ふたえの『さくら』
「踏んだり蹴ったりじゃねーか……」
ものすごく調子が悪い。
そして運が悪い。
お金を取りに帰る途中12回も何も無い所で躓き、街に入った辺りで怪しい宗教の勧誘に引っかかり、せめてアンケートだけでもと強制的に書かされたアンケートではシャーペンの芯が出る方を押してしまう。
僕の身に何が起こっているのだ。
「死ぬとかやめろよ?」
「縁起でもないこと言うな!」
頼むからやめてくれ。
「大丈夫ですよ楓さん。気分が落ちている時は全てが悪い思考にに陥りがちです。前向きにいきましょう前向きに!」
いつもアスタを呪うかの様な怨嗟の声を吐きまっているネガティブガールのお前に言われても説得力がなぁ……。
と、そんな会話を続けているとキューブが昨日同様に輝き始める。
戦闘開始だ。
「楓くん、なんか調子悪いみたいだしついていくよ」
いつになく真剣な面持ちの桜。
「……頼んだ」
僕と桜以外全員散開し、各々の行くべき方向へと進む。
「大丈夫?無理しちゃ駄目だよ?」
優しい言葉が心に染みる。
「……なんか不気味だぞ」
しかし思っていた言葉とは違う言葉が口をつく。
「ふふふ、そんなこと思ってないの知ってるんだからね♪」
……バレてたか。
「さっきも言った通り無理は禁物だからね。頼むよ、あたしのポンコツ王子♡」
「うるせえ見た目詐欺姫」
「おい……どうなってんだよこれ……」
昨日と同じ面々が僕たちの前に立ち塞がる。
海賊風の男に山賊風の男に世紀末のモヒカン。
まるでゆうちゃんではないか。
「昨日は良くぞやってくれたなぁ!」
相変わらずの雑魚丸出しなセリフで僕たちを脅すモヒカン。
ゆうちゃんが言ってた物を再生させる能力を持った奴の仕業か?
このクソ調子が悪い時に限って……。
「桜、頼む」
「あいさー」
間の抜けた返事と共にそろそろ慣れてきたお互いの首元にナイフと手刀。
一思いに切り裂き、意識が遠のく。
そして再び覚醒……ってあれ?
僕が今いるのは何故かこの間のブラックルーム。
目の前に映し出されるビジョン。
以前ここから榊達の奮闘を見た覚えがある。
どうなってんだ?
「なんか楓くん調子悪そうだったからね。代わりに戦わせてもらうよ」
風に靡く髪が見える。
桜の髪だ。
「ふたえの『かえで』、さくらver.だよ」
昨日の口上、見られてたのか。
恥ずかしい。
というか真似するな。
「死にたい奴からかかってきたまえ♪」




