初日
「ひゃっはぁ!死ねぇ‼︎」
テンプレ雑魚が吐く台詞で僕に襲いかかるモヒカン。
「アホか」
眉間に一発弾をぶち込む。
薄汚い血を撒き散らしながら地面に倒れこむモヒカン。
僕を囲むようにして勝負を挑んでくるモヒカン達の攻撃は続く。
「くそ!これならどうだ!」
猟銃を此方へと向ける山賊風の男。
いくらこの世界がフリーダムだからってその格好は流石に……。
パン、と乾いた音が響き渡り、弾丸が飛んでくる……飛んで来ていると思う。
けど。
「当たるか!」
足を振り上げ、例の金属が入った靴で弾丸を受け止める。
「な……」
その後自分の持てる最大の筋力を使ってナイフを引き抜き、柄で弾丸をはじき返す。
弾丸は見事相手の心臓を貫通し、後ろにいた海賊風の男もついでに仕留める事が出来た。
「こいつばかりに構ってたんじゃ他の参加者を殺せねぇ!一斉にかかれ!」
前の方にいる十数人が一斉に僕へと飛びかかってくる。
「団結とか……してんじゃねーよ‼︎」
四方八方から襲いかかってくるモブの方々。
その全員の眉間に銃弾を打ち込む。
しかし、一人だけ残ってしまった。
「……弾切れか」
ナイフと合わせて戦っていたが、ないふと違って銃には弾数制限がある。
ポケットに仕込んであるもしものための一発以外切れ、完全な近接戦闘へと移行する。
銃をガンベルトに仕舞い、ナイフをゆっくりと鞘から引き抜く。
「ひ、ひいいいいいいい!」
撃ち漏らした一人が腰を抜かしながら遠くへと逃げて行く。
「あっ、おい待て!」
咄嗟に銃を抜こうとするが、弾が無いことを思い出し、追いかけようとする。
「おっと、ここは通さないぜ⁉︎」
モヒカンの集団が邪魔をする。
「……まぁいい。どうせもう戦闘不能だろ」
改めてナイフを構え直し、戦闘態勢に戻る。
「…………ん」
遠くからなにやら声が聞こえる。
「なんだ?」
目の前のモヒカン達もうろたえ始める。
別にうろたえる必要ないだろうに。
「………くーん!」
といつかこの声は……。
「楓くん!」
……やっぱりお前か、桜。
「なんで上から落ちてくるんだよ」
「えー、だってその方が駆けつけた感が半端ないじゃん?」
後で僕がやりたかったことを先にやられた……。
アスタ辺りが苦戦しているところに颯爽と僕登場、といった風に。
「そっちは片付いたのかよ」
満面の笑みを浮かべる桜。
これは片付いてるな。
「楽勝♪」
やっぱり。
「ここもさっさと片付けてさ、他を助けにいこうよ」
「ん、ああそうだな」
出来るだけ一人で戦いたかったが、桜が来た異常仕方が無い。
桜の首にナイフを添える。
僕の首に手が伸びる。
「少し待つのだ」
人を押し退けて体の大きい、屈強な男がのっしのっしと歩いてくる。
「貴様達只者では無いな?先ほど最上の武器使いと名乗っていたな……。異名持ちだな?」
異名というのはここまで有名なのか。
「兄貴!こいつら最近登録された二人組ですぜ!」
あれ?気づかれてんの?
「なるほど……貴様達、異名を何といったか」
僕と桜、二人顔を見合わせてふっ、と笑い、同時に言う。
「『ふたえ』のかえでだよ」
その刹那、目の前が暗転する。
そしてすぐに視界が鮮明に映り出す。
肉体を超強化する能力、発動。
「一人に……なっただと?」
どうやら能力までは広まっていないようだ。
「あー、くそ……。なんか嫌だなこの感じ……」
『ふふふ、ロボットアニメの主人公が新しい機体に乗り換えたみたいな感じであたしは好きだよ』
お前が好きってことは僕も好きってことになるんだけどな。
「何をするかは知らんが潰してやる!」
大きく剣を振りかぶる大きい人。
「隙だらけなんだよ!」
隙だらけな腹に一発アッパーカット。
榊や盗賊の頭と同じ様に空の旅をする大きい人。
『楓くんそれ好きだね〜』
「うるさいな。中学生のころに考えに考え抜いた必殺技なんだよ」
言い終わるか終わらないかの内に自らも空へと大ジャンプする。
やがて大きい人に追いつき、背中に踵落とし。
勢い良く地面に叩きつけられた大きい人は、百烈拳を喰らった後の死体の様だった。
「ふぅ……。おいどうした。かかってこいよ」
この中で一番強そうな奴を倒した事によってある程度統率の取れていた集団に乱れが生じる。
「へ、へへ……これを差し上げますから命だけは……」
一人がキューブを差し出したことによって、次々とキューブを差し出し始める。
「わかればいいんだよ。わかれば」
『完全に悪役だよ?』
「別にらいいだろ」
やがて最後の一人のキューブを回収し、この辺り一体の悪人は狩り尽くせた。
「別れるぞ」
首元を手刀で切り裂き、能力を解除する。
「あぁん、もう少しいいじゃん」
「お前は動きたくないだけだろ……」
「え?ばれた?」
「バレバレだっつの」
他愛もない会話を交わす。
ここが戦場だってことを忘れそうだ。
日は傾いている。
もうすぐ今日の部は終わるはずだ。
と、そんなことを考えていると、僕の考えに答えるかのようにキューブが輝き出す。
そして先程と同じように直感で感じとる。
今日の所はこれで終わりだ。
街中から溜息が聞こえる。
だが、僕達がある程度食い止めておいたお陰で、一般参加者の死人はほぼいないようだ。
周りを確認すると、もう既に人は減り、各々の家や借りている宿に帰っている。
「僕達も帰るか」
「そだね」
散り散りになったみんなを探しながらゆっくりと歩き出す。
一日目、終了。




