大丈夫。問題ない。――その後の二人。
「大丈夫。問題ない」のその後の二人。
*活動報告に載せていた作品を移動いたしました。
「別れてくれる?」
目の前の――ひ弱系男子を演じている滝川星夜くんに、お姉様系な私が上から目線で言いました。
「……、今度は何?」
「次回作は、星夜では無理なの。今までは、なんとかなったかもしれないけれど、さすがに……ね?」
お姉様系な私は伸びた髪を横に流しながら、やはり上から目線で私よりも20センチは高い滝川くんを見上げます。
色々な“設定”のキャラを演じ、小説を書くためにあたっての“経験”にしようとしている私。そして、次のターゲットの“設定”をうまく演じてくれる滝川くん。
でも、次回作はさすがに無理なのです。
「だから、何?」
「……お嬢様系×お嬢様系。女の子同士の話がきているの」
次回のテーマは“百合”。昨夜、担当さんと打ち合わせの結果、決まりました。
数々の“設定”彼氏を演じてきた滝川くんも今回は……
「わかった」
「へ?」
ひ弱系になりきっている滝川くんは、撫で肩を演じつつ(なぜ? なで肩?)トボトボと私に背を向けて去っていきました。背中に哀愁が漂っています。
……いつもなら、もう少し粘られるんですけど。どうしたんでしょうか。
「……っ」
自然に手が胸を抑えました。
いいんです。
私は、小説を書くためにやっているんですから、彼が私に飽きたとかこっちにとっては都合のいい事なのです。
「これで、ちゃんとした“経験”ができます」
外見が変わっただけで、中身は同じな滝川くんと付き合うようになって半年。
でも、少し寂しく感じるのはなぜなんでしょう。
春を呼ぶ雨が、ポタポタと私の頬を濡らしました。
◆◇◇
――次の日
「御機嫌よう」
「…………」
目の前の、私よりも20センチは背の高い……この方はどなたなんでしょうか?
腰までの黒いつややかな髪。
古風にヘアバンドでとめていて、清楚なワンピースとカーディガンを羽織っています。どこからどう見ても“お嬢様”です。
「聡美さん、私と付き合って下さいませんか?」
目の前の“お嬢様”が、ハスキーな声で私に笑いかけました。
「……滝川くん?」
「滝川聖子です。付き合って下さいますよね?」
「………その恰好…」
「姉のを借りましたの」
流石、学園内の1,2を争うイケメンです。
女装も似合っています。 背の高いのがコンプレックスなの。というていのお嬢様を、演じているようで、低いヒールを履いています。脱帽です。いや、今は関心している場合ではないのです。
「えっと……」
「下についているモノが気になるようでしたら、いつもよりも強めに…ふ…踏んで下さっても構わないですし」
赤い顔で、モジモジ。
ここは、私の家の前です。 そんな、人を変態みたいに! それに『してくれ』と言っているのは、貴方の方でしょ!
「誤解をされるような事は、言わないでください!!」
「そうですか?」
そう言って、瞳をパチパチ。首をコテン。と、パーフェクトな美少女振り。
――滝川くん。役者になれますよ。それとも、新たな扉が開きましたか?
「いや、女装ってダメでしょ。滝川くんも学校の…他の人に見られたら大変ですよ!」
「聡美さんの“設定”周期は、大体2週間~4週間ですし、春休み期間中にはこの“設定”も終わるでしょ?」
そう言って、またニッコリ。
そして、耳元でこう囁きました。
「大丈夫。問題ない……ですよ?」
春休みが開けて、男に戻った滝川くんから、ある提案をされました。
「次回、ロールキャベツ系男子と肉食系女子の設定は?」と。
問題ありまくりです! 主に、貞操面で!
*リクエストありがとうございました。