佐倉楓を探して 4
「と、いうわけです。二ヶ月ほど前、誰にも姿を見せていなかった楓さんが現れ、山賊を倒してどこかに去っていったようです」
「はぁー、ちゃんと生きててくれたんすねぇ。あっし的に、割とそれだけでも満足感がありまさぁ」
「うむ。一人で旅立ったと知った時は割と怒髪天だったが、生きてるなら良しとしよう」
ティフさんとメアさんが、そう口々に言う。
確かに、生きているだけでも割と満足だった。
しかし、随分とこの家も広くなってしまったものだ。
あれだけの人数がいたというのに、気がつけばここに住まう者はたったの三人。
本業に専念する、調べることがあるなど、諸々の理由はあるものの、あれほど騒がしかった家内も、今では驚くほど静かになっていた。
「……しかし、ほんっとに長かったっすね。いくら探しても情報の一つすら出てこなかったのに、まさか山賊なんかから出てくるとはねぇー。拍子抜けというかなんというか」
「山賊を蹴散らしたというのは、奴のことであるから苛立ちをぶつけるための、半ば八つ当たりなのだろうな」
「ええ……。想像に難くないのがまた……」
「へっへっへ。らしいと言えばらしいっすね。そんなところは前までと変わっていなさそうで安心するっすよ」
「ええ、それもまた」
私は小さく微笑み、楓さんらしいと私も思う。
「……それでどうするのだ?榊よ。言いたいこと、やりたいことら大体わかるがな」
「……はい。私は楓さんを探してみようと思います。ここを空けてしまうのは心苦しいですが……」
「そう言うと思った。それでは、準備をするぞ」
「え?も、もしかしてメアさんも来るつもりなんですか?」
「当たり前であろう。ここは奴を基に構成されている場所。その中心がいつまでもいないというのは締まらない上に、自然と心が離れていく。我はそれが我慢ならなくてな。どれ、一人より二人。付き合ってやろう」
「なーに言ってんすか。二人より三人のがいいに決まってんでしょうが。つーことで、あっしも参加させてもらいます」
「みなさん……」
「本業の方は仕方あるまい。旅をしつつ、屋台的にやっていこう。そもそも、主がいないというのにいつまでも開業しているというのも酔狂な話だ」
「とりあえず店主を探すところからっすねー。そっから、色んな手段を探っていきましょうや」




