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限界一足

 全身が喜びに震える。背筋がぞくぞくする。ナイフを持つ手が疼き始める。

 あぁ、僕はこの時を待っていた。

「はっはぁ!ビビってんのかオラァ!」

「ビビってる?そんな風に見えてんのなら今すぐ眼医者に行くことをお勧めするけど」

「強がってんじゃねぇよ。てめぇの

 片割れを殺したのはどこのどいつか忘れたわけじゃねぇよなぁ」

「忘れるわけねーだろ。あれから一時も忘れたことはない」

「それは愉快。あれからずっと俺を殺すことばっか考えたんだろ?復讐は醜いぜぇ?」

「前よりはマシになったほうなんだよ!」

 先制のクイックドロー。引き金に手を掛けて銃口を向けるが、動きを止められてしまい、銃弾が発射されることはなかった。

 能力を発動したことによって相手も身動きを取れなくなっている。能力を解除した時が勝負の決め所だ。

 十数秒経ったその時、筋肉が弛緩するのを感じ取って直ぐさま発砲。

 だがやはり少し遅れてしまうことなり、着弾点にはもうレイマルの姿はない。

「はっはぁ!これでもくらいやがれ!」

 レイマルが何かのスイッチを押す。すると、四方八方からどこからともなく発生する機械音。

 その機械音を経て現れたのは大量の大型ガトリングだった。人間が居ないところをみると自動なのだろう。って当たり前か。

「はっ。こんなもんなんでもねーっつーの」

 制服のブレザーを脱ぎ、しゃがんで頭に被せる。ウエストバッグの中からナイフの鞘を取り出し、胸に当てて心臓を守る。いくら鞘とはいえ、ナイフを収納しても切断されないぐらいの強度を持ったものだ。防御にも使える。

 頭痛ブレザーを使用した理由は、ブレザーには弾丸が大量に仕込まれてあるため、同じ銃弾を防ぐ盾になりえるのだ。

 やがて掃射が始まる。肩や太腿には弾が当たるものの、頭と心臓が無事なら問題ない。

 やがて掃射が終わり、至る所が血に染まったブレザーを着直す。

「やるじゃねえか!」

 レイマルが身の丈もあろう大型の剣を携えてこちらへと突進してくる。

「あの時と一緒にすんじゃねーよ!」

 靴底で剣を受け止める。その後すぐさま頭部へと標準を定め、数発発砲。レイマルは難なくそれを躱し、回し蹴りを放ってくる。腰を落として足を払い、ナイフと銃を取り替えて斬りかかるが、剣でガードされてしまう。相手も黙ってはおらず隠し持っていたショットガンを取り出して銃口をこちらへ向けた。こちらも再度ナイフから銃に持ち替えてレイマルへと向ける。

「……はっ」

「仕切り直し……だな」

 お互いの銃の先端を切り捨て、使用不能してしてから距離を取る。

「お前、前に殺した時とは全然違うじゃねーか。何があった」

「別に何もねぇよ。ただ、喰らいまくっただけだ」

「その喰らいまくった何かを聞いてんだよ」

「てめぇに教える義理があると思うか?てめぇは俺を一回殺したんだぞ?」

「よく言うな。お前は今まで何人の人間を殺してきてんだ。本当のところは生きてる価値もねーんだよ。さっさと答えろ」

 握る拳に力がこもる。

「あーあ、仕方ねぇな。ほら、こいつだよこいつ」

 手に持っている大きな剣を指差す。その剣に一体何が……。

「まだわかんねぇか?って、わかるはずねぇよな。こいつは呪装・『幻界げんかいってんだ。履いてる靴の名前は呪装・『他人脚ひとあし』」

「呪装……」

 こいつも特殊能力付きの装備を持っているのか!

『幻界』に『他人脚』……。多分どちらかが本体を強化する類の能力だろう。もう片方はわからないが……。

「どんな能力か知りてぇって顔してんなぁ。いいぜ、てめぇは特別だ。てめぇだけには教えてやらぁ」

「『幻界』の能力は至ってシンプルだ。この剣で殺した奴の身体能力を俺にプラスするだけだ」

 ……だから前とは比べものにならない動きをしていたのか。

「『他人脚』はてめえも前に見たことあるだろ、一日一回限りの離脱用装備だ。両方てめぇに殺された手下のもんだよ」

 僕はあの時、魔法を使ったようだと思ったが、それもあながち間違いではなかったようだ。

 しかし。

「……その手下にかけてやった思いをなんで他の人間にも向けられなかったんだ!」

「ふっ、てめえを殺したら俺はどれぐらい強くなれんのかねぇ⁉︎」

 お互いがお互いに向けて攻撃を仕掛ける。

 待ってろ、桜。仇は絶対とってやる。


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