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World crusher

「あ、宏海じゃん」

公園のブランコで一人揺れている宏海を見つけ、声をかける。

「公樹、何してんの?」

特にすることもなく、俺は当たり前のように宏海の隣のブランコに座った。

「なんかすることないかなー、つまんねー」

「じゃあブランコでどれだけ高く上がれるか勝負しよ」

宏海の急な提案に俺は対応して早速勝負を行う。

「始めるぜ、せーのっ」

床を思い切り蹴ってスタートする。最初から勢いをつけ、俺は大幅に差をつける。

「何でそんな上手いのよー!私そんないかないよー!」

だが後々宏海も追いついてきて同じ高さぐらいになった頃、異変に気付いた。

「やべ、ケツがずり落ち始めてる」

必死に尻を元の位置に戻そうとしたが、バランスを崩した俺の体は、宙を舞った。

「うわああああああっ!!」

初めて空をこんなに近くに見た。迫り来る地面は、俺にタックルするようだった。

死ぬ…そう思った時、俺は違う世界に飛んでしまった。


「うわっ」

起きると、目の前には爛れたショーケースが見えた。

肩が重い。立てない。何が起きてる?

「えっ」

隣に座っていたのは、一人の女の子だった。

「誰だ…?何処かで会ったか…?」

よく見ると、この女の子は頭を撃ち抜かれて死んでいるようだった。

「う…うわあっ!」

俺は気付いた。今俺は、死体の山の真ん中にいるみたいだ。

「だ、誰か…誰か助けて!」

もう、わからない。何もわからないよ。俺は誰で、ここはどこで、何すればいいのか…

「誰かいるのか?」

ドアを開ける音がした。そこにいたのは、警察官だった。警察官が電気をつけてくれたおかげで、俺の記憶が戻ってくる。

俺は、宮戸遊真。ここで死ぬはずだったんだ。頭を撃ち抜いて、だけど死んだのは隣にいた友人の栞だけで。

でもその世界なら、警察はいなかったはず。何かが原因で、元々の世界が崩れたのだろう。

「助けてください…」

俺は無事、警察に保護された。手に持っていた拳銃は警察によって処分され、家に帰ることができた。

家には、誰もいなかった。こんなの、慣れてるさ。

どうせ元から、「誰もいない」んだから。


家にたまたまあったカップラーメンを頬張り、4人用のテーブルからリモコンを操作する。

テレビには、国民的アニメがうつっていた。

「することねえなあ…」

独り言を呟き、することはないかと探し始める。

「あ、これでもやっか」

人狼ゲームのセットを出してきたが、これは1人じゃできない。

人生ゲームも、サッカーゲームも、液晶ゲームも、1人ではできない。

「つまんね…」

ごろっとソファーに寝転がってポテチをつまむ。部屋の電気は暗いままで、窓は全部閉められていた。

孤独感は、俺をずっと襲っていた。

「1人かよ」

俺はまた独り言を言う。今更1人とか気にしてんのかと突っ込みたくなる。

一生1人?学校も行かず?友達も作らず?

大人になっても1人?結婚もせず?同居もせず?

頭がこんがらがって、俺は気分転換に3階のベランダに出た。

「丁度いい高さだな…」

3階から飛び降りれば死ねる、と思った俺がいたことは事実だ。

傷だらけの体を無理に動かしてきた今までの辛い過去もおさらばして、また違う人生に飛べる。俺は楽しんでいたのだ、時空を自由に越えられる自分を。

失敗しても、またやり直せばいいなんて。

「つまんね…」

途方に暮れ夕方の乱層雲を見上げた俺は、どこかから音がしていることに気づく。

「電話か、だりぃな」

眠気眼をこじ開けて2階の固定電話のところへ行く。

プルルル、プルルルと鳴った電話はすぐに切れてしまう。

「かけ直さなきゃいけねーのかよ、めんどくせぇ」

ため息をつきながら渋々着信履歴を見た。

「学校からの電話か、なんだよ…」

急いでかけ直した。なにか重要な連絡だと困る。

「はいもしもし、宮戸です」

相手は図太い声した男。確かこの先生は村磯先生だったはず。

「村磯です、明日学校に来てください。大事なお知らせがあります。午前10時、体育館集合です、よろしくお願いします」

プツッ、と切れて、俺は充電器に電話を置く。

「学校なんて行きたかねぇや…」

そう言ってても結局行くのが俺なのだから、意外と偉い。

それにしてもなぜ、呼ばれたのだろう。俺は見当はついていた。

80%、いや90%、竜司についての話だろう。深く考える必要はない。

俺はまだ夕方だったが、小さなベッドに入った。

「おやすみなさい」誰かに、おやすみを言ってから。

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