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レイマル=スターチェス

修正後の33話を閲覧されていないお方はまずそちらからお願いします。
















「……またなっがい通路だなぁおい。縦に長いと思ったら次は横かよ。建築基準法どうなってんだ」

「この世界に法律なんてねぇだろ。認めるのは正当防衛だけだ。この街だって治安がいいだけでそれは変わってないんだからよ」

「そういえばそうだったな。ま、望んでここにいるからあれだけどさ。……ちょっと飛ばすぞ。掴まれ」

「……おうよ。頼んだ」

 通路の奥の奥から嫌な空気を察知する。アスタも僕同様感じ取ったのだろう。顔を引き締め、真面目な様子で僕の胸へと掴まった。

「あぁ、やっぱ駄目だ。さっさとエネルギー回復して巨乳に戻れや不細工。巨乳じゃないてめぇに興味も価値も何もねーよ」

「胸のサイズで不細工かどうか決め付けてんじゃねーよおおおおお!」

「ずおおおおおおっ⁉︎」

 突如胸を鷲掴みにしてきたアスタを思い切り蹴飛ばす。野郎、咄嗟にエルヴレインを出したらしく、白い鎧姿で飛んで行った。ダメージはないだろう。

 というか思いついた言葉を言っただけだが、なんか少し怒りどころが違う気がした。普通は不細工と罵られた事に対して怒るだろうに、何故胸のサイズの件で怒ったのだろう。

「ま、まさか、思考が偏ってきたのか⁉︎毒されてきたのか?」

 僕の中にいるあの女に。

「あぁぁぁぁぁぁやべぇよおおおお…………」

 頭を抱え、その場にうずくまる。

 いくらこの身体が便利だからって、能力発動状態で常日頃を過ごすのはやり過ぎたか……。確かに、最近スカートの丈や、見えるか見えないかの角度を気にするようになったし、髪型にも気を使うようになったし、さっきのもそうだ。前は胸を揉まれても不快感を感じるだけだったのに、今は恥ずかしさを感じるようになった。

 これは……まずい。

 元から二重人格なのに、今の性格に二面性が出来始めた。いや、あのハイテンションモードと陰鬱状態とを合わせると三面性か?

 ……僕、めんどくせぇ……。

 ってそんなことはどうでもいいんだよ!……まぁ、帰って考えるか。今は吹っ飛んだアスタを追いかけよう。



「よお、元気か?」

 通路の端まで吹き飛んでいたアスタを追いかけ歩き続けて結構な時間が経っていた。

 未だエルヴレインを装着したまま倒れっぱなしのアスタがそこにはいた。

「……あんまりだ」

「とりあえず解除しろよ。それ、体力というか能力の発動源吸い取られるんだろ?」

「両方だっつーの……」

 そう言い、エルヴレインの装着を解除する。

 寝そべった状態から体を起こし、座ったまま僕と会話を続ける。

「なんで解除しなかったんだよ。馬鹿だろお前」

「いやな……。痛みでしばらく動けなくてよ。その間何かあったらまずいと思ったわけよ」

「んなもん起こってから考えろよ」

「なんつーか……なんかそこにいたっつーか……」

「は?」

 アスタの発言に少々危機を感じ、曲がり角のその先を見つめる。しかし、何もない。

 こいつは何を見たんだ?

「何もいねーぞ」

「さっきまではいたんだよ。人影みたいなのが見えてたしよぉ。丁度楓が来た辺りで消えたわけよ」

 僕が来た途端って……なんか怖いな。やめてくれ。

「んで、どうだ?立てるか?」

「俺の回復力を舐めんなよ?半分以上回復済みだ」

「こんの筋肉馬鹿が」

「褒め言葉として受け取っとくぜ」

 突き当たりを曲がり、少し歩くとすぐに扉が見え始めた。今までと変わらない扉だ。

 そして、扉を開く。

 次は何が待っているのだろうか。

 眩い光が僕の視界を包む。思わず目を閉じて光を遮断する。

 しかし、その一瞬が命取りになる。

 何かの能力だろうか、僕の体はピタリと動かなくなる。

「な、なんだこれ……」

「楓、どうした」

「いや……体が動かなくてさ……」

「あれ?お前死んだんじゃなかったっけか」

 どこかで聞いた声。だが、忘れるはずもない。

 目の前で僕に能力を使って動きを止めていたのは、盗賊の長。

「……アスタ、僕を殺せ」

「は?何言ってんだ……ってあいつ、お前が倒した奴じゃなかったか」

「いいから。首を斬ってくれ。能力を解除したいんだ」

「……楓、何があったかは知らんがけどよ。すごい顔してるぜ」

 当たり前だろう。僕が今この世界に残っている理由の一つ、こいつをぶち殺すのがもうすぐ叶いそうなんだから。自然と笑みも溢れる。その笑顔は自分の顔が見えない僕でもわかる、邪悪な物だ。

「アスタ、ここは僕に任せろ。先に行け」

「メアじゃねーんだからよ……。くれぐれもやり過ぎるなよ。戻れなくなる」

「この世界に残った時点で僕はもう戻れなくなってるよ」

 アスタが僕の首に半分まで剣をいれる。もちろん即死だ。そしてすぐさま能力が解除され、元の僕の姿に戻る。それと同時に相手の能力も解けた。体が変わったことが原因だろう。

「ありがとう。さ、早く行け」

 ナイフを抜き、戦闘準備をする。



 その楓の姿はまるで何かに取り憑かれているかのようだった。



「こいつはこの姿で殺さないと」

「あぁ、てめぇか。死んだ女の姿しやがって気持ち悪りぃ」

「僕の目の前にはもっとすごいのがいるけどな」

「てめぇ……」

「お前は苦しみながら死んでもらう。覚悟しておけよ」

 ナイフを構える。

 それを見て相手も戦闘準備を始める。

「ほら、早く行け。我を忘れたら自分でも何するかわからない」

「……気をつけろよ。あいつにも、お前の心にも」

 軽くお互いの拳と拳をぶつけ、アスタは次へと向かった。

 改めて盗賊の長へと向きなおり、ナイフを構えた。

「なぁ、お前何て名前なんだ?」

「あ?……レイマル=スターチェス」

「スターチェス、ね。僕は佐倉楓だ。死にたくなったらかかってこいよ」

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