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輪廻の魔王  作者: 鈴鳴
9/11

9話

 という訳でというか、どういう訳か。再びレオンが抱き枕。休憩のタイミング同じだったねそういえば。

 とはいえ暖かいし落ち着くしで少し話して即寝落ちしました。内容は覚えてない。

「……マ、ソーマ。見張りの時間だぞ?」

「んぅ……後五分……。」

「分って何だ?」

 寝惚け眼を擦りながら起き上がり、焚き火の側に腰掛けたレオンに寄り掛かるように腰を下ろす。

「ソーマ、眠いなら寝てていいぞ?」

「やだ。」

「いや、そんなこと言っても眠そうじゃねーか。」

「やだ。」

「……まぁ、無理にとは言わないが。」

 少し不満そうな顔をしてるレオンの肩を掴み、引っ張る。

「って、おい、何だよ?」

「いいからいいから。」

 グイグイグイッと引っ張り、頭を膝の上にのせる。

「…………えっと……?」

「この前のお礼。それと少しは寝て。」

「十分寝たぞ?」

「嘘。瞼がいつもより下がってる。」

 文句を言いながらも起き上がる気配は無いのでそのまま髪を撫でる。サラサラとした手触りで、とても触り心地がいい。

「直ぐに起こすから、安心して?」

「俺が寝たら直ぐに寝そうな奴に言われてもな……って、痛ぇ! ちょ、ほま、はひふんはよ!」

 余計なことしかしゃべらない口にはこうしてやる。

「ったく……本当に……ソーマは…………ん……………………。」

 しばらくレオンで遊んでいると段々動きが緩慢になり、最後には寝てしまった。計画通り。と心の中で呟きながら空を見上げる。

 満天の星空。地球にいた頃は写真やテレビでしか見たことが無かった光景に息を飲む。

 こうしてゆっくりと星を見るのは初めてだったので、のんびりと星を見る。勿論、耳は常に澄ませ微かな物音にも反応出来るように備えている。まあ、僕が耳を澄ませたところでたかが知れてはいるのだけど、気分の問題だ。結界に何かぶつかればわかるから、耳を澄ませなくても良いとか言わないで。

 今は集中すれば微かな物音でもしっかり聞き取れる位には聴力が良くなっている。これも魔王特典なのかな? ありがたく使わせてもらってるけど、二十メートルくらい先を動物が歩いていることがわかるくらい精度が良くてちょっと楽しい。アウルやシェナの寝息や、レオンの心音もバッチリだ。……って、最後何かおかしいぞ?

 耳を澄ませなくても触れた場所から鼓動の音が伝わってくる。規則正しく時を刻み続けるその振動に心が落ち着く。

「……なんでなのかな……?」

 柔らかな金髪を撫でながら物思いに耽る。数日前に会ったばかりの相手に、どうしてここまで無防備になれるのだろう。レオンも、僕も。

「…………優也……。」

 ポツリと、幼馴染みの名前が溢れる。保育園の頃から今までずっと一緒だった、大好きな友達。彼は今どうしているのだろう。







「颯天! 早く帰って昨日の続きしようぜ!」

 放課後、いつものように鞄を肩にかけた優也が教室に走り込んでくる。

「ちょっと待ってて、先生にプリント出してこないといけないから。」

「ん、じゃあ下駄箱の所に居るか。」

 あっさりと踵を返し走り去っていく。手伝ってくれてもいいじゃんか……。

 溜め息を一つ吐きながらプリントを抱えて職員室に向かう。

「わっ!?」

「っ!」

 バササッ

 廊下の角から出てきた誰かにぶつかり、プリントが散らばる。自分も倒れそうになったが、ぶつかった相手が支えてくれたので何とか踏みとどまれた。

「……大丈夫、か?」

「え、あ、うん。プリント以外は大丈夫。てか諒こそ大丈夫?」

「俺も大丈夫。すまん、考えごとをしてて前が見えてなかった。」

「ううん、こっちも急いでてあんまり気を付けてなかったから。こっちこそごめん。」

 散らばったプリントを二人がかりで集める。

「? 藤代君に長田君? どうしたのそんなところに座り込んで。」

「あ、先生。プリントを持って行く途中でぶつかってしまって……。」

「あ、提出課題ですね、ご苦労様。私が受け取るからもういいわよ。」

「ありがとうございます。」

 プリントの束を先生に渡す。

「そういえば篠田君を見てないかしら?」

「ゆ……篠田君なら下駄箱に居るはずですよ。」

「あ、急ぎの用事って訳じゃないの。明日にでも職員室に来て欲しいって伝えておいてくれるかしら?」

「わかりました。」

「それじゃあ、私はこれで。」

 担任に挨拶をして別れると、頭の上に重みが乗る。

「お疲れ様。またな。」

「あ、またね、諒。」

 軽く髪の毛をかき混ぜられて離れていく。諒は高校に入ってから知り合ったけど、いつも落ち着いているから近くに居るとゆっくりできる不思議な人だった。

「って、急がないと。」

 下駄箱へと廊下を走らない程度に早足で向かう。

「颯天! 遅い!」

「ごめんって、早く帰ろ!」

 膨れる優也の頬っぺたを指で押して凹ませながら、靴を履き替える。今日はどこまで進めれるかな? 取り敢えずボスは倒したいな。なんて会話をしながら、優也の家に向かった。







「そして、それから……。」

 手が動かなくなる。最後に見えたのは迫ってくるトラックと、目を見開く優也の姿。

「……元気なのかな……。」

 震える手が温もりに包まれる。

「……レオン……?」

「心配……すんな、守っ……てやるから……よ……。」

 寝言かな。寝言だといいな。

 ぎゅっと手を握り、目を閉じる。

「大丈夫。きっと……。」

 自信なんて無いけど、でも、何とかしてみせる。

「『小さな祈りの歌を貴方に捧げよう。』」

 そっと魔法を唱える。萌木色の光がそっと広がり、消える。

 一回だけ攻撃を弾く防御魔法。魔王の知識から防御と治癒に関係する項目をひたすら呼び起こす。少しずつでも、皆の役にたてるように。レオンに置いていかれないように。

「よし、頑張ろう。」

 小さく、そう決意した。

閲覧ありがとうございます。

次回は9月4日投稿予定です。

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