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思い通りの未来へ

「きょうからこのようちえんにきますみやとですよろしくおねがいします」

幼稚園に入った俺は、慣れない言葉を使って知的な自己紹介をした、つもりだ。

「えらいね、ちゃんとできたね」

中学生や高校生を経験してきた俺からしたらバカにされてるようなもんだったけど、幼稚園児がそこまで考えるはずがない。

「やったー」

俺はももぐみの一員になった。ももぐみのみんなは大歓迎してくれた。

「よろちくー!」

「やっほー」

何を言ってるかわからない子たちが騒ぎ出して収拾がつかなくなったようで先生がその場の空気を凍らす。

「うるさい」

どっちかというとスパルタ系の幼稚園かな、ここは。

「今日はお絵かきをしましょうね」

お絵かきのテーマは「ライオン」。一体この先生は幼稚園児たちに何を書かせようというのか。

「でーきたー!」

開始から1分もかからないうちに絵を完成させた子がいた。先生が完成した絵を見ると、「なにこれ…」と困ったように呟いていた。

白い紙に描かれていたのは、ライオンには似ても似つかない犬のような絵。てかこれ、犬じゃん…

「できましたせんせい」俺も描き終わる。自分の絵のセンスはひどいが頑張ったつもりだ。

「あ、えーっと、がんばったね」先生は完全に困惑。確かに俺の描いた絵はひどいけど、こんなもんじゃないかね、幼稚園児は。

大きく描かれた、ライオンではなく、はなまる。頭を描こうとしたつもりだったと思う。

ライオンの常識を覆したかもしれないな…

「お弁当の時間ですよー」

キャー!と叫ぶ子供たちは一斉にちっちゃいお弁当を出して、息が全く合ってない「いただきます」をした。

そしてガツガツと一気に食べる。この子たちが求めるのは遊ぶ時間なので、お弁当はそれに進む過程のようなものなのだろう。

「あそびにいこー!」

外のブランコに駆け出してく子供たちと、お弁当をゆっくり食べる子供たち。はっきりとここで将来がわかるようなものだ。ちなみに俺はブランコに駆け出していった。将来が心配だ。

そんな感じで同じような日々が続いて、いつの間にか卒園式を迎えていた。

父親も母親も出席した、新鮮な卒園式だった。


小学生への準備のシーズン、春休みがやってきた。いきなりだったが買い物に連れて行かれ、ランドセルを選んだ。

俺は咄嗟に、青いランドセルを手に取った。俺の好きな色だったからだ。

「小学校楽しみ?」

「うん、楽しみ!」

ニコニコしながら答えた。あの惨劇は起こらないとわかっていた。美与子と会える小学校は、俺にとっては運命の場所、のようなものなのだ。

「楽しいといいね、小学校」


「起きてー遊真」

今日は…始業式だ。ずっと待っていた。同じことの繰り返しだったけど、今その無限ループを終わらすのだ。

「行くー!」

無邪気に朝っぱらから元気な自分に笑ってしまう。そのくらい小学校が楽しみだったのだろう。

「いってきます!」雪と無縁の街で、太陽を燦々と浴びて、俺は出発した。

未来が、いい方向へ変わっているといいな。

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