06 オーク襲来
主人公は残り7、8話はまともに話さない予定です、赤ちゃんですから…
今日、ようやく父親に会えるらしい。
本来ならテンションが上がるべき所なのだろうがここ数日の母であるマーテルの様子が酷すぎて自分はすこし冷めていた。
だって、ここ最近朝から晩まで父親であるランドの自慢話をしてくるんだぜ。
どこが素敵だとか、ランドとマーテルのラブラブ談、俗に言うのろけ話を延々とされてみろ。
上がっていたテンションもそりゃ下がるよ。
そもそも赤ん坊にそんな話するなよと思う。
話しても意味を理解できないだろうし、たとえ理解できたとしても教育によくないだろ。
だけど、同じ話を何度も繰り返して話してくれるからだいぶマーテルの話している言葉を覚えることができたのは僥倖というほかないのだけどな…。
分からない単語の意味はフランに聞けば教えてくれるしそこらへん抜かりは無いぜ。
それで、その話で分かったことなのでけれど…。
まず、この家は「スクエイル家」という子爵の位をもつ地方に領地を持つ貴族らしい。
400年ほど前に武で功績をたて貴族入りし、その後何年か後に王家からこの土地「アルスタス」に封ぜられたそうだ。
本来この土地は北のほうにある森から魔物が出てくるのを防ぐための土地だそうだ。
そこで、武の家系である「スクエイル家」がその防波堤として派遣されたらしい。
それ故ここの土地は危険であり人口が少なく、結果としてその土地にいるスクエイル家は貧乏貴族だったそうだ。
しかし、当代のスクエイル家当主であるランドが己の手腕でもってアルスタスをもりあげたそうだ。
そのため、住民達からの信頼は厚くとてもよい領主である。
そのうえ、政治ができるだけでなく武にも秀でておりなんと『幻剣のランド』という二つ名まであるらしい。
マーテルと結婚する前はどうやら冒険者として己を鍛えていたらしい。
なんか、話を聞いていると本当にかっこいいな。
特に、二つ名とか自分も将来欲しいな、憧れるわ。
話を聞いているとどうやらマーテルも冒険者をやっていたらしい。
おそらくこの聖母のように慈悲深い感じのする母上のことだから俗に言う僧侶的立ち位置でそれこそ『純潔の聖母』などと呼ばれていたのだろう。
さすがだぜ。
どこからか「純潔で聖母とか矛盾乙」とか言われそうだが、逆に聖母なのに純潔って興奮しないか?
しかも、イエスの母であるマリアだって処女懐妊らしいからおかしいことではないと思うぞ。
あれ、マーテルが聖母なら自分は救世主や聖人ってところか。
オレスゲーな。
それで、父親の話に戻るが本来は一年ごとに王都「ベルクハイネ」と「アルスタス」を行き来するそうだが今回自分が生まれたので半年ぶりぐらいに帰ってくるらしい。
それを朝からマーテルに抱えられた自分はマーテルとお供のメイド数名はこの町?の門の前で父の帰りをいまかいまかと待ち続けていた。
待ち遠しいのは分かるけど、だからって長時間外にいるのは赤ん坊の健康には悪いのではないだろうかと思いながらも、父を待つ母はいつも以上に機嫌がよくまるで恋する少女のようであった。
そんなマーテルの様子を見るのも悪くはないかなと思いつつ自分もおとなしくして父に会えるのを楽しみに待っていた。
門の前で待っていると前方から馬の蹄の音がした。
父親に会えるのかと思い、頭を門の方に向けて目を細めて前方から走って来る馬に乗った誰かを見ることにした。
化け物がいた。
前方から来る馬に乗ったそれは豚のように肥え太り、それに負けないくらい顔は醜悪で顔は豚面であった。
(豚人だ、豚人の襲撃だ!!)
自分はそのあまりの恐怖に羞恥を忘れ大声で泣き喚いてしまった。