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威圧感の正体

  昨夜は(少年漫画みたいな)熱い夜を過ごした。

  その興奮は未だ覚めず、襲撃者の言っていた”あいつ”とは何かアスタに聞くことすら忘れて

 二人とも異常なテンションで街を闊歩していた。

  行き交う人々はそんな二人を悲惨な目で見ているがそんなのは気にしない。

  後から思えばそこでやめておけばよかったと後悔することになるのだけれど後の祭りなのでこれ以上思い返すことはやめにしておく。



  妬ましい。

  私はあいつが妬ましい。

  憧れのアスタ様の隣にいるあの男が妬ましい。

  私とアスタ様は運命の赤い糸で結ばれているといいますのに…!

  私がアスタ様の虜になったのは二年前の寒い冬の事でした。

  この世界に来たばかりの私に優しくて逞しいお声をかけて頂き、あまつは寒さに震えていた私にそのご衣類をなんの躊躇もなく渡し……。

  その後宿を借り、アスタ様ともっとお近づきになる筈だったのですが……。

  近くにいた能力者の能力の暴走によって私はよくわからない辺鄙な田舎へ飛ばされてしまい……。

  飛ばされた場所はとても遠く、すぐにアスタ様の居た街に帰ることは容易ではあひませんでした。

  帰ってこようと思えば数ヶ月で帰って来れたのですけれども次にアスタ様に会う時はアスタ様に似合う強い女になっていようと決め、その田舎で修行をしました。

  田舎というものはなかなか侮れませんね。

  その田舎には代々伝わる秘伝の剣術があるのですが、その剣術を継ぐ筈の若者がその恐ろしさに恐怖して逃げ出してしまい、その剣術を伝授する者がいなくなり、廃れてしまうという一歩手前のところで私が遥か空から落下してき、神の子と信じ込んだ私が土下座されて剣術を学ぶことになったのです。

  少し迷いましたが先程述べた理由もありますし、なかなか強力な剣術のようでして、しかも私の好きな日本刀を使った剣術で和風なご様子だったので喜んで受け継がせて頂きました。

  はぁ……愛しのアスタ様……。

  あなたはどんな闘いをするのでしょうか……。

  戦闘になると和服に衣装を変え、獲物は薙刀の様な武器なのでしょうか……。

  いえ、そうに決まっております。

  もし私の大嫌いな洋風の装備などされてらっしゃるならいくらアスタ様とはいえどもズタズタに切り刻んで豚の餌にしてしまいますが……。

  そんなことはないですよね?

  アスタ様。

  そしてあの男は始末する。

 


 ここで僕はアスタには質問をする。

「なぁアスタ、お前ってこの前洋風な鎧つけてたけどやっぱり洋風なのが好きなのか?」

「ああ、好きだぞ」

  やっぱりか。

  なんかノリノリだったしな。

  本人は気づいてないだろう様子なのでここは無難な返事をしておく。

「へぇ、似合ってたし大柄なアスタにはいいと思うよ」

「ははっ、褒めるなよ。まあ俺は洋風な鎧が好きというより他があまり好きじゃないだけなんだけどな」

  好き嫌いが激しいってことか。

「特に和風なのが大っ嫌いでさ、そんな奴見たらついついぶっ殺したくなっちまうんだよな」

  怖え……。

「ま、そんな奴俺の知り合いにはいないし大丈夫だろ」

  ……何故だろうか、理由はわからないが後ろと前から押し寄せる威圧感で潰れそうだ。

  ……なにも起きないといいなぁ。

 



 


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