佐倉楓を探して 3
「こっ、この女!」
山賊はようやく本気になったのか、全員が武器を取り、一斉に襲いかかってくる。
そんな山賊を私はいとも介せず、次々と地に伏せ、打ち倒していく。
「すっ、すごい!そんなに強かったんですか!」
「何度も言ってるでしょう。今でこそ三番目に甘んじているとはいえ、以前は一、二を争っていた、と――!」
「な、何者なんだお前!なんなんだよ!」
「私は榊。絶鬼の名を継ぐ者。これ以上知る必要も、覚える必要もありませんよ」
私はそう言い切ると、その時ようやく柄を握った。
「絶鬼流抜刀術、一の型。始」
私は技の銘を口にした瞬間、音の速さすら上回る剣速でその場の空気を断ち切った。
斬ったものはその空間そのもの。
すなわち、私は洞窟全体に刃を通し、それを両断したのだ。
「行きましょう。長居は無用です」
私は依頼者の手を取ると、即座にその場から離れた。
そしてしばらく走り、洞窟から出た瞬間。
――洞窟は見事に両断され、その山は斬り崩された。
「なっ……!」
「ふう、ギリギリでした。もう少し調整すべきでした」
「こ、これはあなたが⁉︎」
「はい。これくらいなんてことはないものですよ」
「いやいや!すごいですよ!」
「そう……ですかね」
私としては、これくらいは当然のことだと思っていたので正直ここまで言われるのか驚きだった。
「ぐ……!さ、榊だと……!まさか貴様、佐倉楓の……!」
「楓さん、がどうかしましたか?」
運良く生き残ったのであろう山賊の一人が逃げてきていることに気がついた私は、刀を抜かずにそのまま彼を見る。
「少し前に……そう名乗る奴が現れてな……。俺たちの以前のアジトを壊滅させやがったんだ。後から佐倉楓のことを調べると、途轍もなく強い戦闘集団のリーダー格だと……」
「す、少し前⁉︎いつですかそれは!」
「ほんの……二ヶ月前だ」
「二ヶ月前……?」
二ヶ月前といえば、楓さんが旅立ってから既にしばらく経ってからのことだった。
つまり、楓さんは二ヶ月前にはそこにいたのだ。
「どっ、どこですかそこは!教えてくれたら、あなただけは見逃します!無論、次に悪事をしでかしたならば命はありませんが!」
「……ここからずっと西にある村だ。佐倉楓は、そこから更に西へと向かっていった」
「……ありがとうございます」
私は慌てて逃げる山賊を無視し、考え事をした。
彼の情報が本当ならば、これはここ数ヶ月で、唯一掴めた情報である。
無駄にするわけにはいかない。
「……どうやら、私が諦めたもう一つの方の依頼も完遂出来そうですよ、依頼者さん」
「あっ、もう山賊は倒してもらったのでそっちの依頼はいいです」
「アッ、ハイ」




