恩恵の発現
「そうです、そうやって自分の内側に意識を向けて……自分の小ささを醜さを自覚して下さい」
「はい…………って最後の関係ねーだろうが」
「いいからだまってやれ」
「怖っ」
と、今なにをしているのかと言うと、恩恵の確認をしておます。
何でカナリアがいるのかとか凄い気になるけど物凄く無視されました。で、話をそらされ……今に至る、ということです。
「完全再生………か」
そして、恩恵を確認した。姫様の説明の通りだと、俺はかなり凄いとものを持っていることになるが、実際にそうだった
「ほう、聞く限り有用そうな能力ですね……本人とは違って」
相変わらずカナリアさんは辛辣だ。
「あぁ、実際に凄い。どんな怪我や傷でも瞬間的に代償なしに直すらしい。こわいな」
「ほぅ、それは、凄いですね。歴代の勇者の方々も伝わっていることが真実ならあなたは頭一つ抜けたぐらいのものですね、本人とは違って」
この人はいちいち罵倒しないと生きていけないらしい……
そして、何か思い付いたようにふむふむと唸るとこう言った
「あなたをこの森にいる間だけ、私の盾に任命します。私を命がけで守りなさい。しかし、森を出たら私には、勿論姫様にもですが、その姿を見せないで下さい、分かりましたか?」
傲慢であることに加え、上から目線という調味料つき、生命体として恐れ入る
でもまぁ、
「この森にいるくらいは、守りますよ。女の子を見捨てるのは男としてどうかと思いますし、それに俺の能力は、それに適してるッぽいですしね……………」
この時は、格好いいと思っていた。こんなことが言える自分が。
でも、知らなかった。
この時は
この森が何ゆえに帰らずの森といわれてるのか
、どれだけ過酷な道のりなのかを………
⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐
もう何回目だろうか……
痛みには慣れた、というより、考えてる暇がなくなった。
目の前に一匹の化け物。
そう、たった一匹、されど一匹。
その口の周りは真っ赤な血でべっとりと濡れ、何かを待つようにベロをだしてハァハァいっている。
その姿は、おれの背を優に超える巨大、真っ白な体毛に被われた狼だ。
無くなっていた四肢がまたもや生える。
すると、また、襲いかかってきた。
食われる、生える、食われる、生える、食われる、生える、食われる、生える、食われる、生える、食われる、生える、食われる、生える、食われる
ずっとそれの繰り返し俺はただ食われるだけ。
足に化け物が食らいついているまま、そっと目を後ろに向けるとカナリアの姿がある。今は彼女だけが支えだ。彼女は、それを否定するだろうが、少なくとも彼女なしにここまでできなかった。
そんなことを考えているうちに、また次のローテーションだ。
今回は何回目でお腹いっぱいになってくれるのだろうか
⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐
ここに来て、残念なことが分かった。
カナリアに言わせれば「俺には属性魔法の才能が無い」らしい。
ただ、魔力だけは膨大にあるそうだ。これも、勇者の特性で、魔法関連の恩恵が無い限り属性魔法は使えないそうだ。
まぁ考えてみれば元の世界に魔法なんてものがないのだから、使える方が不思議だ。そう気づいてからは何とか開き直れた。
ただ、魔力に関しては少し変わってくるらしい
この世界の人間は皆魔力に関する臓器がある。そして、それを通す管も。
それぞれ、そのまま『魔臓』『魔管』と呼ばれ、無論異世界のおれたちにはそれがあるわけがないが、恩恵と同時に与えられているらしい。
故に、魔力は必ず多いというわけだ。なにせ神とかいうものにあたえられてるのだから。
魔臓にかんしては、心臓の魔力バージョンという説明で大丈夫だが、魔管は少し変わっていた。
魔管は、全身の血管に沿うようにあるというのだ。違うのは、斬られたところで血液のように漏れ出ることはないらしい
そもそも理論は不明だが、物理的にも魔法的にもこの二つは傷つけられないそうなのだ。流石ファンタジー。
そして、もう一つ。
異世界ものの特徴として、魔力の使い方を「血液を集めるように」とか「血液の流れを感じるように」と表現することがあるが、あれは怖い。
自律神経で操られている血液の流れを癇癖に感じ、あまつさえ操作まで出来るという。その時点で転移したそいつらは、ただの人間じゃない。
知る限りそんなことに出来そうなのは、どこかのFランク騎士と捕まえるのを拒否された犯罪者さんくらいのものだ。
よってここにちがいがある。
魔力の流れは感じられるのだ。故に操る子ともできる。
流れを早くして素早く動いたり
1点に集めて体を強化したりと
それを二つ合わせて、肉体強化の魔法になるらしい。
こういった純粋魔力のみを使った魔法は俺でもつかえるというわけだ。
言い伝えでは、その膨大な魔力を活かして、肉体強化だけで戦争を闘い抜いたり、大量に魔力を消費するオリジナル魔法で無双したりと、さすがは勇者だ。
カナリアさんは、決して笑うことはなかったし、むしろ四六時中嫌な顔をしていた。
もうこの時点で照れ隠しだとうい希望捨てていた。
初めの頃は、カナリアさんに教えてもらいながらなんとなく楽しくやっていた。
そう、最初は………………
事態が大きく変わったのは、森に来て四日目のことだ。
覚えているということは、それだけ危険がなかったなにもなかったということだ。
カナリアさんも
「話によると、この森には化け物が生息してはいるが、その数は少ないらしいです」
と言っていた。実際に合わなかったから気が抜けていたのだろう。
そいつが現れたのは本当に突然だった