表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/87

死亡フラグ

  傷はけして浅くはない。

  けど退くにはいかない。



  相手に悪くない傷を与えることができた。

  勝利の女神はこちらに微笑んでいるようです。



  相手の能力はなんだ。

  考えるんだ。



  さっさとトドメを刺してアスタ様を救って差し上げないと。

 


  思考を止めるな。

  頭を動かし続けろ!



 手負いとはいえなにをしてくるかわかりません。

  早く殺さないと。



「…….なぁ」

  僕は時間稼ぎのつもりで話しかける。

  カラクリを暴くんだ。

  さっさと思考しろ!

「さっきの夢、教えてくれないか?」

  なるべく長引かせそうな話題を振る。

  奴は刀を一振しか持っていなかった。

  急に増えるわけがない。

  それが多分能力だろう。

「なぁ、頼むよ」

  武器を増やす能力?

  違う。

  何故ならば先程までと着ている服が変わっている。

「どうしても駄目か?」

  彼女の能力は多分アスタの能力に近いものなのだろう。

  しかし一種類の特別な装備を召喚するアスタとは違い、彼女の場合色々な物を召喚する事が出来そうだ。

  なら……。

  「そんなに聞くなら教えて差し上げましょう」

  食いついた!

 次は対策を練るんだ。

「私の夢、それは……」

  正直対策といっても無尽蔵に出てくる武器を交わすことはほぼ不可能そうだ。

「アスタ様と恋仲になることです!」

  それこそ鎧なんかをまと……今なんと?

「え……なんだって?」

  難聴系の主人公ではないはずだけど定番のセリフをつい言ってしまった。

  本当はなにを言ったか聞こえてる癖に。

「ですから……アスタ様と恋仲になることが私の夢なのです!」

「あー……その、なんだ?それのどこに僕を殺す意味が……?」

  何を言っているんだこの女は。

  あぁ、暑さか。

  この暑さに彼女はやられてしまったんだな。

  ……今は春だけど……。

「夏だなぁ……」

  周りから見れば頭の螺子が飛んで行った様にしか見えないだろうが言わずにはいられなかった。

  なんだよちくしょう。

  あいつの厄介ごとに巻き込まれて死ぬのかよ。

「あなたはアスタ様の弱みに漬け込み、無理やりアスタ様を言いなりにしているんです!だからアスタ様を魔の手から解放して差し上げないと!」

「終末思想かよ…….」

  ふつふつと湧き上がってくるアスタへの恨み。

  この恨みをアスタに伝えるまでは死ぬことは出来ない。

「そうかよ。それなら僕は何度でもそんなことはしてないって否定してやる」

  ナイフを構え、静かに呼吸を整える。

  大丈夫。

 僕ならやれる。

  自分の勝っているビジョンを思い浮かべるんだ。

「行くぞ」

  先程間抜けと言いきった攻撃宣言をする。

  小細工が通じない相手なら特攻をかけるのみだ。

  迷いはない。



  雰囲気が変わりました。

  静かで、されど大きく見える。

  多分しっかりした師匠をつけて、ちゃんとした武術を学ばせれば世界を取れるほどに成長したでしょう。

  しかしそれは適いません。

  何故かと言うと私がここで人生を終わらせるから!

 


  「どおおおおおりゃああああ‼︎」

  僕は構えていたナイフを彼女に向けて投げた。

  周りから見ると馬鹿みたいに見えるかもしれないけれど、今の僕にはこれしか出来ない。

「諦めたんですか⁉︎」

  彼女は飛んできたナイフを避ける事なく刀で弾いた。

  チャンスだ!

  先程の彼女のダッシュには及ばないが自分の出せる限界までの速度を出したつもりだ。

  傷が痛む。

  今にも意識が飛びそうだ。

  しかし止まることなく走り続ける。

  藁をも掴む想いで伸ばした手は藁以上のものを掴んで帰ってきた。

 彼女の持つ刀に手を伸ばした結果、それを奪い取ることに成功した。

  しかし成功したのはあくまで刀を奪い取ることのみ。

  僕の腕は片方無くなって居た。

  「ぐ……あああああああ‼︎」

  これは痛いなんてものじゃない。

  地獄だ。

「お馬鹿な真似をしたものですね」

「へ、へへ……」

 何故だか笑いが出てきた。

  駄目だ。

  今死ぬな。

  今死ぬと頭がミンチになる。

  けど、これで仕上げだ。

「アスタ?あぁ、あのゴミか!すこし弱みを握っただけですぐにへいこらしやがるあいつか!お前の尊敬するアスタ様は俺に跪くゴミムシなんだよ!知ってるか⁉︎」

  ぷつんと何かが切れる音がした。

  彼女の顔が鬼の形相に変わる。

  と、同時に装備も変わっていく。

  美しい日本刀は消え、彼女の身長の二倍はあるであろう刀を取り出す。

  着ている服はバランスの良さそうなロングコートから明らかにパワーに極振りしたような服に変わる。

「滅姫黒衣、斬馬刀・阿修羅……!」

  その姿は正に暴れることに特化した悪のお姫様のようだった。

  「滅姫黒衣は持ち主の筋力を大幅に増幅器させ、斬馬刀・阿修羅でさらにブーストを行う……。この攻撃を喰らえば跡形も残らないだろう……。貴様は……貴様だけは……絶対に許さない‼︎」

  そう叫びながら僕めがけて刀を振り下ろす。

  凄まじい轟音をたて、地面が抉れる。

  彼女の手によって出来た穴は深さ数十メートルに及ぶだろう。

  これで僕の体はぐちゃぐちゃに崩れ、なんの生物か確認すら出来ないような姿になるだろう。

  間一髪かわしていなければ。

  頭に血が上った彼女は必ず直線的な攻撃をすると踏んで居た。

  彼女の攻撃ら基本直線的な動きをしている、今までの攻撃の中で把握した。

  そこで冷静さを失えば必ずそのまま振り下ろすだろうという予測を立て、そしてその通りに動いてくれた。

  僕は今彼女が開けた穴の中に潜んでいる。

  散々コケにしてくれた礼だ。

  切り札を使わせてもらうぜ。

  奪った日本刀で先程斬られた腹を突き刺す。

「ぎっ……!」

  ナイフでは深く抉ることが出来ないので駄目なのだ。

  なかなか死ねないのでぐりぐりと意識が遠のくまで抉り続ける。

「が……あああ…ああああああ……‼︎」

  どんどんと意識が遠のいていく。

  来た……。

  待ってろ……よ……すぐに倒してやるから……な……。

  この世界に来てから二度目の絶命。

  今度の死亡は自分が望んだものだった。

 


  ……視界が鮮明に見え始めた。

  能力は発動したようだ。

  見てろよクソ女。

  てめえのその顔面をぼっこぼこにしてやるよ。

  僕は穴から勢い良く飛び出し、彼女の姿を確認する。

  いた。

  あのクソアマ僕の死体を確認するまで去らないつもりか。

  空中でくるんと一回転し、彼女の後ろに降り立った。

「……死んでなかったんですね」

「ああ、第二ラウンドといこうぜ」

「ええ、あなたを殺すのは一発じゃ足りませんでしたから‼︎」

  「見事な死亡フラグありがとさん」

  そう言い終わると同時に彼女の腹に渾身のアッパーを放り込んだ。

「がっ……」

  ざまあみやがれ。

「死ね!」

  後ろに回り込み、背中を思いっきり蹴飛ばす。

  うーん快感。

  続いてあのでかい刀を破壊し、吹っ飛び続けている彼女と地面の間に入り込み、これまた足で蹴り、遥か上空への旅行へ送りだす。

  今のうちにアスタを探しに行かないと。

  お前のせいでややこしくなってるんだから責任はとれよ、アスタ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ