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幕開け

「なぁ、なんでこんなに武装した奴が多いんだ?」

 街について辺りを見渡してみると、ゴツい鎧やら大きな剣やらでコテコテに固めた傭兵を連想させるような奴らがゴロゴロいる。

「この世界にいる人間達は大抵武道の経験がある者たちばかりなのだよ」

 後ろから聞いたことのある声。

「……高坂か」

「ご名答。私だ」

 胸元がはだけた、だらしのない格好でダラダラとした態度で僕に挨拶をする。

「なんだこのエロ……綺麗なお姉さんは」

 アスタよ、鼻の下を伸ばすな。

 さっきのシリアスモードはどうした。

「話を戻そうか。要するに君たちの様な全くの素人がこの世界に飛ばされてくることは珍しいのさ。君たちは能力がなまじ強力だから生き残れているものの、もし能力が貧弱だった場合既に全員死んでいるよ」

 さらっと恐ろしい事を言うな。

「彼らの殆どが能力なんて物は己の力を最大限使うためのオマケ程度にしか思ってないようだね。その証拠に、能力自慢でそれっぽい称号を持っている者たちはほとんど確認されてないが強い武器を持った人間は神器使いとして名乗りを挙げている。よっぽど彼らは腕に自信があるようだね」

 やれやれ、といった調子で語り続ける高坂。

「って、ちょっと待て」

「ん?今の説明に何か不満があったのかい漆黒の血胤ブラック・ブラッド」

「だからそれやめろ!」

 こいつ本気で気に入ってるんじゃないだろうか。

「はは、冗談さ。それで何かな?」

 なんというかマイペースな奴だ。

「装備を固めてる奴が多いなら榊みたいな特殊武器とか持ってる奴も多いんじゃないのか?」

「そのことか……。安心したまえ。榊ちゃんの様な特殊能力を持った装備をしてる者は珍しいよ」

「その理由は?」

「値段が凄いんだよ」

 値段か。

 そうかそうか。

 己の力を試すため……とかそういうのじゃないんだね……。

「現実とは哀しいですね」

「いや……お前が言って説得力ないからな?」

「さっすが金持ちのクソお嬢様の言うことは違いますねぇ〜」

 アスタの嫌味ったらしい声。

 煽らずにはいられないのか。

「はい?私が貰ったお金をどう使おうが私の勝手でしょう?というかただ硬いだけのクソ鎧を使ってる貴方に言われたくないですねぇ。エルヴレイン(笑)でしたっけ?」

「榊ィィィィィィィ‼︎今日こそぶっ殺してやるよおおおおああああ‼︎」

「死ぬのは貴様だアスタあああああああ‼︎」

 アスタと榊、お互い武器を構える。

 アスタはいつもと違って何故か剣を持っている。

 これもエルヴレインの能力の一つか?

 一方榊の手に握られているのは、四刀・春陽と普通の小太刀。

 春陽は相手を斬ると幻覚を見せる能力があるとかなんとか。

「……止めなくていいのかい?」

「この二人の実力は拮抗してるもんですから問題ないっすよ」

「互角という所に問題があると思うのだが」

「まぁ大丈夫でしょー」

「いざというときはボコって止めればいいんでしょ?」

 最後物騒な事が聞こえたけど気のせいかな?

 しかし桜がボコって二人を止めることはなかった。

 キューブが突然輝き始めたからだ。

 直感的に分かった。

 もうすぐ始まるのだ。

「……!」

 全員の顔が一気に引き締まる。

 武装していた二人も一時装備を解き、臨機応変に対応出来る様にしている。

「始まる様だね」

 いつになく真剣なムードで話す高坂。

 キューブの光が徐々に失われていく。

 やがて完全に光が消え、参加者達は顔を上げ、武器を構える。

 そして誰が合図した訳でもないのに、一斉に武器を構えて。

「うおおおおおおおおおお‼︎」

 参加者達の怒号と共に開戦の火蓋が切られる。

「僕たちも行くぞ!」

「おう!」

 アスタはエルヴレインを装着し、いつものランスを構える。

 榊は最初から最強装備らしい断罪の衣に先ほど出していた小太刀と今まで見たことのないデザインをした刀を取り出す。

 ティフは頬をぱぁんと叩き、気合を入れる。

 エロガキは口にスタンガンを当てて帯電状態に。

 マタドーラは手にエネルギーを溜めて、連射出来る様している。

 桜は腕組をして余裕の表情。

 僕も銃を手に取って弾数を確認し、次にナイフがしっかり備え付けられているかとナイフに手を当てる。

 もう周りは戦い始めており、既に何人か脱落者もいるようだ。

「ばらけるぞ」

 アスタの一言に全員が別々の方向へと走り出す。

 僕と桜は一緒だが。

「ふふふ、パパッと片付けちゃおっか」

 首を手で切る動作をする桜。

 能力を発動しようという訳か。

「まだだ。あれはいざという時に使う。一人で戦うよりも二人の方がずっと効率的なはずだ」

 走りながら会話をする。

 足の重さはもう気にならなかった。

「りょーかい、ふふふ」

 相変わらずの嫌な笑いを返してくる。

 その笑いが今は頼もしい。

「それじゃあ一旦別れるぞ!この辺りで戦うからお前もちゃんとこの辺りにいろよ!」

「任せて!」

 そういうと、目のも止まらぬ速さで駆けていく。

「……さて、一人になったしやってみるか」

 銃を構える。

 前からいかにも悪人面の集団がやってくる。

最上オペ武器レー使ターい、佐倉楓だ。死にたい奴からかかってこいよ」


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