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過ち

 とは言ったものの……。どう攻めていいかわからない。

 ちょっと前に使った魔法陣的な奴は詠唱とやり方を忘れたし、何より強敵相手に使える余裕がない。技とか使ってる暇もない。

 自分の機動力が並以下なのは熟知している。ならば固定砲台のように戦うのがベストだろう。

 サポートメインで戦う私には一対一のタイマンでは厳しいものがある。……アスタに残ってもらったらよかったかも。

「よお、どうしたクソガキ。あんだけ威勢のいいこと言っておきながらビビってんのか?」

「ふっ……。そちらから来ぬのも我に恐れを抱いておるからではないのか?」

 相手に攻撃をさせる為の挑発。相手は私が攻撃を仕掛けてくるのを待っている?

 ……試してみるか。

「やぁっ!」

「あ?」

 鬼龍院の周りを全て硬質化、顔面辺りに少し空間を設け、ポケットに入っている袋を取り出して中に入っている小麦粉をぶちまける。そして着火、粉塵爆発を起こす。

「よしっ!」

 昔漫画で見た知識のみで行ったが、存外上手くいったようだ。

 と、そのすぐ後にこちらに向かって火花が飛んできた。

 そして、その火花を伝って順々と爆発が連鎖していく。

「やばっ……!」

 咄嗟にしゃがみ込み、全身をフルガード。自分の周りで大爆発が起こったが、すんでのところでなんとか防ぐことができた。

「何が……」

 決まっているだろうに。爆発だよ爆発。

 さっさと回転を始めろ頭。

 爆発を起こせる能力。なら、火を発生させる能力と考えるのが妥当だろう。私が爆発を起こした後にすぐ攻撃してきたのは意趣返しのつもりだろうか。

 相手が爆発を起こせるとなると、迂闊にこちらも小麦粉を撒くわけにはいかない。逆に利用されてしまうなんて状況になったら目も当てられない。

「ははっ!どうした?もう終わりか?」

 ……落ち着け。これも挑発だ。

 見たところ、爆発にあまり射程距離がないので、接近させて一気に倒してしまおうという算段なのだろう。

 そうはいくかって。

「ふっ……。笑ってしまうのはこちらの方だ。大きな図体をしておきながら相手が来るのを待っている臆病者が……。底が知れるな」

「吠えてろよガキ。てめえこそ俺様が攻めてくるのを待ってんじゃねえかよ」

「口を慎め木偶の坊。貴様の攻撃のタネなどもう全て把握しておるのだ。我では貴様を倒すことは出来ぬが、貴様も我を倒すことが出来ない。アスタと楓なら何も心配することはないのだ。多分もうすぐ我の下僕達もここに来る頃だろう。それまで時間稼ぎをさせてもらうとしよう」

「……なあてめえ、何か勘違いしてねーか?」

「何がだ?」

「能力が使えねーならよぉ……。直接殴ればいいじゃねえかよおおおおおおお!」

 猪突猛進にこちらに向かってくる。

 愚かな……。

 鬼龍院の足元に硬質化した光を発生させる。

 転げろばーか。

「ひっかかるかよ!」

 走りながら小さくジャンプをし、勢いを殺すことなく避けられる。

「あっ、避けんなばか!」

 今度は目の前に発生、続いて少し手前の腹部辺りに発生させる。

 しかし、目の前の光を上手く躱し、腹部辺りの光も蹴り壊される。

「嘘ぉ!」

「嘘じゃねえよ!」

 次々と光を発生させるが、全て避けるか壊されてしまう。

 こんなこと初めてだよぉ……。

「おらぁっ!」

「あぐっ……」

 腹部に蹴りが入る。

 二撃目を繰り出してくるが、次は硬質光で防ぐ。

 接近戦に持ち込まれてはまずい。一度上に逃げよう。

 硬質光を階段状に発生させ、高度3メートルぐらいの高さまで登る。勿論、登ってこれないように自分が登った後は高い壁を作る。

「おいおい逃げてんじゃねえよクソガキ!さっさと殺させろや!」

 ……まっずいなぁ。

 本格的に出来ることがない。

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