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メアの心中

「城山さんって、普段何をしてるか気になりませんか⁉︎」

 ……また唐突に。

「ま、確かに気になるっちゃなるな」

 城山は普段、決まった時間に外に出て行き、決まった時間に帰ってくる。

 出て行くのは朝食(もやし)後、帰ってくるのは夕食(もやし)の少し前。ちなみに、食事がもやししか出てないのは気のせいだから。

「それでですね。一度彼をつけてみようかと思いましてね。楓さんも一緒にどうかと思いましてね」

『ね』が多い。感想はそれだけだ。

「他人のプライベートに踏み込もうってか?趣味悪りぃなぁおい」

 話を聞いていたアスタも会話に加わる。

「でも気になりませんか?私、気になります!」

「そっか」

 なんだかヤバそうな発言だったので、僕とアスタの両人が適当に流す。

「むう……。いいです!私一人で行きますよーだ!」

 可愛く言っても、やってることはただのストーカーだ。齢15にしてストーカーデビューとは、末恐ろしい奴だなおい。

「悪いことはいわんからやめとけ。ロクなことがない」

「……アスタ?」

「……見るな。俺を見るな」

「お前まさか……」

「うわ……」

 これは僕でもドン引きだ。女好きとは思っていたが、これほどとは……。

「うるせえ!告白しようと後を追ってたら通報されちまったんだよ!俺は悪くねぇ!」

「ふふっ……お疲れ様でーす」

 榊が今まで見たことのないレベルで顔をにやけさせて、アスタの肩に手を置く。

 これはムカつく。

「てっ……めええええ‼︎絶対に許さねえからなあああああああああ‼︎」

 いつもは榊の方から仕掛けるのに、今回は煽られに煽られまくったアスタの方から武器を出す。エルヴレインの完全武装だ。

 まだ怪我も治ってないだろうに、馬鹿なことをする奴だ。

「いいでしょう!今日こそ再起不能にしてやりますよ!」

 怪我人に対して本気すぎるだろ。

 久しぶりに見た、滅鬼黒衣に斬馬刀・阿修羅。いつ見ても禍々しい組み合わせだった。

 これを出したということは、榊に絶鬼流を使う意思がないということだ。

 ……って。

「家の中で暴れんじゃねーよ!外でやれ!」

 二人を外へと蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばされて、空中に浮いている間に戦闘を開始する二人を見て、思わず溜息が出た。

 そこまで戦いたいか。戦闘民族かお前らは。

「まったく……」

 そうつぶやき、自分の部屋に戻ろうと二階へとあがろうとする。

 しかし、階段に座っているメアに行く手を阻まれてしまう。

「何してんだ?」

「……行きたい」

「は?どこにだよ」

「……城山の尾行に決まっておろう」

「……何故に?」

 こいつ話を聞いてやがったな……。子供に聞かせる話じゃねーよな……。

「やめとくのが吉だ。お前の将来が怖くなる」

「た、頼むよぉ……」

「……お前、まさか?」

 メアの顔がぼうっと赤くなり、僕の目からすっと目線を離す。

 なるほど。そういうことか。

「……ま、いいんじゃないか?僕同伴だけど」

 メアの表情が明るくなる。

「明日決行するぞ。……正直、あんまりいい気はしないけどな」

「あ、ありがと……」

 外の二人の叫び声と共に聞こえてくる目の前の少女のありがとうには、なんだか儚げな雰囲気が漂っているようなそんな気がした。



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