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一つのバッドエンド

「助けて…いやぁぁ!」

家のドアを堅く閉め、窓も全て閉ざし密室にする。外からは悲鳴が次々に聞こえるが、パトカーの音は一切しない。

「ぐえぇっ」

違う方向からは呻き声。そうなっていても警察官は1人も出動しない。なぜなら、警察は占拠されたからだ。

もう、警察が動くことはない。犯罪を取り締まる役目を持ったヒーローは現れることがない。

「本当に、どうなってんだよ…」

プルルルル、プルルルル、…

後ろで電話がなっている。俺は玄関にロックがかかったことを確認し電話を取った。

「もしもし」

「もしもし、遊真くん!?おかしいの、私の家の周りで悲鳴が後を絶えないの!」

やはり、どこもかしこも犯罪だらけ。人が何人死んだか、電車の中で痴漢や暴力行為が何件起きたか。もう救われることのない世界を、人類は目の当たりにしている。

「俺のところもだ。だけど家にいたって何も始まらない、今からお前の家に行く。待ってろ。」

そうだ。俺にもできることがある。多少のリスクなんて考えず、前に突き進むしかない。

少しなら、世界を変えられるかもしれない。

俺は雨の降り始めた街中へ出た。


「待てやクソガキ!」

こうなることはわかっていたが、俺はヤンキー集団に目をつけられて逃げている。

「黙っとけジジイ共!」

足の速さなら楽勝で勝てる。あとは死角を探してスッと入り込んでしまえばこちらの勝ちだ。

全速力で俺は閉店した指輪屋に入った。

10分が経つが、誰もやってこない。上手く撒いたようだ。

「遊真、こっちに来て」

俺は驚いた。誰かいるのか、と思って声のした方向を向くが、誰もいない。

誰もいないか確かめに指輪が入っていたであろうショーケースを探る。すると、新品のようにピカピカの拳銃が出てきた。

声の主は、俺に拳銃を取って戦えと言いたかったのだろう。

「ここかクソガキ!もう逃がさねぇぞ!」

ヤンキー集団が自動ドアを開けた時、俺は反射的に銃を構えた。

「なんだそりゃ?」

「おもちゃの銃で勝てると思ったか?」

わっはっはっと笑っている。そうしていられるのも今のうちだ、と言わんばかりに俺は引き金を引いた。

バン、と音がして、1人の脳天を貫いた。

「お、おい、パチモンじゃねぇのか?」

「本物だと?ふざけるなぁ!」

突進してきた奴にも狙いを定めて今度は右胸を撃った。

「んだよ…本物の銃弾じゃねぇか…」

倒れた2人を見て集団は一気に減り、リーダー格のような奴が残っていた。

「よくも俺の仲間を…てめぇみてえなキチ○イは俺が」

言い終わらないうちに俺はバキュンと一発額に命中させ、リーダーは倒れた。

「そろそろ終わりだな」

自分の死期を悟り雨の降る街をひたすら走った。栞の家まで、とにかく走った。

「栞!待っててくれ!」

悲鳴すら聞こえなくなった閑静な住宅街で叫んだ。悲痛の叫びは、どこまで届くのだろうか。神は、俺を助けてくれるだろうか。

「うがっ」

通りすがりに殴られても、蹴られても、俺は止まらなかった。

もうすぐで栞の家というところで、おっさん5人組に絡まれた。

「ボロボロじゃねぇか、やっちまえぇ!」

おっさん達は解放された欲求にただ動かされてるだけのようだった。俺はそんな奴らに拷問を受けた。

拷問の最中に右腕の骨が砕け、足首は両足とも捻った。

目は片方が開かなくなるまで殴られた。

「もう無理だな、行こうぜ」

おっさん5人組は俺を半分死んだような状態にしてから去っていった。水たまりに顔をつけて、俺は呼んだ。

「しおり…ぃ…」

ついに目の前がぼやけ始める。左目だけを頼りに栞の家に這いつくばっていく。玄関に着いた頃には、目が自然に閉じかけていた。

「もう、少し…」

ドアの取っ手に手を掛け、最後の力でこじ開ける。

「しお、り、今、着いた、ぞぉ…」

開けた瞬間、目の前に栞が倒れてきた。

「遊真くん…?私、もう死んじゃう…」

栞の左目には木工用のキリが刺さっている。ドクドクと、赤黒い血を噴き出している。

「しおり、おそくなって、ごめんな…」

「大丈夫、遊真くんがいれば、私は安心…」

俺は決意した。残り数分で動きを止める、壊れかけの脳みそで。

「しおり、おまえをたすけたかったよ…」

「私はいいの…もう、死ぬから」

栞と俺の気持ちがシンクロしたような気がして、俺は拳銃を自分の側頭部に突き付けた。

「終わるんだ…ついに、この世界が…」

栞は返事をしなくなった。それを確認し俺はゆっくりと栞を抱き寄せ、引き金を静かに引いた。

栞の安らかに眠る表情を、頭に焼き付けて。

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