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07 なんだ唯のイケボか…

泣き喚いた自分はなんとか馬に乗った化け物から逃げようとマーテルの手の中で暴れた。

馬から降り、徐々に近づいてくるその醜い顔をした豚人(オーク)に驚いたのか周囲のメイドたちは直立不動で動けないでいるようだった。


(ここで死んだらせっかく転生した意味が無くなる!)


必死に暴れ泣き喚いている自分を母マーテルはいつも以上に慈悲深い表情で自分をなだめようとしていた。

豚人はついに門まで辿り着き馬をおりてこちらに歩いてきた。

ってか、おい門番止めろよ。何頭を下げてんだよ。

お前達には目の前にいる豚人が見えないのか。


ただ、豚人は淀みない足取りでこちらに向かって歩いてきた。

ぎゃー、犯される~。

このとき自分は前世で友人から借りた人妻が豚人に襲われるという内容のエロ同人誌を思い出していた。

異種姦はムリなんだ、すまない。

ただし獣耳やエルフ耳は除くだ、分かったな。

私は、あまりの恐怖故か思考が明後日の方角を向いてしまい、その上泣き疲れたのかその場で意識を手放すようにパタリと眠ってしまった。




再び目を覚ますとそこにはいつもの天井があった。

ハロー、愛しの天井よ。

今日こそこの天井が愛おしく思えた日は他にないだろう。

今、自分がここにいるということはおそらくあの化け物に殺されずに戻ってこれたということだと思う。

あー、良かった、良かった。



だけど、父親は結局どうしたんだろう。

今日帰ってくる予定だっただろうに…。

もしかして、自分が今こうして生きているのは、父親が帰ってきて豚人をやっつけてくれたからかもしれない。

さすがマイ・パピー、やるな!

ざまぁみやがれ、豚やろう、ハハ。



その時、部屋の扉が開く音がした。

チラっと身体を横にして扉の方に向けると母と…その後ろには先ほどの豚人がいた。


また、泣き出しそうになったが私はそこであることに気が付いた。

うぅわぁ、何で生きているんだよ。

ギャー、殺されるっていうか母上助けてー。

否、落ち着け自分。

ここは落ち着いて情報収集をしよう。


冷静になって豚人のほうをみてみるとなんと、その豚人、服を着ていたのだ。

そうまるでいかにも貴族が着そうな煌びやかな服を身に着けていたのだ。

自分は、胸の中に走る動揺を押さえ込みこの状況を理解しようと努力した。


貴族が着そうな服、母との仲睦まじげな様子、今日は父親が帰ってくる日。

なによりマーテルのあのとろけきったような顔、そうあれは雌の顔だ!

まさか、そうだとでも言うつもりなのか。

え、そんなの嫌だよ。


その時の自分の心情を知ってか知らずか、母は自分に近づいてきて無常にもある言葉を言い放った。

「ディース、この人があなたのパパよ」

えええええぇぇぇぇぇぇ、やっぱりかよ。

母は自分にとってある種の死刑宣告をくだした。

え?これなんのドッキリですかコレ、え?

こんなデブで化け物フェイスが父親とか嫌だよ自分、絶対。

だって、将来自分もこうなる可能性だってあるんだぜ。

そもそもマーテルはなんでこんな奴と結婚したんだよ。

ありえねーし、バカじゃねぇの?!


自分は己にとってあまりにも非情な事実に再び泣き出してしまっていた。

そのとき件の男はそのおどろおどろしい顔をこちらに向け口を開いた。


「私はお前のパパであるミランドロだが…やっぱり私の顔は怖いか?」


ミランドロは、慎重さと緊張が合わさったやや戸惑いを含んだなんともいえない様子で私に語りかけてきた。

だが、その声は聞く者を虜にする独特の響きを持っていた。

そして、自分は気づいてしまった。


あっ。なんだ唯のイケボか。


その瞬間自分の涙は止まり、初めて見る父に向けてぎこちないながらも漸く笑顔を向けることができた。



ベタな話を回避しようとしたら、やっぱりベタな話になってしまった気がする…


まぁ、ベタな話には先人の魂やあつい伝統などが合わさったものなので別にいいかな。

やっぱりベタはなんだかんだでいいのですよ

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