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ぬいぐるみの行方

「なんだなんだ……」

 さっきから大の大人が人形人形って……を。

「なぜ貴様らなどに渡さねばならぬのだ。これは我が選びし物だ」

 言っていることはかっこいいが、仕草は怯える子どもだ。

 先程よりも強く人形を抱きしめている。

「その人形……いや、その人形の中身に用があるんだわ。な?他の物買ってやるからそれくれないかなぁ?」

 強情なメアを見て態度を変えるヤのつくお仕事っぽい人たち。

 態度だけ変えても滲み出るオーラは全然変わってないが。

「嫌だ。坂本は渡さん」

 坂本ってその人形の名前か。

 なんだ坂本って。

「あー、めんどくせぇなあ。さっさと寄越せやガキ‼︎」

 メアへと向けて蹴りを放つ。

 舌打ちをし、蹴りを止めに行こうとするが、間に合いそうもない。

「……貴様、我を誰だと思っておるのだ?」

 仰々しい口調で男に語りかける。

 彼の足は、固めた光で覆い尽くされ、身動きの取れない状況下にある。

「な、なんだこれは⁉︎」

 ようやく状況に気付いたのか、慌てふためく。

「『煌華』。我が貴様に放った技だ」

 あっ、よく見ると花の形に見えないこともない。

「そしてこれが……『時牢』だ」

 彼の頭上と足元に時計っぽい形をした硬質光が現れ、閉じ込める。

「……闇に呑まれよ」

 メアが指を鳴らすと同時に明るい色をしていた硬質光が、途端に紫と黒が混ざったような色に変わり、もう一度指を鳴らしたところで、時牢と呼んでいた物が手のひらに乗るような大きさまで縮まり、やがて消える。

 中に男の姿はない。

 代わりに真っ赤な液体が中に残っており、能力を解除したと同時に地面に流れ落ちる。

 光を固めるだけの能力で禍々しい時計まで作ってそれっぽい能力に見せかけるなんて、、中二病とは恐ろしい。

「佐倉楓よ。半分は任せた」

 流石に一人では無理と判断したのだろう。

 僕に共闘を申し込む。

「……ああ、任された」

 こんな幼女に出番を奪われるのは忍びない。

「っしゃ‼︎いくぞ‼︎」

 自らの拳と拳を合わせ、敵へと駆け出す。

 それに倣ってメアも戦闘を開始する。

 雑魚達が能力を発動しているが、そんなことは関係ない。

 本当に強い能力を持っている奴は、多分それなりのポジションで美味しい役を与えられて来るはずだからな。



「ラストっ‼︎」

 最後の敵を遥か彼方へと吹っ飛ばし、戦いを終える。

 僕たちの実力を見るやいなや、逃げだした者も相当数いた。

 なので、掃除がとても楽だった訳だ。

 後ろを振り返ると、メアも終わったらしく、一息ついていた。

「闇に沈み、深く眠るがよい……」

 姿が見えないヤのつくお仕事っぽい人たちに冥福を祈っているのだろうか。

 いやいや、そんなわけがない。

「ってあー‼︎」

 大声で叫ぶメア。どうしたんだ?

「坂本が……‼︎」

 戦闘が始まる前に地面に置いていた坂本がいつの間にか無くなっていた。

 これは盗られたな……。

「まぁ……ドンマイ」

「ドンマイで済むか馬鹿者‼︎」

 なんで僕のせいにするんだ。

「ま、泣くな。今度また新しいの買ってやるから。それで坂本探しにでもいくか」

 優しく声をかける。

 他の面々と違って子どもなだけに、優しく話しかけないとな。

「……うん」

 涙目で返事をする。

 しかし、あんなもの盗んでどうするつもりなのか。

 そういえば中身に興味があるとかなんとか言ってたな……。

 まぁ、どうでもいいか。






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