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02 妖精の加護

『目を開けるとそこには見知らぬ天上があった。』

なんて事を自分が経験するとは思ってもいなかった。


それにしても恥ずかしかった。

転生するのだから赤ん坊になる。

これはちゃんと分かっていた。

だからこそ、生まれたときに自分の心の師匠で偉大なる御方、シッダールタ先生の真似をしたんだ。

なのに結果はあの有り様だ。


まさか言葉をうまく発声できないとは……。

おそらく声帯やそれに準ずる諸々の器官が完成していないのだろう。

そんな簡単なことに気付かなかったなんて。

私ってホントバカ。

心の師匠ができたからって自分にもできるって考えたのは、かなり傲慢だったな。




アレ?でも、おかしいなぁ。

その理論で考えると目がはっきり見えるというのも少し違和感を覚えるな。

それに、心なしか生まれた直後より身体を動かすのがスムーズにできる気がする。

事実、右手を開いたり閉じたりが多少違和感はあるものの無理なくできる。

さっきはできなかった右手の人差し指を天にかかげるなんてこともできる。


自分が寝ている間に何かあったのだろうか。

それとも赤ちゃんてこんなものなんだろうか。

まず、何をするにしても情報が必要だな。

初めに股下を見てみる。

うん、しっかりと象さんがある、大丈夫だ。

これが無いと転生した意味が実質ないからな、アハッ。



そんな馬鹿なことしてないでまじめに情報を集めよう。

そこで周りを見渡してみると、布団、机、あれは木製の窓?、後、自分の顔を覗く女?がいた。

って、人がいたのか、気づかなかったぜ。


顔は童顔で身長は……基準がないから分からない。

髪の色はエメラルドグリーンってかんじだな。

ただ、中性的な顔立ちをしている。

まさか噂に聞くところの男の娘か?!


こういう時はアレだな。

何かこっちからアプローチして相手の反応を探るのがいいだろう。

では、小手調べに声を出してみよう。

どうせ、こっちの言おうとしている事は分からないだろうし、適当に何か言えば何か返して来るだろう。


「アでぁダッだアぎゃーギャあーあ(何、こっちじろじろ見てんだよ)」

相手は少し驚きどこか怯えた表情をしたが、その後顔を下向きにしてまるでこっちを見ないようにしているように感じられた。


この反応は、少し予想外だな。

普通、生まれたばかりの赤ん坊が泣くでもなく声を出したのなら、慌てたり何か対処するのだろうがコイツは唯下を向いただけだ。

あっ。まさか自分の言葉を理解したというのか?!

そんなことはありえるのか。

否、ここはそれこそ剣と魔法の世界かもしれない。

ならもう一度話しかけてみるのも手かもしれない。

とりあえず試してみるか。


「オデェででーで、アだぁダだだーダえードォ(それより名前を名乗ったらどうだ)」

彼女は一瞬ピクッとした。

そして躊躇するように顔を上げてこっちを見た後、頭を急に下げた。

(すっす、すみません。名前はフランチェスカです。)

(なっ。コイツ直接脳内に?!)

(すみません、勝手に精霊語(スピリチュアル・ランゲージ)で話してしまって)


は?精霊語だと、念話の類いか?良く分からないが自分の心の中を読まれているとしたらやっかいだ。

否、さすがにそれはないか。

読心術なら自分はフランチェスカ?の考えを読み取ることは不可能だろうしコイツは、確かに精霊語だと言った。

それに意思を伝えたときと受け取る時に微妙な違和感を感じた。

おそらくだがそれが、精霊語なのだと思う。


しかし、どうもさっきからこのフランチェスカというやつが何故か自分にびくついているようだ。

舐められないように気持ち強めにしていたけどそのせいか?

なら、少し優しく接してみることにしよう。

もちろん会話の主導権はこちらが握らせてもらうけどね。


(大丈夫だよ。だけど僕は赤ちゃんだからね、教えて欲しいことがたくさんあるんだよ)

(賢者様が知らないことで私に答えられる事があるか分かりませんが答えられる範囲なら是非に)

(けんじゃさま?自分は賢者はおろか魔法使いでもないのだが…)

(え?)

(え?ってなんだよ今の。自分、そんなに童貞臭いですか?確かに童貞のまま生まれ変わりましたけどそれは若かったからで、30歳過ぎても童貞でいられる猛者ではありませんよ。自分で言うのもなんですが、自分の性格からいって29歳最後の日に童貞を捨てちゃって魔法使いには是が非でもなろうとしないタイプだと思うんですよ)

(どっど、ど童貞っていきなりなんですか!)

(え?あっ)


そうか、この世界は剣と魔法である可能性が高いのか。

なら本物の魔法使いや、賢者が実在していてもおかしくない。

どうして自分を賢者と誤解したのかは分からないが、現世の魔法使い=童貞という図式はこの世界では成り立たないまたは、一般的ではない可能性が高いな。


(すまない、すこし狼狽していたようだ。で、聞きたいことがあるのだがいいか)

(あ、はい)

(お前はフランチェスカという精霊であっているか?)

(精霊というか妖精です)


ふむ、今度は妖精と来たか。

精霊語と言っていたから精霊だと思っていたんだがな…。

正直、妖精と精霊の違いは分からないがそれは追々聞いていけばよいことかな。


(フランチェスカ、なぜ私を賢者と称した?自分で言うのもアレだがどこからどうみても私はただの赤ん坊ではないか)

(いえ、あの転生者ですよね。ということは、元は名だたる大賢者様だったのではないかと考えたのですが)

(っ!)


転生者とばれているのか。しかし、これは予想外だな。

確かに生まれたばかりなのに念話のようなもので意思の疎通ができるとはいえ、まさか言い当てられるとは思わなかった。


(大賢者だったら転生者になれるのか?)

(絶対とは言えませんが、魔法を極めた者ならできてもおかしくないと思いましたので。ということは、賢者様ではないのですか)

(あぁ、普通の一般人で死んで生き返ったらこうなってた)

(ス、すごいですね。普通死んで魂が肉体から剥がれ落ちると一度魂は徐々に磨り潰されて細かく分解されていくのですが、すごく強靭な魂の持ち主なのですね。それに生まれ変わっての第一声で世の中に覇を唱えるなんて…)

(世の中に覇を唱えるってどういうことだ?)

(あー、私が加護を与える条件ですがそれが世の中に己の意思を持って覇を唱えるというものなんですよ)


おそらく誕生したときの「天上天下・唯我独尊」というのが世の中に覇を唱えたと認識されたのだろうな。

それより今聞き捨てならないことをいわなかったか。


(加護?まさか自分にもそれが付いているのか?)

(はい、私の加護があります。)


もう、こっからは質問攻めですよ。

舐められないようにするために本来は一つ一つ慎重に吐かせるのがいいのだろうけども、なんかチート臭のするものを前に冷静でいられようか、いやいられない。

ということで、今の自分はテンションMAXですよ。



どうやら加護というのは与える妖精ごとで異なっており、ある特殊な事を行うと得られるらしい。

そして与えられた者は、特殊技能(ユニークスキル)と身体能力またそれに準ずる物にプラス効果があるらしい。

俗に言うステータス補正だな。

そして、自分には特殊技能がなんと三つもあるらしい。

一つの加護に複数の特殊技能があることは珍しいもとい、すごいことらしくさっきまでのビクついた様子からは考えられないほど誇らしげに言っていた。

正直その様子は若干うざかったが、その後の彼女の発言にそんな感情はどこかにふっとんでいってしまった。


(ただし、その三つの特殊技能の詳細についてお答えすることはできません)


(は?)


あまりの発言にしばし呆然としてしまった。





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