り出し、書き込んでいった。

『手紙貰ったよ。異世界ってどういう事だ?全く意味が分からないんだが?小鳥遊さんだっけ?なんか、悩みがあるなら聞くよ?』

よし、始まりはこんな感じかな?

『俺も悪い事は言わないからこんな事するのはやめときなよ?あ、一応名乗っておくよ。俺は、高坂勇介だ。』

よし、これでいいか。そして、俺は白い紙で封筒を作ってこの手紙と指輪を入れカバンの中へと詰め込む。

まったく、変だな。一体どーして、俺なんかの所にこんなモンを。そんな事を考えながら、俺はベットへ飛び込んで眠った。


―翌日の朝 下駄箱前―

朝、俺は自分の下駄箱の前に立っていた。戸を開き昨日書いた手紙を置く。まさか取りに来るとは思わないが一応置いておく。そして、俺は廊下に行こうとした時、自分がローファーのままでいる事に気付いた。下駄箱に戻りまた自分の靴箱の戸を開ける。そして、俺はその光景に愕然とした。

「な、なんで……?」

そこにあったのは、俺の上靴のみ。言葉を変えれば、あるべき物がなくなっていた。さっきちょっと目を離しただけなのに、俺の書いた手紙が消えていた。俺は驚きで肩に掛けていたカバンを落としてしまった。

すると、俺がカバンを掛けてた肩とは逆の右肩を誰かが触れてきた。

「え?」

振り向くと、後ろには佑が立っていた。

「おっーす。勇介」

「た、佑か?佑だよな!だって、こんな事ある訳ねぇ!佑なんだよな?」

俺は動揺と恐怖に少しテンションが変になっていた。両手を佑の両肩に置いて、佑に答えを催促する。しかし、佑からはマヂのキョトン顔を返された。

「何言ってんだ?お前」

「だ、だから、俺が書いた手紙だよ!お前が取ったんだろ!俺に見つからないように!」

「は?手紙?あー、昨日の宮水先輩へのラブレターか?そんなの俺が取るわけねーだろ」

「ちげぇーよ!俺がさっき自分の下駄箱に置いた手紙だよ!」

「……え?お、お前自分にラブレターを……本気で大丈夫か?」

この口調からして本当に佑ではなさそうだった。だったら、誰が一体なんのためにやってんだ。結局、昨日の疑問に戻っちまったじゃねーか。

「い、いや……もう、いいよ。悪かったな」

「あ、ああ」

「俺もう行くわ」

俺が靴を履き替えて廊下へと足を踏み入れた。すると、後ろから佑が

「おい、待てよ!」

「ん……?なんだよ?」

「同じクラスなんだから、一緒に行こーぜ」

「あー、そーだったな」

「いやいや、そこ忘れんなよ」

「はは……」

乾いた笑いが自然とこぼれた。それから、俺は今日1日中、手紙の事で頭が一杯になっていた。


―放課後―

俺は、HRが終わるとすぐに帰宅することにした。さすがに分からない事をいつまで考えていても仕方ないと開き直った。下駄箱まで行き、もしかしたらと少し期待したが、さすがに何も入ってはいなかった。

「さすがにねーよな」

そう思っていると後ろの方から

「何がないの?」

「え?うわぁ!!」

「ちょっと、そこまで驚く事ないじゃない!」

そこに立っていたのは、キレイな顔立ちと黒のサラサラロングヘアー。雰囲気としてはお姉さん感のある、色っぽい女性。そして、俺の告白予定の人。そう、私立吉原高校2年の宮水愛先輩だ。

「い、いえ、ちょっと考え事してて」

「でも、さっきねーよなって?あ!分かった!もしかして、ラブレター!」

「ち、違いましゅよ!」

……あ、噛んだ。

「違いましゅって何よ」

そう言って大爆笑する、愛先輩。そこまで、笑いますか?普通。

「愛先輩、笑いすぎですって。そんな事より、なんで中学校なんかに来てるんですか?」

そう話を変えようと、先輩について聞いてみた。すると、先輩は涙をキレイな指でそっと拭いて言う。

「私、少し先生と話したい事あったから」

話したいこと?先生と?俺なら絶対にありえない。先生と話すなんて、授業中だけで充分ですわ。

「話したい事?なんすか、それ?」

「それは、ひ、み、つ。ま、あんまり気にはしないでね、それじゃーね、勇介くん」

「は、はい……」

なんか、やっぱり変な人だな。でも……かわぇぇ〜のぉ〜〜。さすが、俺の惚れたエンジェ〜ル!今日も周りに天使達が見えましたよ!先輩!って早く帰ろ。さすがにここで変な顔してたら、通報されそーだ。主に佑とかが率先して通報しろとかゆーから!

多分、もうあんなイタズラはしねぇーだろーな。


―自宅前―

俺は朝と同じ、愕然としてしまった。なぜなら、俺の家のポストにまたしても白い封筒が入っていたからだ。表面には、前と同じように『異世界の住人さんへ』と書かれていて、その横に(2)と書いてあった。

「下駄箱の次は俺んちのポストってどんだけ、頑張るんだよ、このイタズラは……」

俺はその手紙を手に取ってそのまま自室へと向かった。手紙を今度もゆっくりと開け、中身を取り出す。中には前と同じように、手紙二枚と指輪だけだった。

一枚目には、

『異世界の住人さんへ。

まさかこの手紙が本当に届くなんて思いもしませんでした!とても嬉しいです!一応言っておきますけど、これはイタズラなんかじゃないです!本当に異世界の住人同士のやり取りです!その証拠に私は絶対にアナタの住んでる世界にはいません!どれだけ探してもです!ってさすがにアナタでは少し失礼かもしれませんね。なんと、お呼びしたらいいですか?高坂さん?私としては、勇介さんとお呼びしたいのですが、よろしいでしょうか?私はこれからも勇介さんと手紙のやり取りをしたいです。なので、これからもお付き合いしてくれますか?』

は?イタズラじゃないって?それは傑作だよ!ありえねぇだろ!そんな事を思いつつ俺はなんとなくだけどこう思い始めていた。

……案外、悪くねぇーな

って。

そして、二枚目には、

『手紙は勇介さんの周りでランダムに送られます。見つけたら、この手紙のあった場所に前と同じように置いてください』

なんだ、そりゃ?ランダムって、どこぞのゲーム設定だよ。ま、いっか。そうして、俺は引き出しからまたしても紙を取り出し書き始めた。

信じたくはなかった。でも、なんとなくだけど信じなくちゃいけないのかもって思ってる自分がいる。これが自分に届いたのだから、返すのがマナー。さすが、俺!優男だな!なんちゃって。


しかし、この出来事はこれからの物語のほんの始まりにしかすぎなかった。高坂勇介と小鳥遊愛の二人の手紙が二つの世界を変えるとはこの時の二人には分かるはずもなかった。



始まりから、主人公の心の変化を文で書いてみましたが、なかなか難しかったです。

これから②の方も頑張ってかくので、応援よろしくお願いします。

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