File 3
その日の朝、私の携帯に電話がかかって来た。
「もしもし?」
「もしもし? 私、警視庁捜査一課の杉山と申しますが、沼沢 拓也さんの件でお電話させていただきました」
「拓也? 拓也がどうしたんですか?」
「実はですね……大変申し上げにくいのですが、沼沢さんがお亡くなりになったんです」
「え?」
「ですから、貴方の恋人である拓也さんが、何者かにナイフで刺し殺されたんです。つきましては、身元確認をお願いしたいので、これから警視庁の方へおいでいただきたいのですが、お時間は大丈夫でしょうか?」
「……分かりました。これからお伺いします」
私は着替えを済ませると、警視庁へ向かった。
拓也の身に何が?
警視庁に着き、霊安室を杉山という刑事と共に訪れた。
台の上に拓也が横たわっていた。
「拓也!」
だが拓也は何も答えないし目も開けない。
拓也は杉山刑事の言う通り死んでいるのだ。
私は事情聴取のため、取調室に入った。
「遺体の側に血文字でこんなものが書かれていました」
刑事が見せた写真に、1040という数字が血で書かれていた。
「これについて、何か思い当たることはありませんか?」
「さあ……分かりません」
1040……一体、どういう意味なのだろうか。
「そう言えば……このダイイングメッセージ? とは関係ないんですけど、先日、拓也と一緒に小島先輩の事件を調べてたら、何者かに襲われたんです。たぶん、それが犯人だったんじゃないかと思うんですが……」
「その人物の顔は見ましたか?」
「夜で暗かったし、フードを被っていたので顔までは……すみません」
「いえいえ、少しでも情報が分かっただけでも助かります。それから、危険なのでこれ以上事件に関わらない方が懸命ですね。あとは我々警察にお任せ下さい」
「分かりました。もう帰っても?」
「はい」
私は警視庁を後に、自宅へと戻って考え込んだ。
1040……何かのパスワード。それとも暗号?
ダメだ。いくら考えても分からない。
私はベッドに横たわった。
眠りに就き、夢の中で拓也に出会う。
「拓也?」
「血文字は……え……だ」
聞き取れなかった。
立ち去ろうとする拓也。
「待って!」
追いかけようとする私だが、なぜか足が重くて動けなかった。
「はっ!」
目が覚め、起き上がった。
窓の外を見ると、もう夕方だった。
私はカーテンを閉め、階下へ降りた。
「お母さん、お腹空いた」
「冷蔵庫に牛丼が入ってるわ。それ食べて」
「分かった」
私は冷蔵庫を開け、牛丼を取り出し、レンジで温めて食べた。
1040……どういう意味よ?