探していた「真実」
「清水美与子です!よろしくお願いします!」巡り巡って、やっとこの時が来た。ありがとう、神様。
「よろしくね!」
たまたま隣になった俺たちは、授業中も喋り続けていた。先生に怒られることもあったけど、楽しかった。今までのことを全て忘れられるくらい、楽しかった。
疲れたけど、辛かったけど、俺はもう、すべてをやり終えたんだ。
あとは、一つだけ…「それ」さえ終われば…
小2の、夏。
俺と美与子の、「分岐点」。
俺らは居間でくつろいでいた。数々の人生の記憶を残しこの世界にやってきた俺は、覚えている。
あと、1分もしないうちに来る!
ガソリンとライターを家の倉庫から用意し、終わらせる準備は出来た。
あいつが来れば、何もかも…
ガチャガチャとドアノブを回す音が聞こえる。決着が、つくのだ。
「ただいま、遊真」
「終われぇ!」
ガソリンを玄関に振りまき、ライターの準備をする。
「死ねぇぇぇ!」
衝動的に、心のままに、俺は動いた。
「なっ、何をするんだ遊真!俺はただ…」
ライターのスイッチを、力づくで入れた。
お前のせいだ、お前のせいだ、お前のせいだ、お前のせいだ、お前のせいだ………
「お前のせいで、俺は苦労してきたんだ!美与子を殺したのは、お前なんだ!仇を取る!違う世界の、美与子の分!」
キラリと光るライターの火を、ドロドロのガソリンに近づけていく。
「やっ…やめろっ…遊真…俺も同じだったのに!」
意味不明なことを言い出した父親が、床に膝をついた。
「遊真…たくさんの人生を渡ってきて、辛かったんだろう?俺が悪かった!父さんが悪かった!俺が殺したから全てが始まってしまったんだ!そんなことはわかってる。だけど、美与子ちゃんが………俺の遊真を奪っていきそうで!寂しかっただけなんだよ!母さんがさっさと死んで…俺は1人でお前を育てて…辛くて辛くて、冷たい態度もとってしまったけど…許してくれ!俺は、本当に…」
一言も、耳に入らなかった。自分の手は、動くことをやめなかった。
「死ね!」
「うわああああ!」
燃え盛る炎の中で、父親は叫んだ。鮮明に、聞こえた。
「遊真、本当に、すまなかった!」
失ったものは、2度と取り戻すことはできなかった。
父親の消えそうな声が、俺の心を、一晩中暴れ回っていた。
----あれから、何日経ったか。
自分のいいように進んでしまった世界は、もう閉じようとしていた。
焦げた肉の塊と、溶けた眼球が、俺を呼んでいる。
「お前が、悪いのに」
地獄から、そう叫んでいる気がした。
「お前は、最低の人殺しは、死ぬべきだ」
これが、俺の思っていた未来なのだ。今までしてきたことは、ここで実ったのだ。
一番の犯罪者は、美与子を殺した父親でも、俺を裏切った美与子でもなく、
…俺だったんだ。
人気の消えた廃屋で、俺は決意した。
本当の終わりに、達したんだ。
大切な人は、1人残らず消えてしまったから。
神様、ごめんなさい。僕が生まれた事実を、全て消してください。
世界そのものを、偽ってください。
それが、最後の、願いです。
「堕ろしましょう、あなたの身のためにも」
1人の命が、今消えようとしていた。産んだら、負担により母親が死んでしまう可能性があったからだ。
「これでよかったんだな、母さん」
「うん。これでいいの。」
「ごめんね、遊真。」




